くすぶる火種 (2012年)
窓辺から眺める庭園の木々は、不揃いになってしまった葉を静かに揺らしていた。
昼の熱気を忘れ薄闇に佇む庭が、現実まで曖昧に溶かしていく。背後に流れる華やかな音楽も、どこか別世界のもののようだ。
高らかな宣言をしておきながら、王になった実感が湧かないなどと無責任だろうか?
しかし、一夜にして人間が変わるなどない。
記憶喪失にでもなれば話は別だが、国の頂点にたってからも、愛華は愛華、今までと何も変わらないのだ。
「母上、俺は王になったそうですよ」
早くも輝き始める星に、ずいぶん昔に天に昇った母を重ねる。他人事のような己の言葉に、自嘲する愛華の前髪を夜風が優しく撫でた。
「愛華お兄様」
あどけない呼び声に振り替えると、綺麗に着飾った蛍が無邪気な顔で立っていた。
「蛍、どうした?」
「えへへ」
蛍がドレスの裾を両手にし、くるりと回ってみせる。
拍手をすると、彼女は無邪気な笑顔に照れを含ませた。
「綺麗だね、蛍」
「今日はね、お兄様が王様になったから、いちばんお気に入りのにしたの」
「ありがとう。よく似合うよ、蛍」
「でしょう?なのに、涼風お兄様ったら5回回っても、何も言わないの」
不満でいっぱいにした蛍の顔を見ながら、愛華はどこか嬉しそうに笑った。
「本当に仲がよろしいですね~」
突然の声に驚いた蛍が、愛華に駆け寄りしがみ付く。蛍の頭を撫でて声のする方に視線を戻すと、ステンドグラスの扉を背に、額にひし形の宝石をつけた青年が立っていた。
「あなたは、フローラル・ハミング様」
「お久しぶりです、愛華様。いいのですか?主役がここにおられて」
フローラルはぶどう酒の入ったグラスを片手に、愛華に近づいた。
「お兄様は今御休み中なんです、パーティーが始まってもう3時間だもの」
兄の後ろから半分顔を出して、蛍が答えた。
それを見て優しく微笑むと、フローラルはバルコニーのドアを閉めた。ふいに小さくなった笑い声や音楽が、暖かな夜風を感じさせる。
フローラルは愛華の横に立つと、暗闇に広がる大地を見ながら言った。
「ああ、いつの間にかこんなに大きくなられたのか。蛍様も、貴方も。全く時が経つのは早いですね」
「変わりませんよ」
二人の微笑みに懐かしさが混じる。
四つほど年上の彼は、ガルディ国と親交の深いプレツェル国名家の跡取りである。そして幼い頃から愛華が兄のように慕う存在でもあった。
「プレツェル国最高議員の地位を受け継いでから、フローラル様とはこうしてゆっくり話せる時間も無くなってしまいましたね」
「私が議員だなんて、柄じゃないんですけどね。そしてなんと、最近は父親にもなりましてね」
「話は聞いています。噂のゴールデントリガーを養子に迎えたそうで」
愛華は蛍を抱き上げて言った。
「蛍と同い年、でしたよね。いつか、その子と蛍を対面させたいものです」
「いやあ、相当な暴れ馬ですよ。この先どうしたものかと心配しております」
苦笑するフローラルの頬に、蛍の小さな手が触れる。愛華は蛍の頭を撫でると、フローラルに微笑んだ。
「この子だって相当なじゃじゃ馬です。しかし、どんな子供も真っ直ぐ向き合えば必ず応えてくれます。大丈夫ですよ」
「大丈夫、です」
蛍が愛華の真似をすると、二人から笑いがこぼれた。フローラルはふと昼間の二人を思い出して言った。
「ガルディの方々は相変わらず心地良いほど豪快で、暖かなお人柄ですね。
今日の式も見事でした。あなたは善き王になる。蛍様はきっと、皆の希望になる。
ここのところ他国を騒がせている事件も、このガルディでは何吹く風でしょうな。
