【四話】三界連携活動(參)
◇◆◇◆◇◆◇
(ど、どーしてこーなった………)
一緒に組むのは、天界警察。特別機甲大隊の第一中隊の精鋭18名、そして自分の第2小隊5名、第1小隊3名、第3小隊6名。第5小隊3名。うちの中隊の半分を預かることになる。自分を入れて18名。合わせて36名。
この中にはもちろん例の煌輝もいるし、役には立つけど口五月蝿い上官を上官と思わない半分酔っ払いのめんどいおっちゃんも含まれている。
この36名で総指揮所直轄の遊撃部隊を担うことになった。
もちろん直轄部隊についても、この部隊に加わることには異論はないけど。
隊長にされてしまった。
隊長だと言いたくもないし、言われたくもない。だから小隊指揮官で通しているのに。
隊長は天界警察の誉れ貴き中隊長、煌輝がいるんだから、私に回ってくるはずがないと思っていた。
私は監査される人なんだよ、おかしいよ、隊長をやるなんて、ねえ、おかしいって!
そうやって、むっちゃ駄々を捏ねまくったんだけど、ダメだった。
編成を決めるブリーフィングに出ちゃったのが失敗だった。
ウチの隊員やらもちろん《幽界》の部隊の連中にお前のせいだ、とイジられていたから、ちょっとは迷惑をかけてるかも、なんて思っちゃっていたところに、鳳仙から「組み分け、出てね」と言われてしまったので、出ざるを得なくなっちゃった。
鳳仙は中隊長で首席特別執行官。階級は一等警務正。
煌輝も中隊長。職名はついていない。んでもって階級は警部。
つまり二人とも私の上官だし、私の階級は警務正補。二階級も下だ。。
あろうことか、煌輝は固辞しまくった上、こっちに振りやがった。目をキラキラさせて「ついていきます!」なんて言っちゃってくれてるし。
鳳ちゃんが総指揮を受けていなければ、この立場は鳳ちゃんか煌輝になったはずだ。
ニコニコして「私だって総指揮、押しつけられてるんだから。しょうがないでしょ」って言ってくるし。
権現の爺様方が首突っ込んできて、余計なこと言うし。
権蔵さんは「連合赤軍あさま山荘事件のときな、階級とか年次とか関係なしでな、ちょっくら指揮してこいって言われて、やり遂げた凄い人、いたよな。なあ源さん」とか言い出すし。
源八さんも「日露戦争の時の児玉源太郎の方がわかりやすいだろう?ちょっくら行って203高地を落としたんだから」と言ったあと、スッと寄って来ては肩を抱いてわざわざ耳元で「翠蓮。まあ、やれるやつってのはな、階級とか年次とか、関係ないんだ。関係ない。俺はそれをお前に強く言っておきたい。日和るな」とぶちかましていった。
なにより鳳仙より格上のはずである天界警察の大隊長が副官についてるんだから、現場もそれでいいだろうという空気を作り上げやがった。
光昭のおっちゃんは「黙ってお前がやりゃいいんだ。迷惑かけてるんだからそれくらい受けろ。駄々こねんな」
「だって、36人もいるんだよ!うちの二中隊と変わんないじゃん」
「なに甘えたこと言ってんだ。鳳は1500人の面倒を見るんだぞ!俺らもその中に入ってんだからよ」と言ってまた髪を引っ張るし。
煌輝の上官である大隊長の光佑警視は光昭のおっちゃんとなんだか意気投合してるし。
終いには、ぐずぐずしている私に光佑警視が深々と頭を下げて、お願いしてくるし。
こういうちゃんとしてる天界人は嫌いじゃない、けどさ。
ハメられた感満載なんだよね。
決まってしまったものは仕方がない。
さあ、やるか、と気合を入れて、自分の顔をバチーンと叩いたら、それを見た煌輝がギョッとしていた。
それを見て、少し楽しくなった。
そして、今。
目の前には整列する隊員たちがいる。
こういうの苦手なんだよな、と思いながら、おくびにも出さないように気を引き締める。
舐められたら終わりである。
もう舐められているというか敵視されていると言っていいんだけど、ね。
煌輝が号令をかけるはずだ。
横目でチラリと見ると目が合った。
何かの粒子が舞っているのだろうか。キラキラしている。心なしか淡く金色に光っているように見えるのは気のせいだろうか。得体の知れない生き物としか認定する他ないだろう。
おい!なぜ、そこで微笑む?
(そんなにこの任務に就くのが嬉しいのかっ!)
