もう一度、会えたら
私は、傘もささずにその場で佇んでいた。
今日、私は、彼に振られました。
正確には、彼の本命が、私じゃなかった・・・だけ。
物凄く好きで、勇気を出して告白したのが、一年前。
でも、彼にとって、私は、ただの女友達だったらしい・・・。
本命の彼女と居るときの笑顔や困った時の顔が、やけに優しくて・・・。
私には見せない姿を彼女に見せていた。
思い返せば、デートをドタキャンされた事も数度あり、急に時間が出来たから会おうと言い出したかと思ったら、断ってきたり・・・。
私、彼の言いなりの程のいい彼女だった。
あーあ。
私は、彼女には敵わない。
こんなに想いが溢れてくるのに・・・。
諦めなきゃいけないなんて・・・。
今日は、大学も休み。
何もすることがなくて、街中を歩くことにした。
空は、どんより黒い雲が・・・。
でも、そんなの気にせずに歩き出した。
そして、出くわしてしまったのだ。
彼が、私以外の女の子と仲良く腕を組んで、歩いてるのを・・・。
ねぇ、その子は誰?
あなたは、私の彼じゃなかったの?
それとも、私があなたの彼女じゃなかったの?
私は、その場で佇むしかなかった、
ポツリ・・・ポツリ・・・。
空から、雨が降り始めた。
雨の中、私は微動だにしなかった。
通行人が行き交うなか、彼が消えていった方向を見ていた。
傘を挿した人々が、私を振り返る。
こそこそと話してる声が聞こえてくる。
私の事だと気付くのに時間は、然程かから無かった。
私の頬を伝う雫。
それを洗い流すように空を仰いだ。
「君、大丈夫?」
不意に声がかけられた。
私の頭上には、傘が挿されている。
声の方を向くと、心配そうに私を見ていた。
「さっきから、あそこで見てたんだ」
って、近くにあるカフェを指す。
「取り合えず、この傘挿して・・・」
手渡された。大きめの蛇の目傘。
「今さら挿しても同じかもしれないけど・・・。それ以上濡れないだろ」
優しい笑顔を向けてくる。
「じゃあ・・・」
それだけ言って、自分は傘を挿さずに走っていってしまった。
私は、彼の背中が見えなくなるまで、見送ると家に帰る事とした。
身体が冷えきってしまったので、お風呂に入る事にした。
湯船に浸かりながら、彼の事を想った。
その度に涙が溢れてきた。
ぬぐってもぬぐっても、溢れてくる。
彼と過ごした一年。
どれも、大切な思い出。
だけど、彼の笑顔は、私に向けてない。
彼女だけに向けられてるのだ。
もう、諦めなきゃいけない・・・。
彼女には、勝てないのだから・・・。
私は、頭を切り替えて、湯船から出た。
脱衣所から廊下に出る。
ふと、玄関に置いた傘を見た。
あの傘、返すこと、できるのだろうか?
名前も連絡先も知らない。
もし、もう一度会えたなら、ちゃんと言おう。
『この間は、ありがとうございました』
と、笑顔で・・・。




