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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第2章真夏の夏祭り盛り上げます
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第24話夜に轟く雷鳴とその娘

 たった一日、だけど大盛り上がりとなった水神祭から一夜明けて、僕達は朝早くにフュリーナを出発する事になった。


「この度は本当にありがとうございました!」


「いえ、楽しんでいただけて本当に良かったです。また何かありましたら、いつでも依頼してください」


「フュリーナを代表して、感謝します。またいつでも来てください、貴方達なら大歓迎ですので」


 最後に僕はセンリさんとと会話を交わす。本当に喜んでもらえて、こちらとしてはすごく嬉しい。気持ちよくアルカンディアへと帰れる。


「それではまた!」


 僕達は挨拶をしてアルカンディア行きの馬車へと乗る。


「まさかあんなに喜んでもらえるなんて思っていなかった。頑張った甲斐があったね」


「ユウマの知識がなかったら、ここまで盛り上がらなかったよね」


「男の割には、頑張った」


 馬車がフュリーナを発ってからしばらく、僕がそんな事を呟くと、アリスとハルカが反応してくれる。しかしセレナだけはどこか元気が無く、僕は朝からずっと心配だった。


「どうしたの? セレナ。考え事?」


 僕は隣に座って、ずっと外を眺め続ける彼女に声をかける。だけどすぐに返事はなかった。


「セレナ?」


「え、あ、呼んだ?」


「呼んだというか、朝からずっと元気がないから心配でさ」


「げ、元気がないわけないでしょ! ほら、い、いつも通りの私でしょ?」


 何故かポーズを取り始めるセレナ。それがかえって僕達を心配させた。


 セレナの様子が昨晩からずっとおかしい。


 特にフェルナに出会ったと話した後から。


「やっぱ変、セレナ。本当にどうかしたの?」


「あ、アリスまで……。平気よ平気、ちょっと水神祭の疲れが残っていただけだから」


 そう言うと、セレナは目を閉じてそのまま無言になってしまった。また誤魔化すように寝たのだろう。それは誰から見ても分かる事だった。


「怪しい」


 アリスが一言そう言葉を漏らす。それは僕もハルカも同じだった。


 まだ出会って一ヶ月。


 されど一ヶ月。


 セレナの様子は誰がどう見てもおかしかった。


「やっぱり昨日の深夜のことが関係あるのかな」


 次にハルカがそんな事を言う。昨日の深夜、僕達が寝静まったのを見計らったかのようにセレナは外へと出て行った。その後は追う事はしなかったものの、僕達三人はそれを認識していた。


「隠すくらいなら相談をしてくれてもいいのに」


「相談できないから苦しんでるんでしょ? 私達が首を突っ込むような事じゃないと思う」


「でもやっぱり」


「「「気になる」」」


 満場一致の意見が馬車の中で出る。セレナがこれを聞いているのかは分からないけど、いつかは知りたい。彼女の事を。


「とにかくその辺りの事はアルカンディアに戻ってからにしよう」


「うん」


 朝早起きだったので、その後僕達はアルカンディアまでの馬車の中で、セレナと同じように眠りについた。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「お客様、起きてください。到着しましたよ」


 再び僕が目を覚ましたのは、すっかり夜になった頃。馬主さんの声で目が覚めた。僕は軽く体を伸ばしながら、馬車の外に出る。


「って、え?」


 だけど僕はそこである事に気がついた。


「あ、あれ馬主さん、ここはどこですか?」


「どこも何もここがアルカンディアと聞いていましたが」


「聞いていた? もしかしてアルカンディアの場所を知らなかったんですか?」


「はい。まだ馬主としての力は未熟でしたので、全てを把握していなかったんです。もしかして違っていましたか?」


「違うも何もここは……」


 ここはどこだ?


「と、とにかく今すぐ戻ってください! フュリーナに戻ったら僕が道を教えますので」


「どうしたのユウマ。騒がしくして」


 慌てる僕に対して、呑気に馬車から出てきたのはセレナ。


「ってあれ、ここアルカンディアじゃないわよ!」


「そうなんだよセレナ。この馬主さんはアルカンディアまでの道を教えてもらって、僕達を連れて行ったみたいなんだ」


「やられた」


「え?」


「馬主さん、今すぐ馬車を出して! そうしないと」


 セレナの声をかき消すかのように、馬車の近くに雷が落とされる。まるで僕達を狙ったかのようなそれに、僕はビックリしてしまう。


「もう勘付かれた。ほら早く」


「は、はい!」


 セレナに促され、馬主さんは慌てて馬を動かす。僕とセレナは急いで馬車に乗り込むが、再び近くに落雷が起きる。


「ひっ」


「馬主さん、ここからひたすら北に逃げて!そうすればこの森を抜けられるはずだから」


「は、はい!」


 セレナは馬主さんに必死に指示を出す。こんなに騒がしいというのに、ハルカとアリスはそんなのにも動じずにすやすやと眠っている。


「謀られた」


「え?」


「あのエルフに謀られたの!」


「エルフって……センリさんの事?」


「そう! ここは雷神が統治している森、鳴雷の森。木々が所々焦げているところがあるでしょ? それがこの森の証拠。許可なしで入ったらまず生きて帰ってこれない場所なの」