「─────総員、傾注」
煌輝の号令がかかった。よく通る声で聞きやすい。そして、美声。何か歌えといいたくなる声だ。
バチっとキメる堅めの訓示か。ウケを狙ってブラックユーモアを織り込んだ訓示か。
どっちかなと考えていたが、天界警察の隊員たちの目がかなりキツい。
その目を見た瞬間、なにかが弾けてしまった。
コイツら、これから任務に着く兵隊のツラではない。
男子隊員8名、女子隊員9名。
私のことを睨め付けてくる三十四の瞳がとてつもなく鬱陶しい。
「みなさん、この三界連携活動において総指揮所直轄遊撃戦隊長を務めることになりました。獄界警察庁公安局公安部第三課第二中隊の翠蓮と申します」
男子隊員は煌輝が隊長だと思っていたのだろう。
それがこの忌まわしき女が頭を張ることに納得していないようだ。煌輝の号令を無視したのが男子3人。そっぽを向きやがった。
女子隊員はそれに輪をかけて酷い。
敵愾心丸出しでこちらのことを睨んでいる。
お前ら上官に喧嘩を売ってんだぞ。わかってんのか?
よし、ボーダーライン越えたね。
こっからは獄界警察の流儀で行かせてもらう。
このことは大隊長にも煌輝にも仁義は切ってある。
翠蓮は装いを獄界警察「赤黒の官服」にスイッチした。
官服が変わるにあわせて髪も金髪から黒髪に変わる。
髪の長さは変わらないけど、真ん中くらいから毛先に向けて紅く染まる。
隊員たちも少し怯んだようだ。
「─────何やら思うところがある者が多いと思うんだけど」
少し声のトーンを下げてみた。
「しばらく、その気持ちはしまって欲しいの。きっとそれは活動において支障になると思うから。ここがボーダーよ。これから先は私の流儀でやらせてもらう。私に楯突きたいなら好きにすればいい。容赦無く罰を与えるから。そのつもりでいてね」
煌輝を除く天界警察の面々は苦々しい表情を浮かべている者が多い。
「………そういう顔をするな、と言ってるんだけど?………人の話聞いてる?」
最前列にいた天界警察の男子隊員が翠蓮を睨みつけながら、口を開く。
「お前さー………」と言い終わる前にもう翠蓮は動く。
後ろに回り込んで、腕を取って、逃れようとしたところで足を払った。
簡単に転がってしまった。うつ伏せになったところを押さえ込む。
本人だけでなく、周りにいた隊員も一体何が起きたのかわかっていない。
翠蓮はきっちりと押さえ込んでいて、声をあげることもままならない。
天界の女子隊員の一人が「なんでこんなことされなきゃなんないのッ!」と非難の声をあげた。
翠蓮は顔を上げて、煌輝を見る。
「天界警察では、上官のことをお前、と呼んでいいことになっているのかしら」
「いいえ。そんなことはありません」
翠蓮は「そうよね、あたしが間違っているかと思ったわ」といって、更に圧をかけていく。
「………お前、ふざけんじゃねえ。とでも言いたかったの?………監査される立場で偉そうなこと言ってんじゃないとか、言いたかったのかしら?私だって命令がなかったら、あんたたちを預かるなんてごめんなの。ガラにもなく隊長なんてやってんだから、そこんとこ、わかれって話。───── 服従義務も果たせない隊員なんていらない。それにあんたたちの隊長が恥を掻くことになるってこと、わかんないの?─────言ったわよね。罰を与えるって」
男子隊員は呻き声しかあげることができなかった。
翠蓮は徐に制圧を解いて、元の場所に戻った。
隊員たちを睨め回し、訝しげな顔を向ける。
天界の隊員たちが解放された隊員のそばに駆け寄った。
「誰が隊列を崩していい、なんていった?ま、いいわ。あんたたち精鋭のはず、よね?………大丈夫なの?アタシにこんな簡単に制圧されているようでは先が思いやられるわ。ホント、心配になってきた」
《幽世》に住む人たちが《現世》に来た時に起こること。
普通は「幽霊」そのものになってしまうということだ。
《現世》において活動するに当たって《幽世》の職員が身につけなければならないことは《現世》に干渉することができる能力を獲得しなければならない。
そのためには《現世》での順応訓練を欠かすことはできない。
「《幽世》で出来て当たり前のことが《現世》じゃ出来なくなる、当たり前の事よ。………ちゃんと体を慣らしてきたんでしょうね?………いきなり《現世》に下りてきて、動けるのかって心配していたのよ。あんたたち、本当に大丈夫なのよね」
天界の隊員たちは翠蓮を睨み続けている。
「私は《監査》を受けなければならないみたいだけど、それはあなたたちにどう関係することなのか、教えて」
翠蓮をよく知る獄界の隊員たちは苦笑いだ。
そもそも翠蓮のやらかしがキッカケで三界連携活動が計画されたことを考えれば、全員が被害者ともいえる。そんな中、空気を読まずに大笑いをしている隊員がひとり。
イラっとする。ゲラゲラ笑いやがって。
まあ本当に面白そうに笑うので可愛いのだが。
─────第二小隊後衛担当、萌霞。ヤキ決定。
天界の女子隊員の一人が「もちろん、罰の対象ですよね。自分の部下だからと言って、見逃したら依枯贔屓ってことになりますから」と嫌味を言って来た。
萌霞はすっと顔を引き締めて、真剣な顔つきになる。
「─────わたしが笑っていたのは隊長のことではありません。言いがかりはやめてもらっていいですか。翠蓮小隊指揮官は体術はお得意ではありません。そんな方に無抵抗にやられっぱなしっていうのが最高に可笑しくて笑ってしまいました。タイミング的におかしかったですか?─────だってー笑いをこらえるのが大変だったんだもん。紛らわしくてごめんね」と可愛らしくてへっと笑った。
まあ、よしとしよう。
天界警察の諸君は萌霞の物言いですっかりと毒気が抜けている。
「ま、おたずねもんの私を上官として認めろっていうのは無理な話なのかもね」
─────本部付戦隊から管制。
翠蓮は交信を始めた。総指揮所を呼び出す。
繋げたのは活動に参加している全隊員が傍受できるオープンチャンネルだ。
指揮系統の専用チャンネルではない。もちろんここにいる隊員たちに傍受させるためだ。
呼び出しても応答がない。
─────本部付戦隊から管制。
もう一度、飛ばしてみる。今度はやや間があって応答があった。
(………管制です。なにかありましたか?)