全く頼もしいことです」
愛華は何も言わずに少し目を細めると、口角を上げて空を見た。
ふとその横顔に影が落ち、蛍が「兄様?」と声をかける。しかし愛華は振り向かなかった。
部屋を灯していた蝋燭の明かりがゆらりと揺れたとき、フローラルハミングが思い出したように言った。
「そう言えば愛華様。先日頂いた『手紙』についてなのですが…」
フローラルはちらりと蛍を見やる。その視線で暗黙の会話が成立したのか、愛華は治世者の顔になり
「蛍、来賓の方々がお待ちだ。私は少し遅れるから、その間のお相手をしていてくれないか」と言った。
「ええ、分かりました」
離れていく兄の手を見つめながら蛍は何か言いかけたが、口をつぐむとスカートを広げてフローラルに礼をし、ぱたぱたと部屋を出て行った。
小さくなる足音ともに、遠くの会場から聞こえる人々の笑い声が聞こえる。
「聡明な妹さんですねぇ」
フローラルは蛍の出て行った扉を見つめながら、感嘆したように息をついた。
「これからどういう話合いが行われるのか、分からずとも咄嗟に感じ取っています。うちの息子もあれくらい賢くなると良いんだけどなあ」
「あれももう10になります。ガルディの未来を担う皇女ですから、いつまでも子供では困りますから」
しばしの沈黙が二人を包み、すっかり暗くなった夜の森で、鷹がひゅーっと鳴いた。
フローラルは幾分声をひそめると、口火を切ったように話始めた。
「イルカ君、でしたか。確かに受け取りましたよ。
私の役割は彼を魔術団に入れることでよろしいのですね。安心してください、手筈は整えました。
彼の素性を知るのは、私と父だけです」
愛華はフローラルを見つめると、深く頭を下げた。
「直接お伺いも立てず…ご無礼をお許しください」
「止めて下さい、王になられた方が!
まあ…詳しくは存じませんが、きっとよっぽどの訳がお有りだろうと推測します」
それでも顔をあげない愛華を前に困ったように顔をかくと、フローラルは愛華の肩に手を添えた。
「ちょうど魔術団も戦力の増強を図っているところでしたから、あのように有能な若者を送ってもらってこちらも助かりました」
額の宝石を静かに輝かせ、フローラルは柔らかく微笑む。
以下、今後のメモ
・Aイルカを魔法団に送り込む手筈を整えました。よろしくお願いします→Fええ、お任せください
・Fなぜあなたがカラスについて →Aいえちょっと…
・Fそれではまた後ほど、失礼します→フロハミ部屋(バルコニー?)を出る→愛華残る
と、ドアが再び開く→Aなにかお忘れですか?←見知らぬ男登場!!ここで呪いをかけられる(読者には呪いをかける描写まではいらないと思う ドアが開いたとこで切り替わってもいい
・蛍と涼風の会話 ガルディについて 魔法団について 等などちょっと予備知識もまぜて 3人の関係でもいいし
母親のこととか混ぜてもいいかも
・おやすみー、と別れる
・夜中にほたる目をさます →例の→S逃げろほたる!!で 蛍逃げるシーンでプロログ終わり。
一話
・コーヒーを入れるネルの描写から笑(細かい、別に他のでもいい
・魔法団に入団、決めておいたからとネル。文句を言うきみ
・しばし会話させたのち、ネルは仕事へ。
・出先の街裏で、襲われている少女を助ける←すっかりすれた蛍
※この時、プロログから5年だか7年だか経ってると思うんだけど、それをどうやって分からせるか。
※蛍は、魔法団養成学校に通っていたことにするのはどうかな
イヅルはコネもある特待生だし きみもネルの推薦からの入学。ほたるは地道にこつこつ努力して笑 学校から行かせるというのはどうだろう。