祖父との約束(弌)
季節は辰神と出会った「春」を何気に通り過ぎ、「夏」の季節に突入。
一つ屋根の下、とある少年「青峰竜也」は珍しく机と向き合っていた。
夏休みに入ることで、「夏休みの課題」という青峰にとって異界生命体より大きな壁が現れてしまったからである。
夏休み後半は「狩る手伝い」や、「買い物の付添い」等といったハードスケジュールになるため、幼馴染の「朱羽矢雀」より、「できるだけ早く終わらせてね」との電話が入り、彼は残り少ない脳を働かせ、早く課題を終わらせようと努力している。
しかし普段勉強の苦手な彼にとっては何時までも保てず、たった数分経つと疲れて遂には机に倒れ込んでしまった。
そんな彼を見てだらしなく感じたのか、辰神がため息を吐いた後、
「起きろ、この野郎おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
と竜也の頭の中で、辰神の怒りの声が響き渡る。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ」
と竜也は、痛み始める頭痛に耐えきれず叫びだし、机に倒れる。
「おい・・・・・辰神さんよ・・・・起こすんだったら・・・・まともな起こし方が・・・あるだろ・・・・」
と痙攣したまま、竜也は辰神に話し出す。
もはや宿題をしている中、眠っている所をお母さんに見られ、怒られているのと同じである。
いくらゾンビと似た生命力の持った彼でも、内部からの激しい痛みには耐えられない。
「よぉ、目ぇ覚めたみてぇだなぁ~。ガッハッハ~、ざまぁねぇな。それにお前さんは、こんな起こし方じゃねぇとまともに起きねぇだろうと思ってなぁ~~。ガッハッハハハハ~」
と辰神はゲラゲラと笑い始める。
辰神が思いっきり笑っている中、竜也はふと右手に書かれている「龍」という文字を見て、辰神に言う。
「なぁ、お前って確か「俺の爺ちゃんが生きてた時から出会ってた」っと言ってたよな。」
「気になるのか、竜二郎が生きてた時の頃。」
と辰神は言う。あれだけギャハギャハと笑っていた辰神が、青峰の質問を聞いた途端、ピりッとした空気に替ったことに、竜也は声を聴いただけですぐに感じ取れる。
「まぁな。爺ちゃんが生きてた時代から、あいつら(ガーディアン)が大量に出始めたんだ。なにかきっかけがあるに違いないと思ったんだが、お前は爺ちゃんと契約してたから、何か知っているんだろう?。」
辰神はそれを聞くと、再びため息を吐きだしては、
「まぁ、俺的にはそんなくだらないことを聞く暇があれば、夏休みの課題という壁をどうかしてほしいんだけどな~」
と小さくつぶやいた。
痛いところをブスリと刺されたせいか、
「うっせ~~~。いいだろうそんなことは~~~~。」
と少し涙目になりながら叫びだす。
竜也にとっては、人間から言われるのはまだましだが、人外からそのようなことを言われたことで、ショックが大きかった。
そんな竜也を見て、笑いながら
「まぁ、しょうがねぇから話してやるか。」
辰神はさらに話を続ける。
「いつか話す機会が出てくるだろうと思ったのだが、予想以上に早かったなぁ~」
(いつかって、結局話す気満々だったのかよ。どうでもいいとか言ってたくせに・・・。というか最近思ったんだが、性格というか、キャラが変わりすぎだろ・・・)
と竜也は辰神の話を聞きながら、あえて口では言わず心の中で呟くことにした。
「なぁ、辰神。」
と竜也は辰神に言う。
「なんだ?」
と辰神は答える。
「課題しながら聞いてもよろしいでしょうか。」
と竜也は、珍しく敬語で話す。
その質問を辰神は言う。
「お前、それって俺の話を最後まで聞けるのか?っというか、お前もキャラ変わりすぎだろ・・・・」