─────ちょっと反応鈍くない?………ま、いいわ。本部付戦隊はこれより機動巡回を実施したい。巡回経路を送る。許可願いたい。
(獄界警察、翠蓮執行官か?)
─────如何にも。
(貴官の扱いについて審議中である。そのまま待機せよ)
─────はあ。どーでもいいけど、さっさと許可とってくんないかな。
(貴官には天界警察隊員に対する特別暴行陵虐の疑いがかけられている。その場で待機しろ)
─────はあ?お前、名前くらい名乗れよ。どこの誰だ?
応答なし、かー。
お、おう。やってくれんじゃん。管制も敵ってこと?
ああ、やだやだ。めんどくさいことになってんのね。
まあ、総指揮所からだったら見えるか。しゃーない。
(管制長、紅玉だ)
おおおおおお。大物が割り込んで来た。これなら話が早い。
紅玉は獄界警察庁現世合同庁舎総合指令台の管制官である。
三界連携活動にも数多く参加している《現世》駐在の管制官である。
掛け値無しに超優秀な管制官だと言っていい。彼女がいるのなら鬼に金棒である。凄いのを引っ張って来たもんだ。
(─────貴官の行為について、天界警察隊員から通報を受けたのだが)
あー、そゆこと。まったくそういう知恵は回るのね。
(貴隊の副長からの事情説明があり、貴官の行動には問題ないと判断された。逆に抗命罪として告発することもできるが、どうするかね)
チラッと煌輝を見ると─────。
得意げな顔をしていた。褒めて褒めて、と顔に書いてある。対照的に特別暴行うんちゃらで通報したと思われる隊員たちは揃って、信じられないというような顔をしている。
─────それには及ばない。
(お優しいことで)
─────いやいや。これからの働きをしかと、見せてもらうわ。使えない奴はその場で返品してやる。養成所に送り返してやるから、その準備はしといてほしい。あ、あとそれから名前も名乗れないヤツを管制に置いておくってどうなの?こっちで引き取ろうか?どーせ天界警察でしょ?
(翆蓮、カッカしないの。それについて申し訳なかったわね。こちらで指導する)
─────機動巡回の実施については?
(現在確認中、しばし待て)
(あんた、あに考えてんのよっ!そんな時間なんかあるわけないでしょッ!)
牡丹が秘匿回線で割り込んで来た。
─────っていうか、さ。隊員がどこまで動けるかわかんないのよ。《現世》での経験を口で聞いたって無駄だしさ。とりあえず機動巡回やってみて様子を見たいの。
(そ、それって)
─────即興のブートキャンプよ。順応訓練課程未修了を疑うレベルよ。小隊長クラスがアタシごときに秒で制圧されるなんてあっちゃいけない。
(そういうことか………。しばらく待ちなさい。いま上で協議してるわ)
そういえば、私のことを〈監査〉するって言ってた特捜課の連中はどこにいったのだろうか姿形も見えない。
─────ねえ、特捜課はどこ行ったのかしら?
(〈監査〉される人に話せると思う?………こっちで把握してるわ。あなたは気にせずに自分の任務に全うしなさいな。特捜課にはあなたの動きについて伝えないといけないから時間がかかるの。一つだけお願い。思いつきで言わないでくれるかしら?)
─────これくらい読んでくんないかなあ。
(こっちだっていろいろめんどくさいんだから、かまってらんない)
─────かまってくれてんじゃん。あ、特捜課さんに伝言頼んでいい?
