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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第3章雷神様と治癒の魔法使い
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第27話選ばれし魔法使い

 詳しい話は僕達の仲間が揃ってからすると言われ、何故か僕は洞穴からの中にあった彼女達が住む家に通された。


(落ち着かない)


 当たり前だけどここは神様の住処でもある。そんな場所に僕が簡単に足を踏み入れるだなんて、一ヶ月前の自分からでは想像できない。


 ましてやその神様の婿になるだなんて、誰が想像していただろうか。


「やはり落ち着かぬか」


 お茶を出しながらイヅチ様は言う。僕は出されたお茶を少し警戒しながら飲むが、どうやら普通のお茶らしい。


 口の中が僅かに痺れた以外には。


「っと、すまぬ、人間にはちと合わぬな」


「合わないといいまふか、しひれまふ」


「おおっと、すまぬ。今茶を変える」


 茶葉の問題以前の話なのだが、どうやらそれをイヅチ様は理解していないらしい。僕は結局痺れに耐えながら、改めて聞きたいことを尋ねた。


「どうして人間を嫌うか、じゃと」


「はい。僕はこの世界……いえ、この辺りの事情に詳しくないので、それがどうしても気になって」


「それはな、簡単には語れぬ深い闇があるのじゃ」


 どこかもの悲しげに言うイヅチ様。別に凶暴そうにも見えないし、こうして話し合える時点でそこまで忌み嫌っているようにも思えない。

 それでも彼女は深い闇があるという。まさかとは思うけど、身長の事を昔馬鹿にされたから、とかそんなんじゃない事だけは切に願いたい。


「あやつが……あやつが我を裏切ったのじゃ」


「裏切った?」


「あやつは我にこう言ったのじゃ。背の小さい我とは結婚できぬ。周りから奇異な目で見られるから嫌じゃと」


 ーーあれ?


「もしかして、その一言を言ったのがたまたま人間だったから」


「そうじゃ。我を侮辱した人間が許せなくなってのう」


「は、はぁ」


「こんな体でも我は立派な母親じゃ!それだというのに、誰も理解してくれぬ。どこへ行こうが姉妹じゃと言われ、終いには我の方が妹だと言われる始末。傷ついて当然じゃろう!」


「ま、まあそうですね」


 思った以上に浅い因縁に僕は落胆する。けどそれだけの話ではないような気がした。彼女が母であるという事は、その隣には父がいたという事になる。

 もしかしたら真の理由は、そこにあったりするのかもしれない。


「ともかけ我は人間が許せぬのじゃ! じゃから見返してやりたい、特にあの魔法使いには」


「魔法使い?」


「何じゃお主、会っておらんのか? 人間風情のくせに生意気にこの森に住み着いておる魔法使いの事を」


「そんな人いるんですね」


 この森に住み着くなんて余程の物好きなのだろう。少しだけ僕はその魔法使いの事が気になった。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「この子の治療は私に任せて、二人はその辺でくつろいでてねぇ〜」


 突然として私達の目の前に現れた自称治癒魔法使いは、何故か木の上にある彼女の家に私達を案内すると、話も聞かずに勝手にハルカの治療を始めてしまった。


「ねえアリス、本当に任せて大丈夫かな」


「分からない。でもセレナも気づいてるよね」


「うん」


 見るからに怪しい人物。でも私とセレナは彼女から感じる膨大な魔力を感じ取っていて、それを止めようとまではしなかった。


 ハルカの治療が終わるまでの時間、私とセレナはこの家に付けられた外付けのテラスで話をする事にした。


「こうして二人きりでちゃんと話をするの、久しぶりじゃない」


「そう?」


「フュリーナの時は寝ながらだったし、二人きりで面と向かって話すのは本当に久しぶり」


 言われてみればそんな気がするような、しないような。でもだからと言って、何か特別セレナと話をしたい事があるわけでもなかった。

 むしろ私達は、今こんな呑気に話していられる程暇な状況でもない。


「心配なんでしょ、ハルカもユウマの事も」


「ユウマの事はともかくとして、ハルカは心配。かなり重傷だから」


「そう言いながらユウマの事も心配しているけせに」


 セレナの言葉に私は黙る。ユウマは雷神の子供を連れて山を登っていると言っていた。子供を連れている以上、直接的な危害はないはず。そこは心配していない。

 ーーでも私が心配しているのは、


「私の魔法ユウマは見たのかな」


「岩山から見えたんじゃない? 誰が使ってるかまでは見えないだろうけど」


「あの魔法、私を信じたユウマにだけは見せたくない」


「アリス……」


「でもいつかは見られてしまう時が来る。これは私が制御できるものではないから」


 感情的になればなるほど、我を忘れてしまう。この魔法はある意味では私の感情の現れでもあった。


 あの日、あの時味わった絶望。


 それが全て形になったのが禁忌の力。


 決して触れてはいけない力。


「セレナ、私間違ってる?」


「禁忌の力に触れた事自体は私は間違っていると思っているよ。たとえそれが何かを守るためだったとしても。

 ーーでも、私も人の事を言えないから」


 遠い目をしながらセレナは言う。私はその言葉の意味が何となく分かる気がした。でも彼女はきっと知らない。私がそれを知っている事を。


(セレナ、願わくばもっと前から会いたかった……)


