第42話与えられた分だけ失うもの
翌朝。僕はシーナが起きる前に三人を集めて四人だけで話をすることにした。
「どうしたの、ユウマ。こんな朝に」
「眠い」
「私も寝不足で眠い……」
「ごめんね三人とも」
ミナさんからのアドバイスで、あのあと一晩考えた僕は、この四人だけで話し合いする事が一番大切なことが分かった。
僕の知らない間に三人に何があったのか、そして僕自身の事。仲間である以上目を背ける事はできない。
「まずは一つ報告があって、明日僕達は王都に向かう事になった」
「王都って、まさかこの前言っていた」
「そう。正式にギルドに招待状が届いて、昨日それをミナさんから受け取った」
「ちょっと急」
「僕もそう思ったけれど、よく考えたら水神祭からそこそこ時間が経ってるから、急ではないのかもね」
すぐに正式な招待状を出すと言っていたし、あれから何だかんだで半月近く時間が経っている。だから妥当と言えば妥当な時間なのかもしれない。
「でもそれだけ? 私眠いんだけど」
「勿論話はそれだけじゃないよ。むしろ本題はこれからだよ」
「何か話す事あった?」
「あったよ。昨日」
「昨日って」
「それは……」
急に黙り込むのはセレナとアリス。やっぱりこの二人の間で何かがあったんだ。そしてもし機能の流れから察するに、二人が元気がない原因は……。
「セレナ、もしかして教えたの?」
「教えた……というよりは、アリスに聞かれていたみたい」
「じゃあアリスはそれをセレナに」
「全部聞かせてもらった。でもちょっと待ってほしい」
「ん?」
「ユウマはどうしてセレナの事を知っているの?」
「それは……ほら、昨日たまたま聞こえちゃったんだよ」
セレナと出会った頃に既に聞かされていたと言ったら、厄介事になってしまうので、うまく誤魔化す。
「と、とにかくそれが原因なんだね」
「うん。私すごくショックだった。セレナが既に死んでいたなんて」
「黙っていてごめんね三人共。でも私はすぐに成仏なんてしたくなかった」
「理由があるの?」
「今は話せない。でも王都に行けば……少し分かるかも」
少し震えた声で言うセレナ。詳しい理由については聞いた事がないので、少し気にはなっていた。特に水神祭の時のセレナの不思議な行動。そこにはやはり何か特別な理由が……あるのかもしれない。
それを知る意味でも、今回の王都への招待は、色々知る事ができるキッカケになるのかもしれない。
「でも私の話よりも、ユウマの話の方が大事なんじゃないの? まさかこの世界の人間ではないとは思わなかったし」
「あ、それ! 私もちゃんと聞きたかったの。ユウマ、昨日は一人でどこかへ出かけちゃうし」
「やっぱりそっちの話になるよね」
セレナの話はやはり王都についてから、もっと詳しく知る必要があるとして、それより重要なのはやはり僕自身の事だった。
「ユウマもセレナと同じで一度死んでいるの?」
「うん。転生というのは言わば生まれ変わりみたいなものだから」
「転生させてくれたのがあの神様?」
「そういう事」
けどその神様は昨日僕にとんでもない事を話した。僕が死んだ事に彼女が直接関わっている事を。そんなあり得ないような話が、僕の身に起きていた。
「神様が力を貸してくれるなんて不思議な事もあるのね」
「まあそれが転生の条件だったから。闇に覆われる世界を照らす光になる事が僕の役割だって」
「闇を照らす光」
「ユウマが……ぶふっ」
「そこ笑わないでよ。地味に傷つくから!」
シレナが与えてくれたものは確かに大きかった。影のような存在でしかなかった僕が、今は色々な人に関わって、沢山の仲間もできた。
けどその分、僕は気づかない内に大切なものを奪われていた。あの過ごした時間が。神様の手によって。
(ようやく思い出してきたよ、与えられてきた光の分だけ僕が何を失ってきたのかを)
「ねえ三人に聞いてほしい話があるんだ」
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「やっぱり話す、か」
人形を通して私は彼が話し出した内容を聞きながら呟く。話さないでと釘を刺しておいたけど、それはかえって逆効果だったらしい。
(まあ話したところで結果は変わりないけど)
私が彼に力を与えた事
そして私が彼に手をかけた事
どちらも必要な事だった。ただそれを正当化するつもりはない。少なくとも神様としてはあるまじき行為なのだから。
(でもこれも全て、世界のため。この世界には光が必要)
「そうやって言い聞かせたところで、貴女の罪は消えませんよ、シレナ」
どこからともなく声が聞こえる。だけど私はその声に反応は示さず、ユウマの話を大人しく聞き続ける。
「貴女が行った事が、今彼が元いた世界で大きな変化をもたらしています。そこまで理解していて、彼を殺したのですか?」
「……」
「沈黙は肯定とみていいですね。ならどうしてそんな事をしてまで」
「見てられなかったの。苦しむ彼の姿を」
「でもそれを彼は受け入れていました」
「受け入れても、心の中では違うかもしれない」
「そんな予測であんな事を」
「貴女には分からないことよ。世界の闇を作り出している貴女には」




