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ゴンドールの大陸  作者: 芹沢 まの
第四章
78/88

国王の決意

 海の向こうのローランド王国では、相変わらずバルジーが何をするでもなく1部屋を占拠していた。

 暇をもてあまし、楽しみは朝昼晩の食事だけとなっている。そんなわけで、今朝も寝台の上で侍女の到着を待っていた。

 不意に扉の開く音で、バルジーは眉を上げた。どうやら待ちかねた朝食がやってきたらしい。そう思って頬を緩ませた直後、部屋にはずかずかと大きな足音が響いた。

 侍女のものとは思えぬその音に、バルジーは腰を上げかけた姿勢のまま固まった。

 姿を現したのは、分かりやすく不機嫌そうなアルベルトだった。


「――いつまで居るんだ!」


 開口一番、彼はそう言った。

 アルベルトはいつものように鎧に身を包んでいる。これから仕事か稽古なのだろう。バルジーは愛想笑いを浮かべ「おはようさん」と挨拶した。


「いつまでここに居る気だと聞いてるんだ!」

「えぇ~…」


 アルベルトはなんだか機嫌が悪い様子である。


「とっくに出て行ったと思っていたのに、だらだら怠けた生活しやがって!ここに居るなら武器のひとつも作ってろ!」


 材料も道具も無いのに無茶な話だと思いつつ、バルジーは一応しおらしく「悪いと思ってるけどさ…」と言ってみた。


「でもまだ俺、探されてるかもしれないんだよ…。もう少し経ってからじゃないとまた捕まるかもしれないじゃん?」

「そんなこと言って、一生居座る気か?」

「まさか、そんなっ…」


 バルジーは慌てて顔の前で手を振った。そう言いつついつ出て行けるか、まったく当てはないのだが。


「お前がのんびりしてる間に、アーロンは国を出て行ったぞ」


 突然、アルベルトがそう告げた。バルジーの動きが止まる。言葉の意味がとっさに理解できず、たっぷり数秒そのまま固まった。


「へ?」


 やっと出た言葉はえらく間が抜けていた。

 アルベルトが険しい顔のままバルジーを見ている。そして独り言のように「やっぱり知らないのか」と呟いた。


「え?えぇ??!!」


 バルジーは慌てて身を乗り出す。


「アーロンが、国を出た?!ええぇ?!ローランドから出て行ったのか?!」


 予想もしていない話にとにかく狼狽した。もしかしたら、何かの調査で自分との関係がバレて…。そんな不吉が考えが自然と頭に浮かぶ。


「あぁ。妹が居なくなったとかでな。兵士をやめて、探しに出て行った」


―――妹!!!