(なによ)
─────ついて来れるもんなら、ついて来いってね。中指立てて言ってますよって。
(言えるか、バカ)
(管制長、紅玉だ。本部付遊撃戦隊長、翠蓮)
─────翠蓮です。
(機動巡回の実施を許可する。暫時管制に報告せよ。戦隊員各位に告げる。作戦用位置指示標識の使用を命じる。機動巡回中はオープンチャンネルに常時接続のこと。開始後、交信試験を行う。各自呼び出しに応答せよ。以上)
─────了解。
幽界獄界混成団は〈バイオネット〉戦隊。
天界幽界混成団は〈スレッジハマー〉戦隊。
本部付遊撃戦隊は〈スティレット〉戦隊。
それぞれ部隊名が設定されたようだ。
(これよりブリフィーングで設定した部隊名を使用する。以上のこと承知されたい。貴戦隊は〈スティレット〉である。各員にあってはコード、コールサインの確認を求める。以上。管制長)
─────スティレット・ワン。了解。
(スティレット戦隊の専任管制に牡丹統括情報官を指名しておいた)
─────了解。管制官殿に感謝を。
「諸君。聞いての通りだ。我が本部付遊撃部隊には〈スティレット〉の名が与えられた。我が隊は一足先に活動を開始する。各隊員にあっては自身のコールサインを確認しておくこと。巡回の経路は先ほど管制に提出したものをそのまま使うから確認しておくように」
翠蓮は隊員たちを見廻す。
「まあ、機動巡回という名の鬼ゴッコよ。私に捕まらないでね。私に捕まるようなヤツは現場に出たところで足手纏いになるだけだから。そういうヤツは問答無用で送り返すから、そのつもりで。号令から三分待ってあげる。現場に出たければ、必死こいて逃げろ。いいわね?─────さあ、みんな準備なさい!」
隊員たちは呆気に取られていた。
そんな難しいことは言っていない。それなのに反応が遅れる。さっきの管制もだ。
装備を点検して、出場命令に備えるだけなのに。
今まで下がっていた光昭が前にでも、声を上げた。
「─────天界警察の諸君。よく聞いてほしい。三界連携活動はおろか、《現世》での任務に慣れていない者も多いのではないか?恥ずかしいことではない。つまらん矜持は今すぐ捨ててくれ。ココは《現世》だ。下手すりゃ、大怪我や病になるってことぐらいはわかるよな?官服は現世仕様になっているか、個人携行の装備についても確認しておけよ」
続けて自分の部下たちの尻を叩くことも忘れていなかった。
「おい、お前たちもさっさと準備しろよ。号令が出たらすぐに出られるようにしておけ。もたもたしてるとすぐに捕まっちまうぞ。なあに、心配しなくても仕事があるからよ。安心して捕まって来い」
天界警察の隊員たちは煌輝に目を向けていた。
当の煌輝は微笑を浮かべて、こちらを見ていやがる。
おい!見る方向が間違っている!こっちじゃないだろう!自分の兵隊くらいちゃんと面倒みてくれ。
翠蓮は少しイラつきを覚えながらも、慎重に言葉を選んで煌輝に声をかけた。
「副隊長殿。………あなたの部下たちが困っているようですよ」
煌輝の顔が険しくなった。
そして穢らわしいモノを見るかのような顔。
翠蓮にとってはお馴染みの顔である。
よく向けられる顔だから、なんとも思わないが。
いまその顔が向けられているのは翠蓮ではなく、煌輝の部下に対してだった。
煌輝はゆっくりと絞り出すかのように話し出す。
籠められているのは激しい怒り。
「………君たちはわかっているよね、うん。絶対わかっているはずだ。なのに。なのに!この僕をだよ、僕をさんざん困らせておいて?こんなに辱めておいて?………自分に都合が悪いことになったら僕を頼る?………みんな本当にいい根性をしているなあ。人間不信になってしまうよね」
煌輝は天界の隊員たちが一塊りになっているところに向かって歩いて行く。
きっと微笑を湛えた顔をしているのだろう。少し女子隊員たちの顔が綻んでいるのが見える。
なんとわかりやすいことで。
「さあ、準備しないとね、もうすぐ機動巡回が始まるよ。君たちは精鋭なんだ。自分たちがツカえるってことをしっかりとアピールしないといけないよ」
「な、なんで、そ、そんなことを………」と困惑する男子隊員が口を開いた。
「え?─────君たちはわかっていないのかい?………この尊さというものが!」
尊さ……ねえ。
翠蓮は顎に手をやって首を傾げる。
確かに三界連携活動という取り組みは尊いモノだが………。
さすがだ。さすが天界警察と言わざるを得ない、と思ったのだが。
煌輝のその微笑みが怖い。なんかイッちゃてるソレである。
「わからない、ということなのかな………」
悲しんでいるのか怒っているのか、よくわからない。
何やら少し狂気じみている感じがする。
「わからないということなのかな?僕はいつもさ、繰り返し繰り返し言ってきたじゃないか。─────獄界に咲く美しき華があると。地の底で美しく咲く蓮の華があると。………ここまで言ってもわからないかな」
隊員たちの顔が引き攣り、蒼ざめていく。
お、おおぅ。
尊いってそういうこと………。
「─────翠蓮様にお認めいただけないような隊員はゴミだ。塵だ、屑だ、芥だ。僕はそんな隊員なんかいらない。わかるよな。ゴミはどうすればいい?」
女子隊員が顔を引き攣らせながら、口を開いた。
「ゴ、ゴミは捨てるしかありません」
「そうだよね。わかってるじゃないか。ゴミは捨てるしかないんだよ。ならば自分がクズならどうすればいいか、わかるよね。屑籠に自ら入ればいいんだ」
隊員たちは震え上がった。翠蓮も絶句するしかない。
なんなんだ!それは………。
(………な、なんで、そんなことになってんのよ〜。どうしよう………。)
でも煌輝は間違いなく本心で言っている。
彼はいま本当に怒っている。ここで余計なことを口走る隊員はいなかった。
光昭がすかさずフォローに入ってくれた。
「─────ゴミって決めつけんのもどうかと思いますぜ。いろいろ使いようってもんでしょう。ゴミでなくせばいいんです。─────さあさあ、諸君。準備を続けよう」
さすが、おっちゃんである。
これは、さらっと流すほかない。
煌輝は隊員たちから目を逸らして、翠蓮をまっすぐに見つめてくる。そして微笑む。
(うう………怖い)
「隊長。時間がありません。号令を」
「そ、そうね」
隊員たちに準備しろ、といいながら、それを見届けることなく容赦無く、私に対して号令しろと言ってきた。
少し気の毒になってきた。
─────管制。こちらスティレット・ワン。
今度は間を置かずに応答が来る。
(獄界管制、牡丹よ。始めるのかしら?)
