審議会議事録とニュース速報
――銀河連邦元老院議会 第4探索区域前FTL文明啓蒙委員会
――審議会議事録 第2D4周期 第Y5会期
議題:「地球国家群の一構成体日本国へのエルフ部族連合領非有人星系譲渡」に関する審議会
開催場所:銀河連邦元老院議事堂 第4探索区域前FTL文明啓蒙委員会室
委員国:エルフ部族連合、オーク汗国、ケットシー事業体、竜神盟約、ブラム公国、
参考人:駐日エルフ部族連合保護観察官(首席観察官)
議長国:ニーケー教団
議長:ニーケー教団枢機卿
【開会】
議長:
本審議会を開会する。
本日の議題は「日本国へのエルフ部族連合非有人固有星系譲渡に関して」である。
提出者はエルフ部族連合代表委員及び駐日エルフ部族連合前FTL文明観察官事務所。
本件は、同国がダークエルフ部族の聖地とされる「ニザヴェッリル星系スヴァルトアルファヘイム」を、前FTL文明指定保護国たる地球国家群の一構成体日本国へ割譲する旨を通告したことに端を発するものである。
当該措置は銀河連邦憲法修正56条の1「銀河連邦構成国による前FTL文明への単独介入」に該当する。
よって当該措置は前FTL文明啓蒙委員会決議事案となるため本審議会を招集した。
【議題説明】
エルフ部族連合代表委員(以下、エルフ代表):
我が国は所有星系「ニザヴェッリル星系」並びにヒューマノイド型知的生命体居住可能惑星「スヴァルトアルファヘイム」を日本国への譲渡対象星系として指定した。
譲渡の理由は以下の三点である。
一.同星系は現在、対奉仕枠管理局戦争停戦後無人化しており、前FTL文明への贈呈対象惑星の基準を満たしていること。
二.同惑星は我が国を構成するダークエルフ部族の聖地であるものの、宗教的価値を除けば資源的・戦略的価値は限定的であること。
三.我が国は現在日本国を保護観察下に置いており、将来的に共存的パートナー国となり得ると判断したこと。
よって、我々としては、聖地保全を条件とした譲渡を提案する。
【質疑応答】
オーク汗国代表委員(以下、オーク代表):
やりたいことはわかる。聖地をどう扱うかは種族の勝手だ。だが、聖地を丸ごと譲るとは正直驚いた。
貴国は本当にそれでいいのか? 後から揉めることはないか?
エルフ代表:
承知の上だ。聖地といっても、4万平方キロ程度の世界樹跡地帯を除けば、他は重要な文化的宗教的価値はない。
ケットシー事業体代表委員(以下、ケットシー代表):
聖地も含めて譲渡するという認識でよいのか?
エルフ代表:
開発禁止地域としての条約締結等は行うことを検討しているが、領土としては割譲する認識で相違ない。
ケットシー代表:
当事者であるダークエルフ族の了承は取っているのか?
対奉仕枠管理局戦争でも貴国は戦略的価値を喪失した同星系を終結まで死守していた。
少なくとも宗教的価値だけでも割譲を躊躇するのは普通であり決断する貴国内の政治プロセスが分からなくて不安だ。
エルフ代表:
我が国の政情については心配不要である。
ダークエルフ部族長会議は、「聖地が適切に保護されるならば、外部友好種族の保有でも何ら問題はない」と明言している。
むしろ友好種族かつ友好保護国である日本国への割譲で良い効果を期待する声が大半だ。
竜神盟約代表委員(以下、ドラゴン代表):
理解できん。何を考えているのだエルフ部族連合は。
我々の観点からすれば、聖域は魂の拠り所だ。
それを異星文明に譲るなど、誇りを売る行為に等しい。そこまでして日本国から何を得ようとしている?
お前たちは、聖地の代価として何を得るつもりだ?
エルフ代表:
直接的な代価は求めていない。あえてあげるのであれば日本国との物理的な距離を縮めることが目的となる。
地球各国の食料・嗜好品の輸出動向は前々回の委員会で周知のとおりであり物理的な距離が近くなることでの直接的な消費行動も期待している。
ブラム公国代表委員(以下、ヴァンパイア代表):
ちょっと待て。貴国の目的はやはりそれか。地球産物品は生産能力に対して需要が現在200倍以上になる。そしてこれは短期に解決する見込みがない。
「隣国」になれば、交易独占も可能だろう。そんなことをされてはたまらない。
ずるいぞ。我々ヴァンパイア族にも何か譲歩が必要だと思うが?