「王女が捕まったのか?!?!」


 とっさにそう叫んでいた。

 部屋に水を打ったような静寂が広がる。目を見開いて自分を見るアルベルトの表情で、バルジーはハッと我に返った。

 なにかまずいことを口走ったような気がする。それに気付いた瞬間、アルベルトの顔がみるみる険しくなっていった。


「…王女、だと?」


 怒気を含んだ低い唸り声に、バルジーの身がすくんだ。アルベルトはゆっくりとバルジーに近づいて来る。


「…貴様、何故それを知っている?」

「あああぁぁぁ!!!待った、待った、待ったーーー!!!」


 側に来ようとするアルベルトを両手を前に出して制する。けれどもそんな指示が通るはずもなく、国王はいつの間にかバルジーの目の前まで来ていた。


「答えろ」

「言う、言う!!言うからーーーー!!」


 バルジーの必死な叫びが、静かな部屋にこだましていた。



 どう考えてもごまかしきれず、バルジーはついに洗いざらい吐かされた。

 アリステアで捕まって拷問を受けたこと、命をつなぐためにゴンドールを操れる少女の名前を出した事、それがどうやら王女だったらしいこと…。

 そしてやっと逃げ出して今ここに居ると説明し終えたところで、バルジーは話を締めた。

 目の前のアルベルトの鋭い目が、バルジーをただ冷たく見下ろしていた。


「…嘘をつくなと、言ったはずだ」

「そうだけど、そうだけどさぁ!!!」


 バルジーは慌てて弁解を始めた。


「ゴンドールの脱け殻の話をアリステアでしちゃったなんて言ったら殺されると思うだろ?!俺だって必死だったんだよ!!やっとの思いで逃げてきたんだからさぁ~~!!」


 アルベルトは何も言わない。ただ黙ったままバルジーを見下ろしている。バルジーのこめかみにいやな汗が伝って落ちた。


「…王女が連れ戻された理由が分かった」


 独り言のように、アルベルトが呟いた。その言葉にバルジーは目を見張る。


「…理由?」

「処刑されたはずの王女が、今更連れ戻された理由だ」

「…処刑??」


 話が良く分からず何度も瞬きを繰り返す。

 アルベルトはそんなバルジーを見ると「アリステアはもうお前なんかに興味は無い」と言い切った。

 確信めいたその言葉に、バルジーは納得いかない様子で目を眇める。

 不意にアルベルトは背を向けた。何かを考えているのか、そのまま動かない。バルジーは大きな背中を眺めながら、ただその場の緊張感に耐えていた。


「――王女の、瞳の色は…?」


 落ち着いた声で、アルベルトが問いかけた。突然な質問に戸惑いつつ、バルジーは掠れた声で答えた。


「翡翠の、色だよ」

「やはりな」


 アルベルトが即座にそう言った。


「まさか、また再び…」

「”再び”?…何が?」


 話が見えずに問いかける。

 アルベルトは片手で頭を抱えている。バルジーの声など、もう耳に届いてはいないらしい。

 不意にバルジーを置いて、アルベルトは足早に去って行った。一度も振り返ることなく部屋を出て行く。

 バルジーは突然過ぎ去った嵐を、ただ呆気にとられて見送った。


 ◆


「アリステアへ行く」


 例によって執務室で仕事中のアルフォンス王子を訪れ、アルベルトは突然そう宣言した。

 父の言葉に、筆を止めたアルフォンスは驚いたように目を丸くした。


「父上が、ですか?」

「そうだ。近衛隊から騎士を数人同行させる。俺の不在の間、国を頼む」


 国王の代行自体はいつものことなので特に戸惑うこともないが、ローランドの国王が自ら国を離れていいのだろうか。

 アルフォンスは眉をひそめ「何故父上自らアリステアへ?騎士に代行を任せられないのですか?」と問いかけた。

 それは当然の疑問だった。

 アルベルトは息子の問いかけに一瞬迷うように視線を動かしたが、ふぅっと息を吐くと、顔を上げた。


「ゴンドール遣いの伝説を知っているか?」

「…ゴンドール…遣い…」


 聞いたことのない言葉だった。アルベルトはその反応に、彼がその伝説について何も聞いたことがないと理解したらしく、小さく頷いた。


「遠い昔に絶滅したと言われている、種族の名前だ」


 アルベルトは、息子に古い伝説を話して聞かせた。

 人の口から口へと伝わった、真実かどうかも分からない遠い昔の話。

 けれどもこの話をアルベルトがかつて今は亡き父から聞かされた時、それは”真実”であったと念を押されていた。


 ”その力は恐ろしい。淘汰されたのは、自然の摂理だ。二度と、現れてはいけない種族だ”


 父はそう言った。

 話を聞き終えたアルフォンスは、ただ言葉も無く父を見ていた。非現実的な物語を語る父に、違和感を覚えているのかもしれない。

 アルベルトは静かに言葉を続けた。


「その力を持つ者が、アリステア王家で再び産まれていた」


 アルフォンスが目を見開く。突然な話にどう応えていいのか分からず狼狽える。古い種族が再び、この世界に…?


