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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第2章真夏の夏祭り盛り上げます
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第18話フュリーナ水神祭 準備編①

 依頼者によると、僕達に盛り上げて欲しい祭りというのは、三日後にフュリーナで行われる水神様を年に一度奉る水神祭というものらしい。毎年行われているものらしいけど、祭りと称するには盛り上がりにかけているらしく、今年はどうにか盛り上がりたいという事で依頼をしたらしい。


「フュリーナ水神祭、確かに聞いた事はあるわね。でもそういう神を奉る祭りって、盛り上がりとか必要なのかしら」


「でも毎年多くの人が見に来ているんだから、多少は盛り上がっていたんじゃないかな。依頼者にはそう書いてあったし」


「まあ内容はともあれ、問題は」


「どうやって盛り上げるか」


「だね」


 水の都と言われているのだから、そういう催し物に必要なのは初めて水系統の魔法だろう。しかしあいにく、僕達のパーティーに水魔法を使える人がいない。むしろ魔法使いよりは剣士や人形使いといった、前衛タイプが多いパーティーだ。僕は僕とて、使えるのは光の魔法だしさてどうしたものか。


「残されている時間もないし、すぐに決めないと」


「それなら任せて」


「アリスに考えでもあるの?」


「ここに着く前から考えていた」


 そういえばこの依頼を受けてきたのはアリスだし、馬車に乗っている時からこの祭りに意欲を示していた。


「流石アリスね。それで具体的にはどんなことを考えたの?」


「私の人形を沢山使って」


「うーん、セリナはいい考えある?」


「折角だし水を使ったアートを作ってみたいな」


「でも三日でどうにかなるかな」


「だから人形を」


「ハルカは何か考えとかある?」


「私祭りというのを知らないから……」


「やっぱりそうだよね」


 ググッ


「痛い、痛い。無視したのは悪かったから腕を引っ張らないでよ」


「無視するから悪い」


「いや、だってさ」


 祭りにあの人形を沢山使ったら子供とか絶対に泣くよ?


「そういうユウマは考えあるの?」


 アリスはものすごく不満げに僕に尋ねる。一応僕には一つ考えがあったけど、正直な話二日でどうにかなるかは分からない。


「うーん、一番オーソドックスなのは屋台とかで店を立てて行う盆踊りかな」


「盆踊り? 何それ」


「えっと、盆踊りというのは」


 全員に説明する。盆踊りなら大人から子供まで楽しめるし、この世界ではまずない祭りだろう。倭の国にあるかは不確かだけど、僕の世界の文化を取り込めるなら嬉しいこの上ない。


「盆踊り、面白そう」


「ここの水神祭が果たしてどんな形で行われているものか分からないけど、僕の知っている一番有名な祭りの形はそれかなって思って。ただ、問題があるのは時間なんだよね」


「そのやぐらを建てるのって、普通はどのくらいかかるの?」


「詳細は分からないけど、本来は骨組みとかは用意されているものだからそこまでは長くかからないけど、その基礎がないからなぁ。うーん、やっぱり難しいかな」


 やぐらを建てるとなるとそれなりの技量と、時間が必要になってくる。それを素人の僕らがどうにかできるかと言われれば、不可能に近い。


(いい案だとは思ったんだけど)


 完璧とまではいかないけど、形だけでも出来ないかな盆踊り。


「やぐらとかは難しいけど、屋台とかならまだ作れるかも。そこでこの町の特産物を売ったりするんだ」


「それはありかもね。この水神祭に来る人って多方面から来る人がいるから、フュリーナらしいものを売るのもいいわね」


「じゃあ私も人形売る」


「子供が泣かない程度にしてね」


「多分それは難しいんじゃないかな」


 とにかく時間は限られているし、他の案がない以上この方針で進むしかない。依頼は必ず成功させないと。


「とりあえず街の人にも相談しながら作業始めよう」


『おー!』


 こうして僕達の、フュリーナ水神祭盛り上げよう作戦が幕を開けた。


 ■□■□■□

「ユウマ、これはどこに運べばいいの?」


「それはとりあえずそこに置いておいて」


「分かった」


 フュリーナに着いた時間が時間なだけに、本格的に作業に取り掛かった頃にはすっかり夜になっていた。


「お疲れ様。君がユウマ君だね」


「あ、センリさん。どうも」


 僕が作業をしていると今回の依頼者であるセンリさんが話しかけてきた。彼はエルフ族の人間で、今回の祭りの主催者だった。


「ユウマ君が考えた、祭りでフュリーナの特産物を売る。その発想はなかったよ」


「盛り上げるとはちょっと方向が変わってしまってすいません」


「いやいや、君達が協力してくれたらきっといい水神祭になるさ」


「ありがとうございます。僕達も期待に応えられるように頑張ります」


「肩に力を入れなくていいさ。何か協力できることがあればどんどん言ってくれ」


「はい」


 センリさんはそう言って僕の元から離れていく。


(やっぱりいい人だな、センリさん)


 どんな依頼者かと思っていたけど、すごく好青年の人でとても話しやすかった。おまけにそこはかとなく爽やかさがあるし、ああいうのは少しだけ憧れる。


「うーん、どうも引っかかるのよね。あの依頼人」


 そのやり取りを見ていたセリナがそんな言葉をもらす。


「引っかかるって何が?」


「いや、私の気のせいならいいんだけど」


「なんだよ気になるな」

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