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ファーストコンタクト狂騒曲  作者: 九束
地球は保護国になりました

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見えるものが違うと事実も異なる

「ちょっと田中、午後一の出入星管理制度の外務省との打ち合わせについてだけ、ど…って何てモノ見てるのよ貴方…」




昼休憩中、喫煙室で動画サイトのショート動画を見ていると、喫煙室に入ってきて一方的に話しかけてきたくせに心底嫌そうな表情でボスがドン引きしていた。


「いや、何って普通に猫の動画ですけど」


俺の手元のスマホでは、海外のプロ試合でサッカー場に猫が乱入してきてそのままボールを選手から奪って退場していく猫のショート動画が再生されている。


猫動画を再生してきたら流れてきたヤツで、コメディほのぼの動画だと思うが?


「別種族とはいえ、そんな動画を公共の場で見てるとかセクハラよ?ってかうわー…バズってる」


「というかこれ中国のあいつブチ切れるわね…部下か同僚にこんな露出癖のあるやつがいて公共の場ではっちゃけでバズるとか…下手したらなで斬りじゃない?」


なんか物騒な話をしだすボス。


「あの、話が見えないんですが…」


地球人にもわかるように説明してくれません?


「猫がサッカー場に入ってきた動画でなんでそんなにドン引きしてるんです?珍しいことは珍しいですけど、動物なんだし入ってくることもあると思うんですが」




挿絵(By みてみん)





なんだろう、宇宙のスポーツ大会とかはその辺の密封性があったりするんだろうか?


「いやだからこいつは猫又…………あ」


「?」


「あーーー…そういえば地球人はマナとかそういうの見えないのよね…まぁそれだと…あー…そういうことね」


なんか一人で納得した様子。


「ボス、一人で納得してないでどういうことか教えてくれません?」


めっちゃモヤモヤするんですけど。


「前提としてね、今地球に派遣されてる銀河連邦構成国の種族って、結構地球の原生生物に似ている見た目の種族もいるじゃない?」


「そうですね、イルカニアンの方とか遠目には地球のイルカと区別つかないですし」


「で、中国の宗主国になってるニャーティア共同体の猫又って種族がいるじゃない?」


「あぁ、あの貴族然とした雰囲気のある」


オークががっちりとした戦士とすれば、猫又は騎士とかそんな感じのイメージだ。


柔らかい物腰の後ろに確かな気品を感じる人たちだった。



連邦の中ではオークに次ぐ武闘派として知られており、それもあって中国の宗主国になったという経緯がある。


「こいつ、その猫又人よ」


「は?」


確かに猫又の人たちは背丈も地球の猫と同じくらいだったけど…。


「さすがにそれは…気のせいじゃないですか?」


「地球人は私たちのようにマナが見えないからわからないだろうけど、マナが見える人種からすると一目瞭然なのよ。こいつら3人とも猫又よ」


地球人にはよくわからないマナという存在。


動画を通じても見えるということは、人類にとっての不可視光線でもあるわけか…。


「つまり…?」


だいたいボスの言いたいことに気づきつつも続きを促すと、ボスはため息をつきながら続ける。


「貴方達地球人に分かりやすく言うとね。全裸のすっぽんぽんのおっさんがサッカー場に乱入して好き放題やってる動画を見て、かわいーとか言ってる状況なのよ」


「マジすか…」




挿絵(By みてみん)




脳裏にたまに動画で流れてくるモザイク付きのシュール動画が流れる。


昼時に流れてくるとぶん殴りたくなるよなあれ。


これ、あれと同じなのか…そうなのか…。


それをリラックスしながらほほえましく見てたわけか…。うげぇ…。


「その上ね?」


「まだなんかあるんですか…」


「猫又はまだ中国の観察官補佐クラス以上しか地球に来てないの。私が言いたい事、わかる?」


「この3匹…いや3人がニャーティア高官の可能性が高い、と?」


「下手したら私と同じ観察官クラスの可能性もあるわね」


知りたくなかったそんなこと…。


「見なかったことにしちゃダメです?」


「本格的に猫又の入星増えたときに問題表面化した方がいい?」


「そっちの方がやべぇっすね…」


「とりあえずは動画は保存、次の定例会で議題を出すわ…」








★ミ








その後の話をしよう。


良い話と悪い話がある。



悪い話は、面識はないものの一人は観察官、もう二人はその補佐官だったとのこと。


ほぼTOPじゃん。日本で例えると大臣クラスがプロサッカー試合に全裸で乱入してウェーイしたことが確定したわけだ。スキャンダルってレベルじゃない。



良い話は、この3人は素面ではなかったとのこと。


どうやら猫又の嗜好品として知られているマタタビを中国からプレゼントされたので吸ってみたところ、その品種が猫又にとって結構まずいものだったらしく、理性が吹っ飛んであの凶行に及んだとのことだった。



本人たちには記憶がなく、動画を見て初めて自分たちの痴態を認識して青ざめたらしい。


良かった、ただの変態じゃなくて本当に良かった。


不幸中の幸いか、このマタタビを贈答したのが中国の国家主席だったようで、それ故か政治的な交渉材料化はしなかったことか。


処分としてはボスと面識のある観察官にボコボコにされた上で1か月のチュール購入禁止令とのこと。


本人たちは絶望してたけど、まぁマシな部類に収まったんじゃなかろうか。

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