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保護国=マジで幼児扱いってわかってます?人類

エルフ部族連合の観察官である私が地球に訪れてから早半年、世は事もなしといった感じで順調に保護経過は進行している。


政治的には従妹のディアナス・イヴァルが正式に大使に就任し、政治的な友好関係を構築開始。


技術面でも想像以上に湧いてきたなんか目の怖い集団によって来年くらいには支援物資の使用を前提としてという注意書きはつくもののブラックホール炉の設計もできそう。


日本人への物資配給も順調。

食べ物系はほとんど受け取ってくれないけど、まあそらそうよねといった印象。



うちの食糧、不味いからなぁ。


1年前の私に聞いたら「そんなに??」と言うと思うけど、そんなにです。


地球のごはんが美味しすぎる。

特に日本のごはんが私たちエルフの脳を焼いてしまった。


アメリカのオークに至っては週に一回はスペアリブ、ブリスケット、プルドポークをコーラで流し込まないと震える体になってしまったらしい。


解らないけど解る。


私も週に一度は近くの和菓子屋さんの小倉羊羹かきんつばを食べないと禁断症状が出るもん。


もう母国に戻っても日本食がないと生きていけないわ。

味だけなら複製機に入れればそのうちいくらでも作れるだろうが、マナはそうはいかない。

マナが違うのよマナが。


生命力の源、マナ。

そして私たち妙齢のエルフが他のヒューマノイドにモテない原因のマナ。


その点地球人は良い。なぜなら生体調査の結果マナを検知する器官がほぼ退化しているっぽいから。


だから私にもチャンスがあるはずなのだ。


入れ食い、入れ食いの、はず。


「う…うぅ~…ぐぎ…ぐぎぎぎぎ…」


「どうしましたボス?次の打ち合わせに何か問題が?」


机に突っ伏して悩む私に田中が心配そうに聞いてくる。


ここで婚期の話を出すとドブネズミを見るような目になるから自重する。


でも仕事中は割と友好的なのよね田中。まだ息子君紹介してくれないけど田中。


プライベートでももうちょっと仲を深めても良いんじゃないかしら田中。


慌てない、まだ一年もたってないのよ。


エルフはクールに長期戦略を練るのよ。


「次の打ち合わせは…あぁ、アメリカの観察官との会談ですか…まぁ、そうっすねボス」


そんなことを考えていると田中が私が頭を抱えている理由を勝手に勘違いした模様。

アメリカ……あー、そういえばそうね。

私たちにとってはいずれ解決できる問題ではあるものの、確かに面倒な問題ではあるのよね。


「あー…………うん、そう。そうなのよねー………」


突っ伏したまま田中に返事をする。

悩んでいた理由をそっちにすり替えて尊敬ポイントを稼ごう。

そうすればその内息子君を紹介してくれるだろう。





★ミ





「じゃあ頭の整理がてら田中にちょっと現状の前提を話すから、率直な感想を頂戴?お題は『なんで我々銀河連邦は地球の各国を保護国にしたか』よ」


「あぁそれ、俺も気になってたんですよ。最初はそのまま連邦に加盟させようとしてたじゃないですか。それがアメリカが単独で加盟しようとした瞬間に急に態度を硬化させたじゃないですか」


「表向きは『銀河連邦加盟には惑星単位の統一政府が必要だから』なんだけど、これは必要性からそうなってるだけで理由ではないのよ」


「じゃあ、本当の理由は?」


「蒸気機関を発明した後の文明は最低限惑星単位でまとまってないと核分裂エネルギーを発明後に大体すぐそれをおもちゃにして自滅しちゃうから。この星の歴史を見たけど、ヒヤリハットが一つや二つじゃすまないでしょ?」