議長:
発言は節度をもって願いたい。
ヴァンパイア代表、提案は具体的に。
ヴァンパイア代表:
エルフ代表の案には賛同するが、一国が日本国の供給能力を独占する事態は避けたい。
よって我が国近傍の放棄星系「ヴァーニー星系」を日本国に追加贈呈することを提案する。
ケットシー事業体代表委員:
ケットシー族としても日本国食品の需要を独占される事態は避けたい。
ヴァンパイア代表の案を支持する。
オーク代表:
ここ1~2年、ヴァンパイア族の一部貴族層が軍に志願している背景に日本国配偶者からの影響があると聞いている。
ヴァンパイア族のやる気が出るのであれば我が国としてもヴァンパイア代表の案に賛同する。
ドラゴン代表:
実利が目的ということと、国内不安につながる可能性がないことは理解した。
議長:
それでは割譲国の意思については理解できたため、当事者国に関する参考人を招致する。
【参考人意見】
駐日エルフ部族連合保護観察官(首席観察官)(以下、観察官):
参考人として意見を述べる。
日本国は、これまでの観察対象として極めて誠実な外交姿勢を示してきた。
また、自然信仰的価値観を有し、聖地保全についてはダークエルフ部族との円滑な調整は可能と考える。
よって当該国由来による聖地割譲のリスクは極限まで少ないとの見解を示す。
【再質疑】
ドラゴン代表:
日本国はダークエルフに対してのどのような感情を持っているのか?
銀河連邦構成国の一部種族はダークエルフ族のマナに生理的に嫌悪感を示すが、ホモサピエンス族はそうではないのか。
観察官:
地球人類であるホサピエンス族にはマナを感じ取る器官が退化しており、マナ由来の嫌悪は存在しない。
精々が我が国の主要部族である南部白エルフ部族の色違い程度の認識だ。
事実、駐日エルフ部族連合大使館の大使はダークエルフ族であり、先日旧皇族との交際が発覚した。
ケットシー代表:
具体的な事例の提示を感謝する。ケットシー族は生理的な理由でダークエルフ族の受け入れができないため、その具体例で日本国側のダークエルフに対する感情がよく分かった。
ドラゴン代表:
日本国側の了承は取っているのか?いきなり聖地を渡されたら困らないか?
どうも地球啓蒙計画に参加している国家は現地国家の了承を取らずに計画推進を急いでいるように感じる。
オーク代表:
そのような事実はない。原子力時代の文明に対する対応案として多少強硬な方策を実施することはあるが、基本的には保護国の自立性を優先している。
議長:
本審議と逸脱する話題は控えるように。
観察官。日本国側の意思についてはどうか。政府でなくとも要人の見解でも構わない。
観察官:
有識者から見解を預かっている。
(日本人少年による日本が本案件前向きであることへの見解の再生)
ドラゴン代表:
この有識者は未成年に見えるが?
観察官:
銀河連邦学会に反物質炉に関する効率化回路設計図の論文を提出した学者集団の代表者となる。
専門外分野ではあるものの有識者意見としての有効性はあると認識している。
ドラゴン代表:
特異体ということか。理解した。
議長:
採決に必要な情報は得られたと感じる。異議がなければ採決に移る。
代表各国:
異議なし
【決議】
議長:
ヴァンパイア代表による修正提案を全会一致で採択する。
議長:
採択された修正案は以下の通り記載する。
一.エルフ部族連合領「ニザヴェッリル星系及びスヴァルトアルファヘイム」の日本国への割譲を条件付きで認める。
二.当該星系の宗教的中枢たる世界樹跡地帯は、エルフ部族連合の文化保全対象として二国間条約により保護する。
三.ブラム公国近傍の放棄星系「ヴァーニー星系」についても、日本国による領有と共同開拓を承認し、エルフ部族連合は日本国に対し「一.」の割譲実施日より5年以内に同星系の開拓開始を勧告する。勧告日は駐日エルフ部族連合観察官事務所に一任するが、おおむね「一.」の割譲実施日の30日以内に行うものとする。
四.本決議は委員会終了時刻をもって正式に確定し、議長国の名において効力を発する。
以上をもって本議題の審議を終了する。
【閉会】
☆彡
「ENN速報です。政府スポークスマンは対奉仕枠管理局戦争以降棚上げになっていたニザヴェッリル星系の扱いについて言及し、保護国である日本への譲渡の意向を明らかにしました。観察官筋によると――」
委員会「学者集団は前向きなのかぁ、反物質炉の論文見ても優秀そうだし、有識者団体としてはよさそうだね。じゃぁ……ええか。」
学者集団(少年)「そうだよ」
なお学者集団、主要メンバーの生き残りは少年だけの模様。メンバー全員がやべぇ奴じゃないし生き残ってるやつもいるけど、少年に意見できるレベルの主要メンバー(やべぇ奴)は大体あの時死んだ模様。




