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第十八話 帰路でござるよハッタリ君

強化合宿最終日、朝からすったもんだがありまして帰宅するわけですが!

早朝、微かに聞こえる波しぶきの音と小鳥の囀り。

爽やかに濯ぐ朝露の香りと、ん?なんか違う匂いが混ざ……。

身動きが出来ない……誰か私を抱き枕にしている奴がいる!?

もう少し微睡まどろんで居たかったのだが、寝返りすら

うてない状況に困惑する。

明らかに羽交はがい絞めにされて居るのが分かったので

恐る恐る双眸そうぼうを開くと……やっぱり速水じゃねーか!

こいつ確か隣にすら寝かせなかった筈だが、なぜか私の布団に

潜り込みあまつさえ抱きしめられているんだが、昨日何かされた

んじゃないだろうな!?

記憶の限りでは皆一斉に就寝した筈だがそこから記憶がない。

速水の性格からして夜這いは起きていないとしない筈だが、わからん。

わからんが、今の状況は酷い。クソ、思い切り抱きしめられていて

抜け出せない。おっぱいが押し付けられているのは少し心地良……

良い訳なだろ!

うごご、こいつきしゃな癖に抜け出せないぞ、起こすしかないか。


「おい、こら速水!起きろ!」

「……くかー」

「起きろ、この痴女が!」

「……くかっ?」

「ふぁ、あれ会長どうしたんスか?」

「どうしたもこうしたもあるか、お前昨日何もしてないだろうな?」

「何もってか、私の布団に潜り込んで何してるッスか!?」


ぼかっ


頭をなぐる鈍い音が響く。

「これは私の布団だ!」

「いたた……はれ?」

「寝ぼけんな、位置的に真ん中だから私のふとんだろう?」

「またまたぁ、会長も結構大胆なんですねぇ」


ゴスッ


なんとか動く足で速水に蹴りを入れる。


「いたっ、ちょ、蹴らないで下さいよ!」

「良く見るんだ、ここは私の布団だ」

「えー?ほんとッスか?」


きょろきょろと周りを見渡す速水。


「あ、両サイドに人が居る、でも気にしない!」

「気にしろ!」

「あと何時まで抱き着いてんだ!」

「私が満足するまでじゃダメですか?」

「ダメに決まっとるだろうが、しかもこんな人気のある場所で

良く抱きついていられるな?」

「ほら既成事実って大事じゃないですか?」


左の布団から何やら殺気を感じる。

ペロっ、これは嫉妬の匂い!?


「あの、お忙しい所すみませんが煩いです速水さん」


立花が凄い怖い顔でこっちを見ている。親でも殺されたような顔だ。


「ひっ、す、すいません」

「あと本人の許可取って布団に入ってるんですか?取ってないですよね?」

「と、取ってないです」

「じゃあ、会長も迷惑がってるし離れましょうよ?」

「そ、そうですね」


そそくさと布団からベイルアウトしていく速水。


「ああ、立花すまないな」

「いいえ、花に群がる虫は駆除しないと」

「え?」

「いえ、何でもないです」


最近少し、立花さんが怖くなってきたゾ。

しかしもう少し寝るとするか。

布団にもぐると、速水のシャンプーと石鹸の移り香で

それ処ではなかった。

少し甘い香りでこんな状況で寝れるか!


「ぶはっ、人の香りがする布団って寝づらいよね?」

「ああ、さっきまで速水さん入ってましたもんね」


くそ、匂いに人一倍敏感な私はなんだがくらくらして

眠れる代物ではないだ。諦めて起きるとしよう。

あ、そういや昨日何もされてないよね!?

下着をチェックするが別にズレたりはしていなかった。

つまりシロだ。

いや色はパステルグリーンですけどねって誰に言ってるんだが。


「さて起きるか」


あさっぱらから速水の香りでくらくらする羽目になったが

まぁ、目覚めは奇しくもさっぱり起きられたので良しとしよう。

しかし速水はいつから私に張り付いていたのだろう、考えたくないな。


桐生院さんはまだ熟睡していて、速水は二度寝を決め込んでいる感じで

立花はもう布団をしまって起きていた。


「あの、昨日普通に寝た筈ですけどいつから速水さんくっついて

いたんですかね」

「私は疲れて熟睡してたからさっぱりわからんのだけど」

「あ、たぶんトイレ行った後に戻った時に入ったッス」


起きてるじゃないか!


「寝たふりはやめい!」

「いやぁ、実は私もあんまり覚えてないッスよね」

「なるほどな」

「しかし一夜布団をともにしたって事はもう恋人って事で

いいんじゃないでしょうかと思うッス」

「良い訳ない!」


うお、突然大きな声で否定する立花さん。


「立花さん、たぶん会長の事好きなんすけど、それじゃ奥手すぎて私が先に

奪っちゃいますよ?」

「……っつ」

「あ、やっぱり図星でした?」


え? 立花って私の事好きだったの!?


「ずる……です」

「え?聞こえないッス」

「そういうのずるいです」

「恋愛にズルも卑怯も無いッス」

「モノにした人が勝ちっスよ?」


立花がなんか半泣きで真っ赤になってきたゾ。

やばいな、こういう時どうすればいいのか分からない。


「会長、いえ小鳥遊さん」

「ふぁい!」


強い口調で呼ばれたため素っ頓狂な声をあげる小鳥遊さん。


ガバッ


唐突に立花に抱きしめられる。


「え!?」

「会長は誰にも渡しません!」


やれやれといった感じで速水が手をひらひらさせる。


「やっと同じ土俵に立ったッスね?」

「自分には正直であるべきですよ? 兎角恋愛に於いてはね?」

「しかーし、まだ私のが一歩リードっすよ、告白してるしねー」

「……私も、いましました」

「あー遠まわしに言っても会長鈍いから伝わらないよ?」

「私は私のやり方で好きにさせて見せます」

「良いね、それでこそライバルかな?」


恐ろしい場所に居合わせてしまった。

完全に私を置いて三角関係になっているではないか。

すぐに荷物を纏めて消えたい気持ちで一杯だ。


「会長!」(二人一斉に)

「はい」

「そう言う訳だから今後とも宜しくッス」

「あの、こんな私ですが嫌いにならないで下さい!」

 

「お、おう」


余裕癪癪よゆうしゃくしゃくの速水と一杯一杯な感じの

立花が対照的な告白シーンだった。


「終わった?」


桐生院さんがタイミングを見計らって起きてくる。

まぁ、これだけ煩かったら狸寝入りだろうけどね。


「ああ、はい終わった?みたいですね」

「みんな青春してて良いわね~私も彼女でも彼氏でもいいから見つけないと」


彼女???


「んじゃ、帰る支度するぞー」


平静を装って帰宅準備を始める小鳥遊さん。

しかしまさか立花も私を好いていたのはたまげたなぁ。

今思えば薄々そんな兆候はあったと思うが気づかなかった。

ああ、後ろでは火花散るガンの付けあいが起こっていると思うと

早く帰りたい気持ちで一杯だ。


中居さんが帰りの送迎バスの案内にくる。


「お客様、バスが来ましたよ」

「あ、有難う御座います、今行きます」


外に出ると今日も快晴、入道雲が浜辺にかかり素晴らしい夏日和だ

数多のセミ達の合唱もそのアクセントとしてむせる熱気に拍車をかける。


「今日もいい天気だな」

「はい」

「そうッスね」

「そうですね」


さて帰るか。

一行はバスに乗って帰路に着くのだった。

半日分なので短めになってます。

立花ちゃんの本心が聞けてうれしい限りですねぇ。

字数がヤバいので更新頻度あげます。

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