「かつてアリステアをゴンドール遣いが支配した時、そこから逃げ延びた者達はローランド大陸でひっそりと暮らしていた。そしてゴンドール遣いの消滅とともに、ローランド王国は成長して今に至る。次に同じ歴史を繰り返したら、アリステアは間違いなくローランドを支配しようとするだろう」

「同じ歴史…」


 アルフォンスは呆然としつつそう呟いた。


「同じ歴史が繰り返されますか…?」

「繰り返そうと思えばな」


 アルベルトはそう言って苦笑した。

 処刑したと思っていた王女が持っている力を聞いて、アリステア王家はすぐにそれがゴンドール遣いの力であることに気付いたのだろう。

 即座に呼び戻した事実からも、彼等の野望が見て取れる。


「アリステアに向かって、どうするのですか?」

「今、そのゴンドール遣いをアリステア王家から奪い取ろうとしている奴等が居る。目的は全く違うところにあって、恐らくその種族の力など何も知らないだろうけどな。そいつらを、とりあえず追う」

「…そして?」

「そして奪還に成功した場合、その王女を…」


 アルベルトが一瞬口を閉ざす。その先の言葉を予想して、アルフォンスが顔をしかめた。


「殺すのですか?」

「それが、最善だ」

「――父上…!」

「分かっている」


 アルベルトが息子の言葉を遮って言った。


「その血だけを理由に命を奪うのが、残酷だということくらい…。けれども王女が生き続ける限り、彼女を巡っての争いは続く。そういう、運命なんだ。俺は、国王として、この国を護る。どのような手を使ってもな…」


 決意をはらんだ言葉が、アルフォンスの胸に重くのしかかる。彼は父から目を逸らし、口を閉ざした。

 それ以上、何も言う事ができなかった――。


 ◆


 アリステア王国にも、同じように穏やかな朝が訪れていた。

 王女の部屋で、中年の女官が忙しく動いている。プラチナブロンドの髪をきっちりとまとめ、一分の隙も無い。落ち着いた瞳は、冷たいアイスブルーだった。

 リンの朝食を手早く片付けつつ、机を拭く。リンが食べれないことを分かっているので食事はスープのみで、一応全部お腹に入れることができた。

 女官の動く姿を寝台に横になったまま見ながら、リンはまたぼんやりとしていた。


「今朝のお加減は如何ですか?」

 

 不意に手を止め、女官が事務的に問いかける。リンは額に手を当てつつ、「まだ、頭が痛いかな…」と答えた。


「かしこまりました。すぐ医師に連絡いたします」


 無表情に淡々と告げる。何もかもがただの仕事であることを隠す様子もない。けれども有能な女官なのだろうと思えた。


「…ありがとう」

「本日から、姫様付きの侍女が参ります。私がお側を離れる時には、その者になんなりとお申し付けください」

「はい…」


 女官は用事を終えると「失礼します」と頭を下げ、食器を乗せたお盆を手に、素早く部屋を退出して行った。


 ◆


 港町の宿屋で目を覚ましたアーロン達は、朝食を終えると王都へ向かうべく宿を出た。

 同じく王都へ向かう商人をつかまえ、その馬車の荷台に乗せてもらう。昨夜馬で向かった道を、今度は馬車に揺られていった。朝の光に包まれた景色は、昨夜とはまるで違って見えた。


「気持ちいい…」


 キースの隣に座るグレイスが目を閉じて呟いた。

 草木の香りを運ぶ暖かい風が顔を撫でる。いつものように長い黒髪は首の後ろで纏められているが、纏め切れない前髪が揺れて流れている。


「カッシュが来るとしても夜だからさ。王都に着いたら、見物しに行っていいよ」


 向かいに座るアーロンの言葉に、グレイスは「そうね」と言って微笑んだ。



 その頃、アリステア王城では侍女ミーナが女官であるイライザに呼び出されていた。

 ベテラン女官であるイライザは、侍女をまとめて指導する役も請け負っている。

 いつも無表情で笑っているのは見たことが無い。冷たい印象があるのは、そのアイスブルーの細い目のせいかもしれない。けっこういい歳のはずだが、まだ結婚はしてないという噂である。