 そうすればもしかしたら、私の心に空いた穴を埋められたかもしれないのに。


「二人ともお待たせ〜。治療終わったよぉ」


 重苦しい空気流れ始めた中、それを打ち破るかのように魔法使いは私達に告げた。私はそれを聞くや否や、ハルカの元へと行く。


「ハルカ!」


「アリス、ごめんね。心配かけさせちゃって」


 まだベッドに寝ていながらも、体を起こして私を迎えてくれるハルカ。


「傷は大丈夫?」


「それが怪我をしていたのが不思議なくらい体が痛くないの」


「そう、それなら良かった」


 私は一安心した。明らかに怪しげな治癒魔法使いだったけど、私もセレナも感じ取っていたようにその腕は確かなものだった。


「良かったハルカ、大丈夫そうみたいね」


「セレナこそ無事でよかった。私達すごく心配したんだから」


「ありがとう、でも私もユウマも無事よ」


「そのユウマは今どこに?」


「そろそろ雷神様の元に付いているんじゃないかしら」


「なになに〜、イヅチちゃんに会いに行くの〜?」


 セレナとハルカの会話に平然と入ってくる魔法使い。何ともおちゃらけた口調が、私は好きになれない。


「どうやら大丈夫そうだね〜。でもまだ治ったばかりだから、体を動かす時は気をつけてねぇ」


「あの、助けてくれてありがとうございました魔法使いさん。あのお代の方は?」


「いいのいいの、私のボランティア精神でやっただけだから。あ、あと私はヒアラっていうのぉ。よろしくね〜」


 サラッと自己紹介をする治癒魔法使いヒアラ。けどその名前を聞いた私達はか、思わず固まってしまった。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「あれ〜、どうしたの皆固まってぇ」


「え、え、えっと、ひ、ヒアラさんってもしかして、世界三大魔法使いの一人の」


「そんな大層な器じゃないけど、そんな名前で呼ばれてたこともあったかしらぁ」


 世界三大魔法使い。


 この世界には、魔法使いや騎士などそれぞれの分野において、それらをまとめる協会が各分野に一つずつ設置されている。勿論私のような、人形使い(ドールマスター)にも協会がある。

 それでその協会が、その分野において世界で最も優れた者に送られるのが、この称号。いわゆる私達からしてみれば、超が付くほどの有名人に出会ったという事になる。


「あ、アリス、どうしよう私あの人一瞬でも疑った自分が恥ずかしい」


「う、うん」


 これには私もセレナも動揺を隠せない。あれだけの魔力を感じ取れたのも、当然なわけでもしかしたら私が感じ取れている以上の魔力を持っているに違いない。


 本当に失礼な事をしてしまった。


「ヒアラさん、本当に払わなくていいんですか? 治療代」


「ボランティアだからいいのぉ。その代わり、一つ話を聞かせて欲しいなぁ」


「話?」


 そう言いながらヒアラさんが視線を向けてきたのは、私。何とも当然のような流れだった。


「あなた、人形使いよね」


「は、はい」


 急に真面目な口調になるヒアラさん。その変わりっぷり、私は思わず背筋が凍りつく。


(もしかしてさっきの魔法、見られた?)


 いや、彼女の家のすぐ近くで魔法を放とうとしたのだから見られても当然。


「ならどうしてその魔法に手をつけたの?」


「どうしてって」


「知っているわよね、その魔法がこの世界にもたらすのは、闇でしかないって」


「……」


 私は黙ってしまう。セレナとハルカは小声で何かを話しているみたいだけど、それを聞き取れるほど今の私には余裕がない。


 世界に闇をもたらす魔法。


 この身を砕く以上に、この禁忌は代償がでかい。


「あなたの仲間が止めに入らなければどうするつもりだったの? この森を闇に染め上げるつもりだった」


「そんなつもりじゃ」


「なら安易に使おうとしないで。これは一人の魔法使いとして、そして一人の人間としての忠告よ」


 三大魔法使いからの忠告は、私の心に響いた。でも響いても、それを受け入れるつもりはなかった。


 間違った道なんて、使った時から知っている。だから誰かにやめろと言われようが何しようが、私はその道を変えるつもりはない。


『我が主人も随分と頑固な者じゃのう』


 どこかで声がするけど、それも無視しよう。


「と、こんな真面目な話はここまでにして、三人は今からイヅチちゃんに会いに行くんでしょぉ」


 ヒアラさんの言葉に返事をしなかった私に対して、とくに何も言わずに彼女はいつもの口調に戻る。


「はい。私の仲間のユウマがそこに向かっているので」


 その言葉に対して答えたのはセレナ。

 私にとって色々な事がありすぎて、すっかり頭から離れていたけど、そもそも私達がこの森に入って来た目的はそれだ。


「だったら私が転送魔法で三人とも送ってあげる」


「え? 本当ですか? そんな事までわざわざ」


「いいのいいの。これも私の好意だっと思って。それにちょっと面白そうだから」


「面白そう?」


「じゃあ行くよ、ワープ」


 そうヒアラさんが唱えると、私達三人の足元に魔法陣が出現し、そして一瞬のうちに雷神の元へワープしたのだった。


「な」


「え?」


「あ」


 ただそのタイミングが悪いのか、良かったのか私達の目の前に現れた光景は、


「な、何をしているのユウマ?」


「ちょ、え、これは」


 何故か素っ裸にされているユウマと、それを意味ありげに眺めている雷神と思わしき子がそこにいた。


「ゆ、ユウマってやっぱりロリ……」


「決して違う! これにはちゃんとした理由があるんだよ!」


 私達は一体何を見せられてるのだろう。

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