─────まもなく………ね。出場の承認をもらえるかしら。
(スティレット戦隊、機動巡回の開始を確認。出場を承認します)
─────さんきゅ。牡丹。
息を整える。目を瞑る。
いい人そうだと思ったが、ちょっと方向性がヤバい。
冷静に考えてみよう。
ハタから見れば、自分だって十分にイっちゃってるヤバいヤツでしかない。
類が友を呼ぶ。同種同根。うーん自業自得。
自分へのフォローになってない。
ヨシ、見なかったことにしよう。聞かなかったことにしよう。深入り厳禁だ。
お巫山戯はここまで。
カッと目を見開いて、スイッチを入れる。
さあ、お仕事お仕事。
「みんな、機動巡回であることを忘れないでよ。私から逃げるだけが仕事じゃないんだからね。対応に入ることがあれば、その時点で報告すること。いいわねッ!─────さあ、全員出なさいッ!」
翠蓮の号令を受けて、隊員たちが飛び出していった。
隊員たちの様子を見回っていた光昭が苦虫を噛み潰したような顔をして戻ってきた。
「おっちゃん。どったの?」
光昭は煌輝を睨んでいる。ただならぬ形相だ。
「これはどういうことなんだ、中隊長殿?………現世酔いを起こしてるヤツが三人もいた。危なっかしいのがが四、五人。全員ちゃんと順応訓練はやっているんだろうな?」
「ええ。………書類上はね。あとは本人の責任ですよ」
煌輝は申し訳なさそうにして目を伏せた。
(ああ、やっぱりね)
天界警察は《現世》での活動を一段低いものとして捉えている節がある。
内情を知っている者がここに三人もいる。
これ以上は余計なことを言わなくていい。
「煌輝。フォローしてくれてありがとう。とても助かったわ」
翠蓮は話を変えて、管制に事情を説明してくれていたことについて、礼を言う。
少し落ち込んでいた煌輝は、パァーッと顔を明るくする。
「ところで機動巡回なんだけど、さ。煌輝はどうする?」
翠蓮から砕けた問いかけをされて、少し面映そうな感じになっている。
「どうかした?」
「どうするって………」
煌輝は何か思うところがあったのか、悲しそうな顔を向けてきた。
「─────さ、参加するな、って仰っているのですか………」
誤解だ。そんなことは言ってない。
「そーいう堅苦しいのはいらない。あのね、よく聞いて。私は小隊の指揮官、あなたは一個中隊の隊長。私が中隊長を試したなんて思われたらどうなる?言うことも聞かなくなるわ。だから選んでほしいの。私と一緒に来るか、ここで光昭と一緒に脱落者の面倒を見るか」
「もちろん、あなたとともに」
煌輝は即答する。
「でしょうね。そう言うと思ってたわ。─────さあ、もう3分経ったでしょ?煌輝は出られるかしら?」
「もちろんです」
「─────私についてこられるかしら?」
「ええ。なんとしてもついていきますよ」
そんなやりとりを交わしつつ、光昭を見る。
「ココは任せてくれていいぞ」
「はなっからそのつもりだって………」
まだ出ていない隊員がちらほら見える。
「─────ちょ、ちょっと、ちょっと、全員参加のはずだけど」
「バカ言うな。《天幕》の仕込みがあるんだよ。どうすんだ!!萌霞と花蓮は残す」
「あ、そーいうことね。わかった。………ちょっくら行ってくるから、頼むね」
「オウ」
相変わらずの気の抜けたやりとり。
煌輝はピッと背筋を伸ばして、素早く一礼。
「光昭殿。─────進発しますッ」
「オウ、行ってきな」
翠蓮は予備動作もなく、すーっと飛び出していく。
煌輝は翠蓮の背中を追いかけていった。
光昭はそんな二人を見送りつつ、ぶら下げていた瓢箪を手に取った。
(なかなか相性、いいんじゃねーか。だけど………かわいそうになあ。なかなかイイ男なのにな、嬢ちゃんに入れ込むとロクな目に合わないぞ。まあ、アイツもまた貧乏くじ属性ってことか)
光昭はそんなことを思いながら、グビリと呷った。
「あー、また呑んでる。まったく呑んだくれは困ったもんだわ」
「水とか言ってますけど、絶対お酒ですよね」
萌霞と花蓮は光昭の後から覗き込むようにして瓢箪を取り上げた。
「水ならアタシたちが飲んでも大丈夫ですよね?」
光昭はニタっとと笑って女子隊員を揶揄う。
「ああ。飲んでも大丈夫。由緒正しい黒縄地獄の湧き水だからな。美味いぞ。甘露の如き黒縄の湧水ってな。聞いたことあんだろ?」
光昭は瓢箪を奪い返し、萌霞の口に瓢箪を突っ込んで、そのまま持ち上げる。
飲まざるを得なくなった萌霞はそのままごくりと飲み干した。
萌霞は目を白黒させて驚いた。
「─────み、み、み、みずだよー」