 正直、無理もないと思えた。

 イライザはいつもの通りの無表情で、自分のもとへ来たミーナをじろりと睨みつけた。いや、実際は睨んでないのかもしれないが、ミーナには睨んでいるようにしか見えなかった。


「あなた、以前リンティア王女付きの侍女だったと聞いているけど」


 懐かしい名前が出てきた。


「あ、そうです!少しの間ですけど」


 そう答えると、イライザはこくりと頷いた。


「じゃぁ、あなたでいいわ」


 イライザの言葉に、ミーナは不思議そうに首を傾げた。



 医師の診断を受けた後、リンは引き続き寝台で横になっていた。

 眠れないことを話すと、一応薬を渡してくれた。眠りたい時に飲むようにということだった。

 食事は無理をしなくてもいいけど、水分はちゃんととるように。そんな注意を受け、診察は終わった。


「失礼します…」


 不意にそんな声が聞こえ、リンは閉じていた目を開いた。

 重い体を起して声の主を確かめる。そこには、目を丸くした侍女が立っていた。

 クセの無い黒い髪に、同じ色の大きな瞳の若い侍女は、目が合った瞬間、息を呑んで両手で鼻と口を覆った。


「――ミーナ!」

「リンティア様ぁ~!!」


 きゃぁぁと歓声をあげつつ、リンのもとへ駆け寄る。昔と変わらぬその元気の良さに、リンは自然に笑顔になった。


「どういう事ですか?!なんでですか??!!全然、説明無いんですけど!!」


 リンは再び体を横たえながら、ミーナと向き合った。

 懐かしい顔に少し心が明るくなる。祖国に戻っていながらもどこか知らない場所で落とされたような寂しさを覚えていたが、昔と変わらないところもある。

 そんな当たり前のことに少しだけ救われた気持ちになった。


「戻ってきちゃった…」


 見るからに体調が悪そうなリンを気遣ってか、ミーナはとりあえず質問を止めた。

 そしてまじまじと目の前の王女を眺める。


「リンティア様…大人になられましたね…」


 目の前の王女は、かつてと全く雰囲気が違っていた。

 金色の髪は以前よりも伸び、ふっくらとしてあどけなさを感じさせていた頬はすっとしまっている。痩せたのか、それとも成長したのか、毛布の上に出た腕は長くて細い。

 体つきも、以前よりずっと大人っぽくなっている。

 女の自分から見ても眩しいほどに、綺麗になっていた。

 綺麗な翡翠色の瞳だけは何も変わらない。ミーナを見て、嬉しそうに目を細めた。


「15歳になったの」

「見違えちゃいました~」


 王女に対してそんなことを言っているのをイライザが見たら、”無礼だ”と言ってかなりお叱りを受けるだろう。

 ミーナは一応うるさい女官が来ないことを確認し、改めてリンに向き直った。


「私が改めてリンティア様付きの侍女になりましたので、これからまた、よろしくお願いします」


 頭を下げるミーナに、リンは微笑みながら「こちらこそ」と応えた。


 ◆

 

 その頃、カッシュは困り果てていた。

 夜中の襲撃に驚きすぎて情報を収集することを了解してしまったが、さてどうしたものか。

 とりあえずいつものように訓練に出たが、今朝も特に隊長からの伝達事項は無かった。

 王女が戻ってきたら知らせてくれるんじゃないの?と思いつつ、一応約束したので侍女にも聞いてみる必要がある。

 しかし、彼の知り合いの侍女は実はあんまり居ない。話しかけたら警戒されそうだ。

 カッシュは憂鬱な気分で、やれやれとため息をついた。


 昼の休憩中、食事を終えたカッシュはとりあえず居館の付近をうろついてみた。

 仕事中の侍女が外に面した廊下をちらほら歩いている。カッシュはその辺りに立ちんぼで、話しかけるタイミングを見計らっていた。

 けれども何故か侍女達は、彼の姿を認識するなり、迂回するように彼から遠ざかって歩く。そのたび口を開きかけたカッシュは固まって、見送るしかない。そしてやれやれとため息をつく。その繰り返しだった。