「どうしてそれとセンリさんに関係が?」


「分からない? 今回のフュリーナの事件、明らかに不自然だったでしょ」


 セレナの言葉で僕は感じていた一つの違和感を思い出した。


 今回の襲撃があまりにピンポイントだった事


 フュリーナ水神祭は観光客がかなりの数だった。つまり魔王軍からしたら絶好の餌だ。でもだからと言ってその人がいる丁度いいタイミングで襲撃出来るはずがない。


 祭に詳しい人がいなければの話だが。


「じゃああの人は、魔王軍との内通者?」


「そういう事。けど作戦は失敗に終わった。だから都を守った私達をピンポイントで狙った。馬主さんにこの場所をアルカンディアと教えて、確実に命を奪うために」


「そんな……そんな事って」


 信じられない。でもそれは紛れも無い事実なのかもしれない。そうでないと、話の辻褄が合わない。


「ところで雷神って何?」


「知らないの?! 雷神というのは……」


 セレナが説明しようとしたところで、急に馬車が大きく傾く。


「きゃあ」


「セレナ!」


 その衝撃で馬車の外に放り出されたセレナを、何とか腕を掴む。だけど馬車のスピードも相まって、彼女を馬車の中に引き戻す事ができない。


「ユウマ、このままだとユウマも」


「分かっている。でも絶対に離さない」


「ユウマ……」


 僕は今自分にある力を全て使って彼女を引っ張る。だけど不幸にもその近くに雷が落ち、再び大きく馬車が大きく揺れる。その衝撃で、馬車から乗り出していた僕も外に放り出されて……。


「あ」


 セレナと共に馬車から落下してしまったのだった。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「あ……リス。アリス!」


 誰かが私を呼んでいる。誰だろう、私の眠りを妨げるのは。


「起きて! アリス」


「ハル……カ?」


 私の眠りを妨げたのはハルカだった。


「どうしたの?」


 私は不機嫌になりながらも、目を覚ます。まだ私とハルカは馬車の中にいた。そういえばフュリーナを馬車で出て、それからしばらして眠ってそれから……。


「大変なの! ユウマとセレナがいない!」


「え?」


 馬車の中を見回す。しかしそこにはハルカの言う二人の姿がなく、動いているはずの馬車も何故か止まっていた。


「一体何が」


「分からない。でも外を見て」


 ハルカに言われて外を見る。そこにあったのはアルカンディアではなく、森の入口。馬車の車輪の後から、この森から出てきたように見える。


「この森……」


「アリス知っているの?」


「ハルカ、馬主さんは?」


「それが私が起きた時には二人と一緒に居なくなっていて、馬も……」


 私は馬車から出て状況を確かめる。この森を何とか頑張って出てきたのか、馬は動かなくなっていた。若干ながら焦げた匂いもする。


(やっぱり、ここは)


 私は森の入口を眺める。そしてユウマとセレナがいなくなった原因、そして彼らがどこへ行ってしまったのか何となくだけど悟った。


「ユウマ達私達を置いてどこへ行っちゃったのかな」


「多分ユウマ達はあの森の中」


「え?」


「そしてあの森は、雷神がが統括する森で、鳴雷の森。あそこに立ち入ったら、帰ってこれる方が少ない」


「どうしてそんな場所にユウマ達が?」


「多分ユウマ達は馬車が逃げてる途中で落とされた。馬主さんもどこかで」


「でもどうしてそんな危険な森なんかに、馬車が?」


「それはきっと」


 本当はもっと警戒するべきだった。今回の魔王軍の襲撃があまりに不自然な形だった事に。だけど私は依頼主だからと言って信じてしまった、あのエルフを。


「とにかく私達で探しに行こう、ユウマとセレナを」


「うん。このまま私達だけで逃げるわけにもいかないもんね」


 私とハルカは馬車にあった荷物を手に取り、森へと歩き出す。それが例えどんなに危険なものだとしても、


 唯一私の事を認めてくれた彼を、見捨てたくない。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「何とか雷は止まったね」


「うん」


 馬車から放り出され、森の中に置いてけぼりにされた僕とセレナは、一旦近くの洞窟に避難して雷が止むのを待っていた。


 そしてそれが収まったのは、すっかり日が昇ってしまった頃。僕とセレナはこんな危険な中で、一晩を過ごす事になってしまったのだった。


「私しばらくは雷見たくないかも」


「僕も」


 僕とセレナはため息を吐く。流石に雷がトラウマになってしまいそうだった。

 でも僕達のため息の原因は、もう一つ別にあった。


「ねえねえユーマ、雷って怖いの?」


「それはまあ、怖いよ」


「へえ怖いんだー」


 今この洞窟には僕とセレナ以外にもう一人の存在がいる。頭に角を生やしたまだ小学生くらいの金髪の女の子。


 名前はまだ聞けていない。


 けど名前より大切な事が、この女の子にはあった。


「じゃあユーマはお母さんが嫌いなんだね」


「ね、ねえ、改めて確認するけど君のそのお母さんって」


「うん、お母さんは神様だよ。悪者にはドーンって雷を落として、真っ黒焦げにしちゃうんだ」


「ドーンって落として」


「真っ黒焦げ……」


 彼女のお母さんはなんと、先程まで僕達に雷を落としてきていた雷神そのものだという。こういうのって女性のイメージがないけど、どうやらそれは間違いないらしい。


(どうしよう、困った……)


 僕達の無事にこの森から出られるかな……。


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