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もう一度、会えたら

作者: 麻沙綺
掲載日:2014/05/20

私は、傘もささずにその場で佇んでいた。



今日、私は、彼に振られました。

正確には、彼の本命が、私じゃなかった・・・だけ。



物凄く好きで、勇気を出して告白したのが、一年前。

でも、彼にとって、私は、ただの女友達だったらしい・・・。



本命の彼女と居るときの笑顔や困った時の顔が、やけに優しくて・・・。

私には見せない姿を彼女に見せていた。



思い返せば、デートをドタキャンされた事も数度あり、急に時間が出来たから会おうと言い出したかと思ったら、断ってきたり・・・。


私、彼の言いなりの程のいい彼女だった。



あーあ。

私は、彼女には敵わない。

こんなに想いが溢れてくるのに・・・。

諦めなきゃいけないなんて・・・。






今日は、大学も休み。

何もすることがなくて、街中を歩くことにした。


空は、どんより黒い雲が・・・。

でも、そんなの気にせずに歩き出した。



そして、出くわしてしまったのだ。

彼が、私以外の女の子と仲良く腕を組んで、歩いてるのを・・・。



ねぇ、その子は誰?

あなたは、私の彼じゃなかったの?

それとも、私があなたの彼女じゃなかったの?



私は、その場で佇むしかなかった、



ポツリ・・・ポツリ・・・。

空から、雨が降り始めた。



雨の中、私は微動だにしなかった。

通行人が行き交うなか、彼が消えていった方向を見ていた。


傘を挿した人々が、私を振り返る。

こそこそと話してる声が聞こえてくる。

私の事だと気付くのに時間は、然程かから無かった。




私の頬を伝う雫。

それを洗い流すように空を仰いだ。





「君、大丈夫?」

不意に声がかけられた。

私の頭上には、傘が挿されている。

声の方を向くと、心配そうに私を見ていた。

「さっきから、あそこで見てたんだ」

って、近くにあるカフェを指す。

「取り合えず、この傘挿して・・・」

手渡された。大きめの蛇の目傘。

「今さら挿しても同じかもしれないけど・・・。それ以上濡れないだろ」

優しい笑顔を向けてくる。

「じゃあ・・・」


それだけ言って、自分は傘を挿さずに走っていってしまった。



私は、彼の背中が見えなくなるまで、見送ると家に帰る事とした。




身体が冷えきってしまったので、お風呂に入る事にした。



湯船に浸かりながら、彼の事を想った。

その度に涙が溢れてきた。

ぬぐってもぬぐっても、溢れてくる。

彼と過ごした一年。

どれも、大切な思い出。



だけど、彼の笑顔は、私に向けてない。

彼女だけに向けられてるのだ。



もう、諦めなきゃいけない・・・。

彼女には、勝てないのだから・・・。



私は、頭を切り替えて、湯船から出た。




脱衣所から廊下に出る。


ふと、玄関に置いた傘を見た。


あの傘、返すこと、できるのだろうか?


名前も連絡先も知らない。


もし、もう一度会えたなら、ちゃんと言おう。



『この間は、ありがとうございました』


と、笑顔で・・・。

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