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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第1章影が薄くても冒険始めます
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第11話滅びた村と大剣少女①

 アリスの人形にでも魂が移ってしまったのか、光の女神様は人形になって僕達の目の前に姿をあらわした。


「あれ? この人形、形変わってる」


 どうやらその異変にアリスも気がついたらしく、女神様が入った人形を持ち上げたりしている。


「ひゃっ、く、くすぐったい。や、やめてぇ」


「この人形一番の欠陥品なのに、何で喋るの」


「た、助けて、ゆ、ユウマ」


 あちこち触られてくすぐったいのか、女神様はすごい声を出しながら僕に助けを求めてくる。その光景を見たアリスは、


「この人形処分しないと」


「えぇぇぇ」


 この人形をいらないと判断し、それを外へ捨てようとする。流石に神様が捨てられるのを無視する事は出来ないので、僕は慌てて彼女を止めた。


「ま、ま、待ってアリス」


「何ユウマ? こんな突然喋り出す人形なんて必要ないでしょ? それにユウマの名前を呼んでいるあたり、何かの呪いよ」


「この人形は、ぼ、僕がもらうから」


「え?」


 咄嗟の判断で僕はこの人形を引き取る事を決意する。姿が見えないよりは、こうして形としていた方がまだ心強い。それにこのまま捨てられたら、何かバチが当たりそうで怖かった。


「男が人形とかちょっと引く」


「ひ、引いても構わないから、す、捨てるのだけはやめてほしいんだ」


「もしかしてこの人形を自分の妄想彼女にでもする気じゃ……。名前まで呼んでもらっているから」


「そういう趣味は僕にはないからね!」


 この人形の中身が女神様だなんて言ってしまったら、なおの事ドン引きされるだろうし、アリスには意地でも理解してもらわないといけない。


「まあ、私が持ってても気味が悪いし、そこまでほしいならあげるけど」


「ありがとうアリス」


「その代わり私が呪われたら、ユウマのせいにするから」


「これは呪いの人形なの?」


「違う。でも……他の人からは呪いの人形って呼ばれてる」


「あ」


 そこまで言って、アリスの言葉の意図が理解できた。


(やっぱり気にしてるんだ……)


 さすがはミナさんだと思いたい。


「私と仕事に行くと、誰か一人は必ず不幸な目に合うの。だから私は誰か仕事に行くのを嫌うようになったし、一人で行動する事が多くなった」


「それは偶然起きたとかじゃなくて?」


「偶然が何度も起きたら、それはもはや偶然ではない」


「そっか」


「だから本当は二人で行くなんて事は、本当は嫌だった。誰が死ぬの分かりきっていたから」


 恐らくアリスは、ミナさんが言っていたように誰よりもその事を気にしていた。最初は偶然だと思っていても、そんなのが何度も何度も繰り返されてしまったら、そんなのは偶然ではない。

 そしてアリスはそれが自分のせいだと次第に理解してしまい、人と触れる事も嫌がった。だから最初、僕との会話に人形を使っていたのかもしれない。ただ、その場にセレナがいたから人形を使わなくなったのだろうけど。


「僕は絶対死んだりなんかしないよ」


「そんなの分からない」


「約束する。今日も、そしてこれからも」


「これから?」


「アリス、僕達とパーティを組もう。セレナだって大歓迎してくれるだろうし、僕は一人で苦しんでいるアリスを見て見ぬ振りできない」


「でも私は」


「今決めなくてもいい。ただ、この仕事が無事終わったら、真剣に考えてほしい」


「……分かった。ユウマが生きてたら、約束する」


「ありがとう」


 ミナさんからその話を聞いた時に僕は決めていた。アリスの悩みを解決するためには、僕達がパーティを組んで、その呪いまがいなものを解いてみせようと。


「おーい、お二人とも。クロムに到着したぞ」


 そう僕達が約束したのを見計らったかのように、僕達を乗せた馬車は目的地のクロムに到着した。


 ■□■□■□

 馬車にはまた翌日に向かいに来てもらうことにして、僕達二人はクロム村に降り立った。


「うわ、これは酷い」


 降りてすぐに目に入ったのは、村とは言えないくらい焼け野原と化した地だった。かすかに建物が黒焦げになったりしているところを見ると、どうやらここに本当に村は存在していたらしい。


「とりあえず村に入ろう」


「あ、待ってよアリス」


 僕を置いて村に足を踏み入れる。その足取りは何故か少しだけ軽やかに見えるのは気のせいだろうか。


「とりあえず、ハルカという子を探さないと」


「ユウマは村全部見てきて。私は周辺だけ探してみるから」


「役割分担おかしくない?」


 見た感じクロム村はそこそこの大きさだったらしく、僕一人で探したら時間がかなりかかってしまいそうだ。それに、


「もう夜だから、一人で行動するのは危ないよ」


 アルカンディアから半日かかっているので、それは既に真っ暗な状況だった。夜なんて何が起きるか分からないし、女の子一人を探索に行かせるわけにはいかない(大量の人形はいるけど)。


「じゃあ私は安全のために寝てる」


「仕事しようという発想はないの?」


 とりあえず安全の為にも、僕達は二人で村全体を歩き回ることに。人の気配がすればいいのだけど、そんな気配は先ほどから感じられていない。


「ハルカっていう子、無事だといいな」


「ユウマ、間違えて魔法で消し去ったりしないよね」


「そんな器用な事は僕には出来ないから」


 暗闇の中でのハルカの捜索は続く。

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