「あー…」

田中も心当たりがある模様。


そうなのだ、地球文明を発見する前の数百年。いくつも核エネルギー時代に到来した文明を私たちは発見してきた。


「核エネルギー時代に突入した星を見つけたのはあなたたちが最初じゃない。でも、あなたたちの先輩に現連邦構成国は一国もないの。もちろん、保護国もよ」


「全部、加盟前に滅んだ?核戦争で?」


「戦争とは限らないけどね」


半分は私たちが前FTP文明に非干渉だった時代に観察していたら勝手に核戦争で滅んでしまったり、大規模メルトダウンを起こして死の惑星になったりなどもある。


その反省を生かして発見直後に一旦バラバラに加盟させようとしたら新しい技術をなぜか核技術に応用した挙句、大体戦争になって滅んでしまった。


「じゃあ初手で力ずくで制圧してしまえばよかったのでは?宇宙戦争みたいに」


「…あなたたちの一つ前の星でそれやったら核の無効化が間に合わず、ある大国が自国ごと全世界で核起爆して地下に潜って50年くらい戦争した挙句滅んだわ」


「おおぅ……ベルカ式国防術を現実でやらかした奴らがいるのか…」


ドン引きしつつ、顔が少し青ざめている田中。


まぁ「あなたたちと同じような星は大体滅んでる」って言われたらそうなるわよね。


自分たちの文明がいかに薄氷の上に存在しているかを再認識したのでしょう。


「逆に、核エネルギー時代よりも前に啓蒙した文明、地球時代で言えば19世紀末やそれこそ古代文明の方があっさりと連邦構成国として加盟ができていたりするわ」


ちなみにこの際に種族の好戦性とかは特に影響がない。

時間をかければ物質が充足していれば自然と種族単位でまとまるし、その際滅亡のキーになる原子力エネルギーより上位のエネルギー技術を供与してやればよい。

目の前に特上寿司があるのに、わざわざ漁に行って魚を取って生米と丸かじりする奴はそうそういない。


「例えば、アメリカの宗主国になっているオーク汗国なんかは地球で言うところのモンゴル帝国みたいな国が母体になってるわ。統一時は大戦争を起こしてなんだこの蛮族ってドン引きしたものだけど、今は知っての通りよ」


「あぁ、やっぱりもともとは好戦的だったんですね。そっからよく今のオークになりましたね。アメリカに来た時と印象逆ですよ今は。なんというか…温厚な苦労人?な人が多いというか」


「鎌倉武士が時代を経て江戸時代の武士になったようなものよ。そんな元蛮族のオークが頭を抱えてるのが現蛮族のアメリカってわけ」


「うちの星のジャイアンが本当にすいません」


「私が担当だったらキレ散らかしてたわ。…それで、話を戻すと、見守るだけではダメ。そのまま分裂したまま迎え入れても星を出る前に自滅。ならばと押さえつけても自爆。じゃあどうするってなったときに、『危ないおもちゃだけ取り上げてよしよししながら育てましょう』をしようってなったわけ」


「あー…勧告直後に少しだけ停電起ったり急にアメリカがトーンダウンしたのって…」


「地球全土に原子力エネルギーを使えなくする物質を成層圏からばらまいたわ」


「いや、大惨事!!…にはなってないですね?なんで?」


「同時に強襲部隊を動員してUFOを発電所代わりにしたのよ。とにかく核を取り上げることに集中しつつ、かつヤケクソ自爆をしないようにケアも同時に。それ以外は無視」


「それ連邦側にも被害出ません?」


「…私が乗ってた船はアメリカに落とされたわね」


人工衛星ぶつけられて死ぬかと思ったわ。

日本の山で遭難してた私を田中が助けてくれなかったらどうなってたことか…。




「で、ここまでの話で感想は?」


「もしかして地球って幼児扱いされてます?」


「それ以外の何だっていうの?」


「おい!」


「それが今の方針。地球人にとっては屈辱かもだけど、これも血で書かれたマニュアルなのよ?」


「じゃあ、保護国の『保護』って」


「死んじゃうような危ないものから遠ざけて、ちゃんと宇宙で生きる術を教えてあげて、保護してあげる存在だから『保護国』」


挿絵(By みてみん)


物資ならいくらでもあげるし、技術もどんどん教えてあげる。


危ないものはしまっちゃうけど、それ以外なら何してもいいわ。


だから早く育って宇宙においで。


早く私たちと愉快に楽しく生きましょう?


それが私たちの嘘偽りない思い。



「で、ねー。アメリカちゃん、また渡した物資で核っぽいもの作ろうとしてるみたいなのよ…どうしたらいいと思う?」


オーク君頭抱えてるのよね。どうやって怒ったらいいかって。

変に怒ると癇癪起こしそうだし。


「『めっ』ってすればいいんじゃないですかね?」

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