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はじける才能

葉月は頭を抱えていた。


「今日はショコラミントちゃんの後輩、ソルトエースちゃんも呼んじゃった!!!」


パチットキャンディはそう言ってソルトエースの肩に手を回しカメラに向けてブイサインをした。


「今日は彼女にたくさん質問していこうとおもいまーす!!」


葉月の手元のタブレット端末から聞き覚えのある声が再生される。

どうやらパチットキャンディの配信番組に名指しで出演オファーが来ていたようなのだ。


「相談てこれ・・・?」


葉月は気まずさから幼馴染であるサエから来ていたメッセージ通知を改めて開いた。


『魔法少女に関することで相談があるんだけど・・・会える日あるかな?』


「まあいいか。いつかは自分で決めることだし」


葉月は興味なさげに配信画面に視線を戻す。


「それで、ショコラミントちゃんとはどんな関係なの?」

「実は私たち幼馴染で・・・」



「!?」


葉月は端末を取り落としそうになるほど動揺すると、慌ててサエに電話をかけた。

画面の向こうでソルトエースの腰のあたりから着信音が鳴り響く。


「え、何々、本人電話出演?」


パチットキャンディが目ざとく反応すると、ソルトエースはすぐに通話ボタンを押してスピーカーモードで電話に応答した。


「どうしたの?」

「どうしたのじゃないよね?」


葉月の怒りの籠った静かな声が配信にのると、コメント欄でも「怒ってるw」「あーあ」「ショコラエースって自分のこと話したがらないしクールなイメージだもんな」など盛り上がっていく


