そういえば宇宙人ってメシマズだったね
一通り逗留する部屋の設備も見終わり、エルフさんへのアプローチも終わったところで小腹がキューとなり始める。
そういえば午前はカフェオレしか飲んでないなと気づいた僕は、部屋に何かないか見回す。
……和室のテーブルの上に急須とお茶菓子が置かれているのを見つけた。
急須の隣に置いてある筒をあけると、ちょっと変わった色のお茶葉。
エルフさんの国のお茶かな?
うんうん。温泉旅館と言ったらやっぱりこういうお菓子とお茶だよね。
「エルフさん、これたべよっか」
「あ、そ、そうね!お昼前の腹ごしらえにちょうどいいかも!」
露天風呂の話題から切り替えられると思ったのか、エルフさんは妙に高いテンションで反応する。
「じゃあ先にこのお茶淹れるね」
そう言って僕はお茶葉を急須に入れ、ポットのお湯を茶碗に注いでからテーブルに置いた急須に入れて少し待つ。
1分ほどしてから少しして茶碗に注ぐ。
そしてエルフさんに出す前に急須の蓋を開けて匂いを嗅いでみる。
……………………ん? んん?
なんかお茶っぽくない匂い。どっちかというと……笹?
「……んーー?」
「どうしたの少年」
「ん-……緑茶じゃないみたいだけど……」
「だとしたら私たちの国のお茶かしら」
まあエルフさんの国の町だしそっか。
気を取り直して茶碗の1つをエルフさんに差し出し、自分の分を飲む前に温泉饅頭を頬張る。
まっっっっっっず。
無意識に眉間にしわが寄るのが自分でもわかった。
味以前に触感がおかしい。まるで発泡スチロールで作ったのかのような生地、それに包まれた餡はまるで粘土みたいな触感で口の中で崩れた記事と合わさって最悪な触感を醸し出す。
味はするけど風味が一切なく砂糖で作った発泡スチロールと砂糖で作った粘土を見た目と色だけ温泉饅頭風にしたそんざいがこれだと思う。
何をどう作ったらこんな味になるの?
いや、まだ判断には早い。お茶と合わせると美味しいのかも。いや厳しいと思うけど一応お茶も飲もう。
飲まないと全部飲み込むのきついし。
そう思いお茶を一口。
「うぇっ!」
まっっっっっっっっっっっっっっっっっっず!!!!!
口に含んだ瞬間にかすかに笹のような匂いがした後、青臭い香りが口の中で暴れ始め、舌の上ではただの苦みがタップダンスを踊る。
その後に合成調味料を入れ過ぎた時のような刺すようなうま味が一瞬だけして、それもすぐに過ぎ去りただ苦みの後味だけが下に残る。
その辺の雑草を煎じてお茶にしてもこんなひどい味にはならないぞという酷い味に思わず絶句してしまう。
「な、なにこの……え? なにこれエルフさん……?」
エルフさんの所の文化でなんか宿泊するときは超不味い食べ物を食べなきゃいけないとかいう文化があったりするの?
なんかこう不味い食べ物を置いておくことで自然と宗教的な断食みたいなになるとかそんな感じの。
もしくは平安時代の宴席みたいに食べる目的の奴じゃなかったりする感じ?
「……そうだった……本国の食べ物、こんなだったわ……」
何とか肘だけテーブルに乗せつつ、俯きながらエルフさんがつぶやく。
「エルフさんの国の食べ物って、これが基準じゃないよね?」
「これが基準よ。信じられないかもしれないけど。……うん、この味ね。久々に食べたけど私もう日本の食品以外は耐えられないわ」
そう言ってまずそうにではあるが普通に温泉饅頭を咀嚼してお茶? らしき液体を飲み干すエルフさん。
「嘘ぉ……」
たしかにエルフさんの国の食品はひどいって聞いてたし、配給物資でも食品類は先進国ではほとんど消費されていないって聞いてたけど……。このレベルなの?
さすがにひどすぎない?
「私の故郷の味はどう?少年」
「控えめに言って最悪。これなら栄養バー食べたほうがまし」
「だから栄養バーは人気よ」
「そのレベルなんだ……」
なんでこれ放置してるの?って疑問とそりゃこのレベルだと日本の食べ物に執着するよねという感想が同時に襲ってくる。
「衝撃を受けた少年にいいニュースと悪いニュースがあるけど、どっちから聞く?」
「悪いニュースから」
「迎賓館的立ち位置のこのホテルのウェルカムフードで出されるのがこれなことを考えると、世界樹温泉街には日本の輸入食品の割り当てはまだされてないみたい。つまり外食する場合は全部コレ基準になるわ」
うわぁ……。
「さすがに風情がなさすぎない?エルフさん」
「私も毎食これは割と拷問だと思うわ。そこでいいニュースの方よ」
ピンと人差し指を立てるエルフさん。
「この悪いニュース塗りつぶせるレベル?」
「多分」
「聞かせて」
「私の船には地球産のお取り寄せ食材はどっさり。ほらこんな感じ」
僕の端末に船の倉庫データを共有するエルフさん。
リストのサムネイルを流し見すると、お取り寄せ加工食品やら都内のスーパーの値札が付いたままの生鮮食品がずらり。
生鮮食品系は賞味期限が2年以上前の物とかがずらり。容量の8割くらいは数か月前が賞味期限になっている。
「エルフさん?」
ジト目で見る僕。目をそらすエルフさん。
「ほ、ほら!その保管スペースはね、時空凍結庫っていってね!庫内の時間が凍結されてて劣化しないから地球の賞味期限とかは気にしなくていいの!便利でしょ!?」
まあ確かにそれは便利そう。
でも僕が言いたいのはなんでそんな溜めっぱなしになってるの?ってところなんだけど。
それにエルフさんって多分料理しないよね?
前にエルフさんの部屋で料理したときはキッチン周りはホテル正装は言っていることを考慮してもほとんど使った形跡が見れなかったし。
プラモが好きな人の積みプラの食品バージョンなのかな。
まぁ、いいか。
深く追及することでもないし、追及はせずに倉庫の中の加工品カテゴリーを開く。
「じゃあとりあえず、このお取り寄せ品を部屋に運び込めば大丈夫だね」
とりあえずは食糧問題は解決しそうで一安心。
ん?何かエルフさんが言いたそうな目でこちらを見てくる。
「どうしたの?エルフさん」
「私、逃避行の手配頑張ったじゃない?」
うん。確かにそうだね。
お父さんから逃げれたのはのは、ほぼエルフさんのおかげだね。
「逃亡成功記念ってことで、ちょっとご褒美あってもいいと思うの」
「僕が作れそうなものだったら作るけど、何か食べたいものあるの?」
「さっすが少年!話がはやーい!じゃあね、まずお昼に食べたいのはね――――」
ぱぁっとエルフさんの顔が明るくなり、食べたい料理のリクエストがまくしたてる。
それを一旦静止して、僕はエルフさんに提案した。
「とりあえずこの置き菓子の記憶を消すために簡単なお菓子から作りたいんだけど、どう?」
エルフさんはすごい勢いでうなづいた。




