第十九話 昔恋し
今回は番外編に近いのです。近しい人物は昔の同級生だけです。
物凄く疲れた夏の合宿も終わり8月が始まっていた。
自室でクーラーの冷風を浴びながらジャリジャリ君を食べる日。
うむ、正に至高の夏休みライフを言えよう。
そういえば最近真面目に青春しすぎてギャグ要素の欠乏を感じる。
全くもって普通の生活に飽き飽きしていた所だ。
そういえば合宿以降シコるネタも無くてめっきりしていない。
このままでは齢15歳して枯れ果てて(何が)しまうんではないか?
ちなみに誕生日は二月なので当面は未成年だ。
本当はあんなビデオやこんなビデオにも興味あるのだが
真面目なので手を出せずにいる。
もっとも本物が一番良いというのは言わずもがなであるが。
「ひーまぁー」
ぐだぐだスマホゲーを弄っては辞めて弄っては辞めてと、非生産的な
日常的怠惰を送っていたがぽこっとスイカプの知人が声をかけてきた。
スイカプってのは某ミクロソフト社が買収したなんか規模のでかい
チャットツールである。
えー何々、今度スイカペでオフイベやるから人数合わせで良いから
手伝ってくれ?
なんだそのリア充イベント。
自慢じゃないが、若干ヲタ入ってるし、ファッションも古着で適当に
選んでいる。胸は貧相だわ女の子が好きだわオフイベでナニをナニするって
感じなんだが。
しゃーない、丁重にお断り……何?
女子が多いだと!? しかも、このアイコンの子クソかわいくない?
や、やっぱり行こうかな?
「へい、お誘いサンクス、是非いかせて貰うぜ」
ぽちっと
今週末にザッポウッキョーでオフライブね。了解。
入場料がいかんせん高いが、これ本格的なライヴじゃないか?
予習にイツネで曲買って聞いとくか。
……♪
…♪……♪
………はい、ハマりました。
なんか独特な音楽だけど、イイゾーこれ。
いかんせんライブが楽しくなってきた。
参加人数は男子2人に女子8人か。なんか女子ばっかりやな。
ハーレムかな?ハーレムだよね。ハーレムに違いない。
正にハーレム三弾活用である。
あ、そういえば宿題とかいうのを1mmたりとも手を付けていない。
まぁ、ライヴ終わったら考えるとしよう。当日は何着てくかな?
とりま、適当な古着見繕っていくかな。スカートは苦手なので
パンツルックで、お、このビンテージジーンズ履いてくか。
そんなこんなでライヴ当日。
あつい、そういえば部屋の外はエアコンとかないよね。ぬかったわ。
適当な穴あきジーンズに、白のサプレメTと帽子という普通の恰好に
纏まってしまった訳だが。自分でスカートを履かないくせに他人のスカートは
好きなんだよね。ほら生パン拝めるし、まくりあげるだけでヤレちゃうし!
テンション上がってきた。(ぶるぶる)
電車で何駅も乗りついで漸く、ザップウキョーに到着する。
いやー電車の中はエアコンが効いていて涼しいですな~からの
アスファルト灼熱地獄。
うぇぇ、暑すぎてアスファルトが溶けてにちゃにちゃしとる。
「おーい、こっちこっち」
誘ってくれたのは中学時代の同級生で、リア充丸出しのイケ女子だったんだが
……どうしてこうなった!?
ゴシックロリータに身を包んだゴス女子と化していた。
「今日は来てくれて有難う、君の事だから来ないかと思ったけど
付き合いいいんだね」
「それより君のその激しい厨二病ファッションが気になるよ!」
「あ、これ?私服だけど」
私服だけど 私服だけど 私服だけど
頭の中でサブリミナルされる禁止ワード。
どうしてそうなった!?
「そ、そうなんだ」
「にしても、小鳥遊さんラフな恰好だけどカワイイね」
「あ、ああ、有難う」
「このライヴって少しゴス入ってるからこういう恰好の子多いんだよね」
「そ、そうなんだ」
「でも来てくれたって事はこのアーティスト好きになんだ?」
「うんまぁ、本音言うと誘われるまで知らなかったんだけど
聞いてみたら結構良くってね」
「へー、そういう事か。気に入ってくれて嬉しいかも」
私は嬉しいというよりそのゴスロリ衣装にツッコミたい。
勿論エロい意味ではないぞ。
「おーい、こっちこっち」
待っていると仲間らしき人々がわさわさと集まってくる。
みんなすごいゴスロリファッションで自分だけ空気が
まるで違うんですが?
「あ、その人?美月の前の同級生って」
「そそ、可愛いっしょ?」
「カジ系好きなんだね、美人だし似合ってる~♪」
なんだか褒められてるぞーこれ
みんな、化粧は濃いけどかわいい子ばっかりだな。
「あ、そろそろ物販開始するけど、寄る?」
「ああ、うん。たぶんこの格好だと浮くからTシャツでも買おうかな」
「えーそのままでも良いのに」
「まぁ、白T目立つし、できれば着替えたいかなってね」
「そっか、じゃあ案内するよ」
物販は既に長蛇の列だったがなんとかお目当てのTシャツをゲットする。
「うへぇ、すごい列だったね」
「いつもあんな感じだよ」
「ちょっとトイレでTシャツ着てくる」
がさがさがさごそごそごそ
うん、サイズピッタリ。
「ただいま」
「おかえりライヴはじまっちゃうよー」
「うぉーレッツinだぜー」
その後、めちゃくちゃライヴした。
「こういうの初めて来たんだけど楽しかったぁ」
「そっか、良かった良かった」
「あ、他の子は?」
「ん? ああ、もう解散したよ」
「もうちょっと話たかったなぁ」
「ごめんね」
そう言うと美月は私の唇を奪った。
「んー!? んー!」
キスの後、唾液が線を描き垂れる。
「ぶはっ、ちょっといきなりどうしたの!?」
何が起こったのかわからねぇと思うが(略
「昔から好きだったんだよね、知らなかったでしょ?」
「知らないよ、ってかいきなりすぎるよ」
「くすっ、やっぱり鈍感さんだ」
「わぷっ」
再度唇を重ねてくる。甘く危険な香りのする美月の
唇は軟かく心地よかった。
「ふむ、今日はここまで」
「うえぇえええ」
「くすっ、言葉になってないよ?」
「続きは ま た ね?」
「え?何がどうなってんのか」
「いいのいいの。」
「じゃあね」
「あ、ああ」
帰りの電車の中、彼女の唇の感触だけがリアルに残っていた。
夏休みももうすぐ終わりかな。
恋のライバル増えまくってる気がします。気のせいです。