「えっ!お酒じゃないの?」
花蓮も驚いている。
「な、なんで水で酔っ払うのよっ!」
光昭は手をひらひらさせて、二人に背を向けて歩き出す。
「─────水もまた思えば酒とならん、ってな。俺たち呑んだくれは水でも酔えるんだ。オレはちょっと総指揮所、覗いてくっから。頼むぞ」
萌花と花蓮は顔を見合わせる。
「………お酒、飲みたかったなあ。絶対お酒だと思ってたのに」
萌霞は唇を尖らせる。花蓮は呆れたように呟いた。
「あー、あんたはそっちだったか」
◇◆◇◆◇◆◇
─────すっかり《現世》は漆黒の帳が降りていた。
今回の活動は日の出と同時に終了の予定だ。
鳳仙がやらなくてはならないことは〈総指揮所〉を立ち上げること。
活動における範囲指定は第3管区。つまり東京を含む首都圏全域となる。
全国は11の管理区域に分けられている。
調整庁から提供された通報予測値は全管区で60000件。
【出動要請】がかかるのは6000件から7000件と予測されている。
そのうち、第三管区が受けもつのは800件から1000件程度との予想である。
これを1500人で対応しなければならない。
一戦術単位三人単位で運用しても500組しか存在しない。
単位あたり1件以上対処に入らないといけないし、それがすべて話し合いだけで解決できる要請だけではない。戦闘行動に発展してしまう要請も十分考えられる。
次々と飛んでくる要請を実働する部隊に振り分けるのが〈出場管制〉である。
牡丹をはじめとする情報官や分析官たちがこの管制業務に就くことになる。
管制はそれぞれの庁舎に指令台がある。
三界連携活動でもそこを使うことが多いのだが、今回は一元化して総指揮所に置くことにした。
もちろん、それぞれの庁舎の指令台を使った方と良いという意見があったが一蹴した。
そんなことはわかりきっている。
一元化した理由はもちろん監視が必要だからだ。変な動きをされても困る。
総指揮所は東京。
新宿に置くことにした。都庁第一本庁舎の屋上である。
高いところでなくてもいいのだが、鳳仙は見晴らしのよい場所がいいと思ったからだ。
なにより気分が高まる。
それにここにいるのは《幽世》の者だけだ。
生きている人間には出来るだけ目につかないほうがいい。
指揮系統は鳳仙を総指揮官として、副官として天界警察の特機大隊長、光佑が副指揮官として就くことになった。
天界警察の警備部は現場好きの偉丈夫で荒っぽい者が多いのだが、光佑はそういう感じではない。
どちらかと言えば文官寄りである。天界警察の幹部級職員としてとても腰の低い珍しいタイプ。
中肉中背、決して不健康そうな印象はない。
公安三課第二中隊第一小隊。
自分の隊の半分を翠蓮に預けることにした。残り半分は珠莉課長に連れて行かれた。
その課長は庁舎に戻っていた。
ここにいるよりは庁舎にいた方が良い。
そちらは不測の事態が発生した時の保険だ。
隊員たちはきっと手荒く扱われていることだろう。
警邏局広域警邏部特殊警邏第二連隊は相変わらず陰が薄い。
隊長の一鏡は「我らは後方支援。零れ落ちたものを拾わせてもらう」と言って、隊員を区分けしたものをこちらに投げて寄越した。自分たちの立場を明確にしてあとはお任せということらしい。
実に鮮やかである。なんでこうも綺麗に立ち回れるのか。今度、教えを乞いたい。
天界警察特殊機甲大隊第一中隊には二小隊規模を残すように指示を出した。
本部付遊撃隊としてウチの小隊と組ませたが、面白くないようだ。
第二小隊と第五小隊が本部隊に残ると言い出した。
どうやら中隊長をここに残したくない、らしい。
第一小隊長は中隊長が兼ねることが多い。どうでもいいが中隊長には残ってもらいたい。
当の本人はどんな形になっても残ると言い張っているので問題なさそうだが、数人の女子隊員たちが必死に説得を試みている。総指揮者の要望として、ここに残して欲しいと強く言っておいたのでなんとかなるだろう。
この中隊長が翠蓮と絡みがあった男で煌輝についてもいろいろと牡丹が報告してくれた。
ブリーフィングに出ていたので目にすることはできなかったが、翠蓮と牡丹、光昭とも絡んだらしい。
それぞれの反応が面白かった。
翠蓮は満更でもなさそうで、むしろ気に入っている様子。
牡丹が顔を顰めていて「アリよりのナシ」と書いてある。
光昭は面白がっていて「アリアリ」と顔に書いてあった。
私の結論はもちろんアリだ。
ツカえるものはなんでもツカわせてもらう。
なんといっても見目麗しさは本物だ。なかなかの逸材である。
