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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第1章影が薄くても冒険始めます
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第16話結成と告白

 まさかアリスの方からパーティに入りたいと言われてしまうとは思っていなかったけど、これで二人だったパーティが四人に増えた。一般的に考えて、人数はこの位が丁度いいとミナさんも言っていたので、僕のパーティの結成だ。


「まさか本当にアリスがパーティに入ってくれるだなんて、ユウマもなかなかのやり手ね」


「僕は特に何もしてないよ。それを決めたのは本人の意志だし、僕はアリスと約束をしていただけだから」


 それを記念して、夜に四人で結成記念のちょっとしたパーティーを開く事になった。元々ハルカの歓迎会という形だったのだけど、アリスが入ってくれる事になったので、こういう形になった。


「えっと、初めまして、ハルカです。よろしくお願いしますセレナさん」


「そんなに硬くならなくていいわよ。さん付けなんてしなくていいし、ユウマから聞く限りだと敬語なんて使わないんでしょ?」


「な、何か緊張しちゃって。こうやってしっかりした人と話すの久しぶりだし。それが礼儀だと思ったんだけど」


「それだと僕がしっかしりしてないみたいだけど」


「だって私のユウマの第一印象、変態だもん」


「何という濡れ衣!」


 まあ確かにあれは、他の人から見れば警察を呼ばれてもおかしくない状況だったのは否定できないけど。


「でも、あれは変態」


「アリスは何も言わなかったじゃん」


「変質者にはなりたくなかった」


「元から探す気すらなかったくせに」


 そんな風にワイワイしながら食事をしていると、ミナさんが僕達の元にやってくる。


「最初は心配していたけど、すっかり仲良しになったみたいでよかった。流石ヒーロー君ね」


「もうその呼び方やめてくださいよ。いつまで引っ張るんですか」


「ヒーローなのは確かなんだからいいでしょ? それに女性ばかりに囲まれて羨ましいんだから、少しくらいからかってもいいでしょ?」


 イタズラっぽく言ってくるミナさん。言われてみればこのパーティ、僕以外女性なわけだし、何とも羨ましい状態なのは確かなのかもしれない。けど、羨ましがるのってどちらかというと、男の人達なのでは?


「もしかしてミナもパーティに入りたかったりするの?」


「そうじゃないわよハルカ。こういうのは誰と誰がくっつくのかを外から見ている方が楽しいのよ」


「誰と誰がって、何を言っているのよ」


「だってハルカがユウマ君について来たのって、気になるからってさっき……」


「ちょ、ちょっとそれは言わないって……」


 急に慌て出すハルカ。気になるって何の事を言っているのだろうか。


「ユウマ、鈍い」


「鈍いわね。こんなに分かりやすい子なのに」


「二人とも内緒話をするなら、小声でやってくれないかな」


「だって」


『ねー』


 ニヤニヤしながらこちらを見るアリスとセレナ。二人ってこんなに仲良しだったっけ?


「ゆ、ユウマ、今ミナが言っていたことは聞かなかった事にして!」


「え? あ、うん」


「絶対よ!」


 ■□■□■□

 結成記念パーティも日付が変わる頃にはお開きとなり、それぞれ自分達の住む場所へと帰って行った。

 僕とセレナは宿に戻ると、それぞれの部屋には入らず二人で何故か僕の部屋にいた。


「そういえば僕達はいつまで宿暮らしなのかな」


「貧乏生活から脱出してからでしょ」


 もう間もなくこの世界に来て二週間。僕とセレナは何とか宿暮らしが出来るくらいのお金は手に入れたものの、未だに貧乏生活なのには変わりなかった。


「でもこれでパーティは四人になったわけだし、これから沢山仕事行けば何とかなるでしょ」


「まあ、そうだよね」


「それにもうすぐ夏の季節だし、そっち系の仕事なら増えていくだろうし」


「え? 季節とかあるの?」


「当たり前でしょ? 何を言っているのよ」


「あ、うん。そうだよね」


 桜とか梅雨とか全くこの世界で見てないから、そういう概念はないのだと思ったけど、どうやらこの世界にもちゃんと季節の概念はあるらしい。そして間もなく夏ということは、今地球でいうと六月の後半くらいなのだろうか。


「夏のそっち系の仕事ってもしかして、お化け退治とか?」


「ご名答。皆怖がって受ける人がいないけど、成功すればそれなりの報酬は入ると思う」


「へえ」


 僕意外とそういう系苦手なんだけど、それって大丈夫なのかな。


「まあ仕事の事はまた考えるとして、ユウマにちょっと話したいことがあるの?」


「話したいこと?」


「これから先四人で仕事始めるなら、ユウマにだけでも話しておこうかなって」


「それはセレナの事?」


「うん」


 どこか改った様子で何かを話そうとするセレナ。そういえば少し僕の中でも引っかかっていたことがあった。

 それは初めてミナさんに会った時、


『あなたがセレナの新しいパーティの子ね』


 そんな事を言っていた。それにあの浮遊スキルの事もそうなんだけど、もしかしてセレナもアリスみたいな悪名でもあるのだろうか。


「以前私には浮遊スキルがあって、それでまともに攻撃できないから、パーティに何度も外されたことがあるって言ったの覚えてる?」


「うん。騎士なのに浮いてばかりだなんて役に立たないって言われて、ろくにパーティを組んでくれる人はいなかった。けどユウマは違った」


「別に僕はそんなの気にしてないよ。むしろ僕の方が役に立たないと思うし」


「ありがとうユウマ。そんなユウマを信じて、もう一つユウマに私の事を話しておきたいの」


「何?」


「ユウマ、実は私が浮遊している本当の理由はね……」


 次に彼女から発せられた言葉は、僕の予想を超えているもので、本来ならこんな事を語られる身分でもないとも分かっていた。でも彼女は僕を信頼して、話してくれたのだ。


「私騎士ではあるんだけど、本当はずっと昔に死んでいるの」


 自分は既にこの世の人間ですらない事を。

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