 やっぱり警戒されている。別に口説こうという気もないのに、失礼極まりない。

 カッシュはそう頭の中で文句を言いながらも、心はどんどんしょげてしまっていた。

 

 ふとまた人の気配を感じて顔を上げる。何人目かの侍女がやってきたようだった。

 その姿を認識して、カッシュは思わず顔を輝かせた。歩いてきた侍女は、一応彼の薄い知り合いだった。


「――ミーナ!」


 名前を呼ぶと、ミーナは驚いたようにカッシュを見た。そして即座に顔をしかめる。

 なんだ、その反応は。

 カッシュは笑顔を向けたことを後悔し、すぐに表情を引き締めた。

 そういえばミーナとはアーロンが去ってから一度も話をしていない。その理由を聞かれた時に、”おまえのせいだ”風なことを言ったことを思い出す。

 ミーナはカッシュから距離をとるようにして歩き去ろうとする。これを逃すと後が無い。

 カッシュは慌てて「ミーナ、待てって!聞きたいことがあるんだ!」と呼び止めた。

 ミーナが足を止める。そして顔だけ振り返った。


「なによ?」


 とても友好的とは思えない表情と声音が返って来た。


「いや、すぐ済むから。もし知ってたらでいいんだけど…」


 カッシュはなんとか穏やかに問いかける。


「今、王女が城に居るって噂聞いてない?」


 いきなり本題に入った。

 あまり期待はしていなかったが、カッシュの言葉にミーナの目が明らかに変わった。先ほどまでの汚いものを見るような目ではなく、純粋に驚きの目。

 その反応に、カッシュは内心”やった!”と叫んだ。


「なんで知ってんのぉ~??私だってさっきまで知らなかったのに!!」


 すっかり棘が抜けた様子で問いかけつつ、ミーナはカッシュのもとへ寄ってきた。カッシュはホッとしつつ「じゃ、本当なんだ」と確認した。


「うん!!っていうか、噂になってるの?」

「いや、ちょっと小耳に挟んで…」

「あ、そうなんだぁ~。ちょっとびっくりしたよねぇ。あれ、どういうこと??」

「あ、いや、詳しいことは…。本当かどうかも怪しかったくらいだからさ」

「…そっかぁ」


 ミーナはそう言うと、さらにカッシュを喜ばせる言葉を言ってくれた。


「本当なのは確かだよ。私、会ってきたもん。またリンティア様付きになったの」

「おぉぉぉぉ!!!!」


 喜びのあまり雄叫びを上げる。ミーナはそんなカッシュの声に、ちょっと体を退いた。


「ミーナ、今夜ヒマ?!」


 カッシュが身を乗り出してそう訪ねた。突然話の方向性が変わり、ミーナはまた顔をしかめた。


「悪いけどぉ…」

「――いやいやいやいや!!」


 完全に誤解されたことに気付き、カッシュは慌てて否定した。


「アーロンに会いにいくんだ!今の話、聞かせてやってよ!」

「…は?」

「アーロンだよ!アーロン・アルフォード!!」

「…あぁ」


 ものすごい間をおいて、ミーナはやっと思い出してくれたようだった。


「戻って来たの?ちょっと居なかったけど」


 3年という月日は彼女にとって”ちょっと”なのだろうか。カッシュは苦笑しつつ「うん、まぁ」と答えた。


「…私、別にいいや」

「――まてまてまてまて!!!!」


 勝手に話を終えて歩き出そうとしたミーナをカッシュはまた必死に引き止めた。


「キース・クレイドも居るんだ!!」


 ミーナは”止まれ”の魔法をかけられたかのように、ぴたっと足を止めた。

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