第十話 マクソナルホドと貞操観念(前編)
今回は初夏の蒸し暑さの中のやり取りです。
長くなりそうなので物語を2つに区切ってます。
マクソナルホドは通称マッソなのですが
実在のお店とは関係ないですしおすし。
ミーンミーン ミーンミンミンミン
「あー煩い暑いジメっぽい!」
「日本の夏の三大活用ッスね」
梅雨のスケスケチャイム故障騒動では翌日風邪を引いて
酷い事になった、はやり雨を舐めてはいけない。
飴は舐めなければいけない。
YES I CAN!
誰に言ってるのか分からないが、心の声である。
さてという事で7月に入り梅雨が終わりを告げたのだが。
梅雨期間中は置いておいたあんぱんにカビが生えたり
クリームパンにカビがはえたり、ジャムパンにカビが生えたり
とにかくカビて大変だった。
まぁ、期末試験が酷い事になったのは気のせいだ。
全部カビのせいだと思っている。
全教科中4個の赤点は我ながら酷すぎる。
数学B・数学Ⅱ・物理・科学の4つが見事な赤点である。
詰め込むのが大の苦手な小鳥遊さんはこの4つが大の苦手だ。
公式なんて覚えても教授になるわけでも無ければほぼ使わない。
というスタンスで一夜漬けしたがやはり無理だった。
「……追試どうしよう」
ボソっと呟いた言葉を地獄イヤーの速水は聞き逃さなかった。
「あれあれ~いま追試って言いました?」
「言いましたよね?」
「ですよね?」
「え、そうなんですか!?」
「薄々は知っていましたが」
……ウザい、速水が素直にウザい。
「私理数系得意なんですよ!?」
「知ってるよ、だから会計してるんだろ?」
「はい、もし会長が理数系のテストで困ってるなら
ざっくりお教えしましょうか?」
「ま、まじでか?」
「お礼はおっぱいでも揉ませて頂ければ」
「断る」
「やや、冗談ですよ、即答で断らないで下さいよ!」
「断る」
「……うーん」
暫く考え込んで妥協案を提示してきた。
分かりましたマッソ(マクソナルド)で
セット奢ってくれれば良いですよ?」
「ほん~~~~~~とうにそれで良いな?」
「脱ぎたての下着も一緒にどうッスか?」
「ポテトかよ! 断る」
「あーダメですか。まぁ、いいッス教えるッス」
「ああ、助かる」
「学校はクーラーないですし良かったら私の家か
会長の家で勉強しないッスカ?」
「おま、それ貞操の危険しか感じないんだが?」
「いえ、単純に涼しいし冷たい飲み物でも飲みながら
勉強した方が捗ると思うッス」
確かにもっともだが、肉食系女子のこいつが
そんな健全な理由だけで提示してくる条件とは
とても思えない。ナニが捗るんだか。
「あ、自分明日なら両親もいないし暇ッスよ」
「両親は居た方がいいだろう?」
「静かな環境で勉強したいッス……じゅるり」
「いま、なんかじゅるりとか聞こえたんだけど!?」
「ああ、いえちょっとうとうとしてよだれが」
…いま一瞬獰猛な野獣の眼光が見えたような。
「無理ありすぎだろ、数学習いに行ったら途中から
保険体育(実技)になるやつだわ!」
「あー……じゃあ小鳥遊さん家でどうッスか?」
「私の家?」
まぁ、母親がいる筈だから滅多な事にはならないと思うが。
しかし、こいつを家に入れるのは正直怖い、怖すぎる。
「……数学96点(ぼそっ」
「!?」
「学年1位ですよ、ここは諦めて教えられて下さい」
「!?」
「このまま留年とかになっても後味悪すぎます」
ま、確かに今のままではヤババババなのは確かだ。
「ここはスカイツリーから飛び降りる気持ちで頼むか」
「ちょ、心の声漏れてるッス」
「ああ、すまん。分かったあたしの家で勉強な?」
「はい、宜しくッス」
「いいですねぇ、私もご相伴になりたいけど
お邪魔だと思いますので遠慮しておきますね?」
ガタッ
このやり取りを静かに聞いていた立花がいきなり
立ち上がる。
「あの!私も数学とか得意で……」
「立花ちゃん、残念だけど私のが成績は上だし
分かりやすく教えられると思うよ~(ニタニタ)」
「もし、速水さんが教えても分からなかったら
私に言って下さいね?」
その表情は少し鬼気迫るものを感じた。
「あ、ああ、分かった」
直後、速水は席に戻るときにニヤニヤしながら
凄いガッツポーズをしていたのを私は見逃さなかった。
イヤな予感しかしない。
家の母が貞操を守ってくれると信じよう。
どうでもいい話ですが、ランボルギーニガヤルド好きです。
まぁ、買うならフェアレディZですけど!(聞いてない)
次話は小鳥遊家のお話になります。いやぁ肉食系女子を
部屋に連れ込むのは色々危ないですねぇ。
貞操は果たして守られるのかこうご期待。