この領域に達している美丈夫はそうはいない。これはツカえる。使い倒すべきだ。
翠蓮と煌輝。
嫌がろうがなんだろうが、翠蓮と組んでもらいたい。このペアはある意味最強である。
中隊長に翠蓮と組んでほしいと頼んでみたところ、これまた面白い反応だった。
この幸せを噛み締めているような表情。顔を赤らめ、あきらかに上気していた。
女子のような仕草。そして体を痙攣させ、挙句魂がぬけてしまったような表情になった。
思わず「君は天界に住まう者ではないのか─────?」と冗談を口にしてしまった。
この調子なら翠蓮がしっかりと尻に引いて、主導権を握れそうな感じである。
これは例の最重要任務の備えに他ならない。
あの過保護で天界崇拝主義者の母親霊を説得するためには必要不可欠である。
これが私の最適解である。対応はこの二人に初動から入ってもらうつもりだ。
この二人をツートップにする。天界の隊員たちが使えなくてもウチらでどうにかできる。
自界の隊員のことは把握できていても、他の界の隊員のことはわからないが、現場レベルにおいて、安心できる隊員がいるというのは大きい。
この厄介な件を生み出したのは間違いなく《天界》勢である。
煌輝がここに残って、本部付戦隊として行動すると決まったとき、何人かの女子隊員が詰め寄って来て、なにやら訳のわからないことを言っていた。
「好きなのか」とか「そんなにそばに置きたいのか」とか。
「好きでも嫌いでもない。とにかく役に立ちそうだから」と言ったら、今度は「モノ扱いすんのか」と言ってきた。
流石にムカっ腹が立ったので、思い切り睨み返して「自分の心配をしなくていいのか。役に立たなかったら、全員《獄界》おくりにしてやるからな」と凄むほかない。
しばらく女子隊員たちは恨めしくこちらを睨んでいたが、知ったことではない。
李花から伝えられた認識ID[876534-234986-384773-398470]は牡丹に伝えた。
勘のいい牡丹は余計なことを伝えなくても、もう調べに入っていることだろう。
何かを掴めば、なにか言ってくるはずだ。
◇◆◇◆◇◆◇
鳳仙は管制所にいて様子を眺めている。
隣には天界警察の大隊長、光佑も控えている。
─────厳密に言えば、まだ活動は始まっていない。
各界から管制を担当する者たちが送り込まれている。
《獄界》からは三課の牡丹と著莪。広域警邏部から王林。そして紅玉。
紅玉は警邏局所属の統括情報官としてここにやってきている。
実際には獄界警察庁現世合同庁舎総合司令台の管制長である。
一鏡隊長の采配である。流石すぎて頭が上がらない。
《幽界》はふたりだけだ。少し気弱そうなのが来ているが権さんと現さんの部下だ。
龍ヶ崎真凛と伊藤颯太というらしい。
見た目で判断してはいけない。この二人は実戦経験豊富な管制官のはずだ。
たわけたことやらかせば、権現の爺さまたちがココに乗り込んでくるはずだ。
心配なのは《天界》だ。早速やらかしてくれた。
天界の管制人員は多い。いつも六人程度送り込んでくる。
統率が取れていない。こんなことは初めてだ。普通はこなれた連中が送り込まれてくる。
何を考えているかわからない食わせ者もいるにはいるが、だいたいは無駄に暑苦しい熱血漢が多い。コミュニケーション能力は高く、活動に影響を及ぼすことはしない。
本部付遊撃戦隊とのトラブル。
天界隊員からの個別交信している間に入った戦隊長の呼び出しを無視した。
そこに副隊長の煌輝が事情説明のために管制への全体交信を入れてきたのだが、それを遮断しようとした。こんなことは普通しない。
その変な動きを察知した紅玉が割り込んで管制を掌握した。
本当に何を考えているのかわからない。とはいえ、別に指示が出されているようには見えない。
時折こちらの様子を窺っているのがわかる。
隣にいる光佑が口を開いた。どうやら同じことを考えていたようだ。
「………お任せいただいていいですか」
「もちろんです」と告げると光佑が離れて、天界の管制員たちを集めた。
総指揮所に光昭がひょこっと顔を出した。
「隊長………。ちょっといいですかね」
少し顔が赤くなっている。
「もちろん、かまわないけど。流石に露骨すぎじゃない?」
「いやいや、ココは寒風吹き荒ぶ屋上ですよ。顔が赤くなるのは至極当然ですぜ」
まあ、相変わらずの切り返しである。
「隊長。─────どう考えてもおかしいんですよ。天界の連中が」
「どういうことかしら?」
