愛の喪失
お題:早い夕日 必須要素:二号機 制限時間:15分
自転車に乗ってマリーナに行くその途中、私が着ていたモフモフ付きのジャンバーの左ポケットから我愛機であったアイタッチがこぼれ落ちた。
イヤフォンから何かしらの衝撃があって、音楽が急に聞こえなくなったときは、まず自身の耳がおかしくなったのだと思った。
毎日毎日朝から晩まで暇さえあれば、イヤフォンを耳に突っ込んでいたのだ。どう考えたってアイタッチよりまず先に自身の耳がおかしくなったのだと思うだろう?
でも違った。
おかしくなったのは私の耳では無くアイタッチの方だった。
急いで自転車から飛び降り、アイタッチの元に駆け寄ったときには既に遅かった。
私のアイタッチは無残な姿になっていた。
ああやっぱり、
ちゃんと専用のケースを買えばよかった。
そう後悔せずには居られなかった。
私は人に、
「あれはあれのままだからかっこいいし、渋いんだよ。ケースなんて外道だね」
とほざいていた。
だってアップルのロゴ見えなくなるじゃん!
それじゃ、アイポットじゃないくてもいいじゃん!
だってあれは64ギガも音楽が入るんだもん!
それにめいいっぱい音楽を詰め込んでいた私は、涙が止まらなかった。
もう、登下校時にエレカシも椎名林檎もバンプもエゴラッピンもスガシカオも元ちとせも聞けないと思うと、生きてる実感が無くなった。
明日から何の為に歩いているのかもわからなくなるかもしれない。
少し、海で夕日、しかも冬の早い夕日をアイタッチに収めたかっただけなのに。
私は自転車をおして、家に帰った。
夕日なんてどうでも良くなっていた。
愛タッチのお墓を作ろうと思った。
後日、新しいアイタッチを買った。
二号機はでももうきっと私にとって、愛タッチでは無いだろう。
そう思った。
私的には恋愛なんだけど、そのタグを付けるのは抵抗があるなぁ。