その中で「ある意味ブランディング妨害だもんな」というコメントを見てソルトエースが元気のない様子でうつむいてしまったため、葉月はため息をついた。


「仕方ないな。まあ変なことは言わなければある程度は話してOKだけど、個人情報に近いものとかはぜっっったい言わないでよ?」


葉月の発言にコメント欄が「なんだタダのツンデレか」「ソルショコか」「ショコソルかもしれない」等盛り上がりが加速する。


「ちょっと私のこと放置しないでよ~!」


パチットキャンディの言葉でソルトエースがハッとする。


「あっ、ごめんなさい!じゃあショコラミント、またあとでね!!」


電話が切れ、配信画面に二人が改めて並ぶとまた質問ラッシュが始まる。

事前告知をしていたらしく、お題箱に来ていた視聴者からの質問に答える形式のようだ。


「戦闘スタイルはどんなですか・・・だって!」

「えと、私、四歳からずっと武術を習ってて、お父さんには勝てないけど、一応接近戦が解くいうです。魔法で身体強化したりしてます」

「武術!!すごい!」


純粋にほめられたことに慣れないのかほほを赤らめながらえへへと笑うソルトエースをパチットキャンディは可愛いと歓喜しながら頭をなでた。


配信が進み、二人がガーゴイル討伐に行くと宣言するとスパチャがたくさん飛び始めた。

メッセージ内容は「頑張れ」や「倒した後おいしいもの食べてきて」等前向きな物ばかりだ。



「これから行ってくるね!この辺りに住んでる視聴者さんはうるさくしたらごめんね~」


パチットキャンディは手を合わせて謝ると、ソルトエースの手を取って走っていった。



しばらく場面は移動のみの変わらない風景が続く。移動中もインタビューを兼ねたトークが面白おかしく展開されていく。

葉月はまた変なことを言わないかハラハラしながらその様子を画面越しに観察していた。


二人が対峙していたのはレベル2の動物型が3体。

子供くらいの大きさのネズミが2体、成人男性よりも大きなクマが一体といった組み合わせだ。


「パチットキャンディさん、あの大きなクマは私がやります!」


ソルトエースはそう言って高く飛ぶと、クマの形をしたガーゴイルの頸動脈付近に重い蹴りを食らわせた。


ガーゴイルは少し動きを止めたがまた襲い掛かる。


「やっぱりこのくらいじゃだめかぁ」


ソルトエースは深く息を吐くと構えを変え、そのままじっとガーゴイルを見据えた。

そして一定の距離まで2つの影が近づくと、ソルトエースの体が消えた。

いや、性格には消えたと錯覚するほどの速さでガーゴイルとの距離を詰めたのだ。


よく見ればその表情は先ほどのおどおどした可愛らしい女の子の様子はどこへやら、少しばかり狂気をはらんだ切れ味の鋭いまっすぐな視線が画面に映し出された。


ソルトエースの繰り出される技は確実にガーゴイルにダメージを与えている。


「すごおい・・・さすが武術を極めしもの・・・」


パチットキャンディの声が画面外から聞こえてくる。

すぐにネズミ型を倒したのか、ソルトエースに加勢しようと画面外からパチットキャンディが飛び出してくる。


髪型に恥じぬ電撃攻撃でクマ型ガーゴイルの足を焼くと、ソルトエースに合図を送った。


「ありがとうございます!!」


ソルトエースは何か小さな声で詠唱をすると、己の拳に魔力を集約させた。


魔力を帯びた幻で作られたグローブがガーゴイルの胸元に輝く核を直撃する。

核に入ったヒビが見る見るうちに大きくなると、そのまま霧のようになって砕け散った。



ガーゴイルの体が風に乗って空気に溶けていくのを見ながら、二人が静かに息を吐いた。


「勝ったね」

「勝ちましたね」


「・・・お疲れ様!!」


二人は顔を見合わせて笑いあうと両手でハイタッチをした。



敵を倒したということで、またトークコーナーが再開されたので、葉月はあくびをしながらがめんの電源を落とした。



「・・・はぁあ・・・」


ベッドの上に怠惰に体を預ける。

葉月はそのまま夢の中に落ちていった。


黒い雨の中で小さな少女が座り込んでいる。


その前には力なく横たわる制服姿の女の子が見える。


その女の子の腕につけられたブレスレットにはキラキラとした光を放つ真っ赤な宝石がはめ込まれている。


「ごめんなさい、ごめんなさい!!!」


少女の泣き声がこだまする。


葉月は砂嵐のようなノイズの中で聞こえてくる悲痛な叫びに耳をふさぎながら顔をしかめ、泳ぐようにして光のある方に向かっていった。



「・・・!!」


葉月が時計を確認すると、短い針は11を刺していて、窓からは美しい白い光が差し込んでいた。



「おなかすいたな」


葉月はリビングのテーブルに残された皿を手に取ると、ラップを外して電子レンジに入れた。


「お父さんは・・・寝てるか。電磁波がとかうるさいから目の前で使えないの困るんだよな」


葉月はスマホをいじりながら椅子に座り、肘をついた。


テーブルの下に落とされたメモには「温めたほうがおいしいからチンして食べてね」と丸文字で書かれていた。



~エルエルの魔法少女解説~


こんにちはエル!ぼくは魔法少女の相棒をしているエルエルだエル!


今日は魔法少女パチットキャンディについて解説するエル!


パチットキャンディは動画配信をして稼ぎの足しにしているインフルエンサー系の魔法少女エル!

いろんなところの魔法少女をゲストに呼んで共闘することで視聴率を稼ぐこともあるけど、ギャラをしっかり払っていて、その都度契約書もまいているらしいエル!陽キャで空気読まないみたいなキャラなのに意外エル~!

笑うときは「にしし」って笑うエル。

オーロラのようなひらひらした袖やフリルと夜空を写し取ったような濃い紫のドレスはまるで宇宙みたいに神秘的エル!電気のようにはじけた金髪ツインテールはまさに名前の通りぱちぱちしてるエル~!

変身アイテムのエメラルドの緑色がとっても映えるエルね!


実は真面目で面倒見がいいなんて噂もあるけれど・・・おっと、葉月ちゃんが帰ってきたみたいエル!

それでは次の解説で会うエル!

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