「練度不足で片付けてちまえばいい話って言えば、それまでなんですがね。練度不足なんて次元の話じゃない。現世酔いを起こしている者が二人。危なっかしいのが四、五人。七人が見事に使い物にならんのですよ。ケツ引っ叩いて出しましたがね。他で問題が起きていなければ、と思いましてね」
「そんな報告はあがって来てないわね」
光昭はため息を吐く。
「─────やっぱ足を引っ張るってことが目的なんですかねえ。よくもまあポンコツを集めたもんですわ。………嬢ちゃんの《監査》にバッテンをつけるためですか」
恐らくそんなことはない。眼中にすら入っていない。
翠蓮の《監査》はあくまで口実に過ぎない、と踏んでいるのだが、間違っているのだろうか。
《天界》が何を考えているか、わからない。
天界警察の公安部特別捜査課の課員は約30名。
別の指揮系統で動くと通達して来た。
要求されたのは翠蓮の所在を知らせてほしいということだけだった。
彼らが例の一件のことを把握していないわけがないと考えているのだが。
もし、こちらがそういう仕掛けをする側ならば、本部付遊撃戦隊にはとびきり優秀なのを注ぎ込み、主導権を握ることを考える。
実際、警備部長は露骨にそうしてきた。
しかし主導権を握ることができるはずの隊長を翠蓮に押し付けてきた。
それはそれで一貫している。光佑ですらそうなのだ。
例の件のことを翠蓮や光昭たちには伝えていない。
伝えないという選択を取った。余計な情報を与えるよりもいいと思ったからだ。
任務に必要な情報はもちろん伝えるつもりだが、不確かな憶測などはノイズになって、対応に迷いが生じる。三界連携活動において割り振られた一つの任務であれば、それはそれとしてきっちり対応するはずだと考える。
今回の活動は第三管区のみ。
他の管区は当番隊で動いている。第三管区は第二管区、第四管区、第九管区が隣接している。
各管区司令台とも話をつけておくか………。
いざとなったら課長に話を通してもらおう。
光佑が不思議そうな顔をしながら戻って来た。
「どうかしましたか?」と思わず尋ねてしまう。
「なにが起きているんでしょうかね………。何でこんなことになっているのか。私でも首を傾げてしまうことが起きていますよ。なにかわかったら報告します」
「コウさんよ、なにが起きてるっていうんだい………?」と光昭が尋ねた。
管制長の紅玉が近寄ってくる。
「─────あら、大隊長さんも大変ですわね」
「本当に申し訳ない」と光佑は頭を下げる。
紅玉は「心配いりませんよ。王林もいるし著莪ちゃんもいるし。真凛ちゃんと颯太くんもいる。それに牡丹がいるんですもの。なんとでもなるわ」と笑い飛ばした。
紅玉は光昭を見つけて、ほくそ笑む。
「あら。あらあらあら。あなた、いらっしゃったの?」
光昭はバツの悪そうな顔をしている。
いるのがわかってるんだから、来なければ良かったのに。と鳳仙は思う。
「オレのことはいいから。………は、は、話を続けろよ」
顔を真っ赤にしている。タジタジである。
「あら、もう話は終わってますわよ。………私たちは任務を完遂させるだけ。思惑があろうがなかろうがそんなのどうでもいいこと。ここはお任せくださいって、ね。あら、まだそれ使ってくれてるの?─────うれしいわ。ありがとう」
光昭の持っている瓢箪はちょっとしたカラクリがしてあるモノだ。
水と酒を分けていれることが出来る。これを使ってよく隊員たちを揶揄っている。
光昭にはもう紅玉の声は届いていない。
なにやらブツブツと呟いている。
「管制はド素人。第一中隊のメンツはポンコツ………。いったい何がしたいんだ???」
天界の管制官の一人が声を張り上げた。
「三界連携調整庁と連結確立しました」
「はい。了解」と返し、指令台にあがることにする。
幽界の管制官、真凛が現況報告が始めた。
「─────まもなく総員の配置が完了します。各員の位置情報正常。スティレット戦隊の機動巡回は継続中。現在、6件の帰幽忌避者追跡中との報告あり。継続させますか?」
鳳仙は歯切れの良い報告を聞いて安心する。
「継続で構わない。ただし深追いをしなくていいと伝えて。戦隊への出場命令があった場合は速やかに復帰せよ。活動が最優先だ」
真凛は短く「了解」と返した。
「─────号笛を鳴らせ」
鳳仙が指示を出し、紅玉は無言で頷いた。
三界連携活動が始まった。
【四話】まで公開いたしました。
ついに三界連携活動が始まります!
「【五話】三界連携活動(肆)」はまだ途中です。。。
いつくらいにアップできるか………わかりません!─────頑張ります!