甘くてどこか塩辛い
「みんな~!パチットキャンディの配信はっじまっるよ~!」
オーロラのような服を身にまとった金髪ツインテールの魔法少女がパートナー妖精のコットンに向かって大きく手を振った。
「今日は特別ゲスト、ショコラミントちゃんにきてもらってまーす!」
「ど、どうも・・・」
ショコラミントは表情を変えずぎこちない挨拶をした。
「クールビューティーなショコラミントちゃんは、”あの”ストロベリースフレちゃんの後任で、すっごくつよいんだよ!よければ魔法少女になったきっかけとか教えてくれるかな?」
パチットキャンディがマイクを持つ振りをしながらショコラミントに問いかけるも。ショコラミントはため息をついた。
「時間あれば答えますが、まずはアレをどうにかしません?」
ショコラミントの視線の先には、彼女が糸でがちがちに拘束した大型のガーゴイルの姿があった。
手足の生えた鯨の姿は何となくゆるキャラをほうふつとさせるあいかんせん大きすぎる。糸が切れてあの巨体がバランスを崩してしまったら被害はかなり大きくなることだろう。
「えー・・・仕方ないなぁ。それならさくっととどめ刺しちゃおうかな!みんな、うまくできたらスパチャよろ~!
・・・はじけろ、プリズムシュガーショット!!!」
パチットキャンディは手を銃の形にしてガーゴイルに狙いを定めると大きな水晶の塊のようなものを鯨型ガーゴイルの中心部分に打ち込んだ。
打ち込まれたガーゴイルはそのまま光の粒になり中心から消えていった。
「ふう、お掃除おしまい!みんな、ほめて~!」
コットンに向かってぴょんぴょんと飛び跳ねておしゃべりしているコットンキャンディに背中を向け、小瓶に魔力残滓を入れていくショコラミントが配信に映っていたのか、端末でコメントを確認していたコットンキャンディがショコラミントの手にある小瓶に手を伸ばした。
「それなあに?すごいきれい!」
「・・・っ!!」
ショコラミントは驚いて小瓶を高く掲げると、コットンキャンディから距離を取った。
「あ、ごめん」
「・・・いえ、私も大げさにしすぎました。・・・これは大事なものなのであまり深く聞かないでほしいかもです」
ショコラミントは顔を伏せてそう言うと、パチットキャンディは大げさに手を合わせて謝った。
「ほんっとうにごめん!あたしの悪い癖なんだ。たはは、直さなきゃなぁ」
パチットキャンディのまとう雰囲気から本当に反省しているのは伝わるが、おそらく画面越しには伝わらないのか少し荒れてしまったコメント欄に弁明をし続けている。
「・・・そんな感じで、今回はゲストのショコラミントちゃんと共闘しました!ショコラミントちゃん、また呼ぶね!!」
「はぁ」
「では今日も~、おつパチ~!」
配信が切れたのか、パチットキャンディはぴたりと動きを止め、そのままカクカクした動きでショコラミントの前にやってくると勢いよく土下座した。
「すいませんでしたぁ!!!!!!!」
「えっえ、あの、」
「私のブランディングが悪いんです!初めにキラキラ陽キャ強者女子キャラでやってゃったから後に引けなくて・・・地雷踏み抜いてましたよね!ほんとごめんなさい!!!!」
先ほどの元気はどこへやら、パチットキャンディはずいぶんしおらしい様子でペコペコ頭を下げた。
「気にしてないのでそろそろ立ってください。良ければまた呼んでくだいよ、そしたら仲が悪くなってないアピールもできますよ」
ショコラミントの言葉にパチットキャンディの目が輝く。
「ありがとおおお!!!!ショコラミントちゃん優しいね。本当にありがとう、また呼ばせてもらいます!」
涙を袖でぬぐいパチットキャンディは今までで一番まぶしい笑顔を見せた。
パチットキャンディと別れたショコラミントは屋根の上を走りながら家に向かった。
いつものようにリビングを素通りしながら魔法少女の情報共有用サーバーにログウインすると、何やらチャット欄が盛り上がっている。
『最近野良魔法少女、通称「ノラ」が各自治体の討伐エリアを荒らしているらしいので気を付けてね』
『ノラは髪も服も真っ黒な姿をしていて、勝手にガーゴイルを一掃していくんだよね。防犯カメラに写ってるせいで私たちの稼ぎにもできないし最悪』
『あまりにも速くて姿をちゃんと見たことないけど誰か情報頂戴』
苛立ちを覚えたいろんな町の魔法少女の言葉が並んでいる中で、葉月はあるコメントに目が留まった。
『羨みの灯っていう魔法少女に無理やりなる道具があるらしい』
葉月は最近援軍参加した際に派遣先のよう背から聞いた言葉を思い出した。
”この世には魔法少女の素質が無くても変身できるアイテムがある”
「まさか、ね」
葉月は光を閉じ込めた飴玉をたくさん詰め込まれた容器からひとつ取り出して月光にさらす。
「これが必要になるほど強いガーゴイルはまだ出てこないのかな」
「Pドロップは魔法少女の魔法力は上げるけど、副作用もあるんだからあんまりお勧めしないエル・・・」
「エルエル、わかってるよ。・・・でも、これを使わなきゃならないくらい強い奴が出ないと私の願いはかなわないんだ」
心配そうな様子のエルエルの頭をなでながら机に頭をあずける。
「ふああ、今日は疲れたなぁ」
葉月は大きなあくびをしながら端末で改めて援軍申請が並んでいるクエストボードを眺める。
「学校行かなくていいとはいえ、たぶんそのうちサエに怪しまれるだろうな・・・」
葉月の端末にはサエから心配のメッセージ通知がいくつも並んでいた。
「こんにちは!僕はうーにゃん、君の相棒だにゅん!!」
サエの前にはクリスタルでできた長い耳を使た饅頭のような生物が浮かんでいる。
「君には魔法少女になってもらいたいにゅん。隣の市のショコラミントと協力してたくさんガーゴイルを倒してほしいにゅん!」
「は?は?」
「とりあえず変身するにゅん!」
うーにゃんと名乗った妖精はサエにダイヤ型の黄色い宝石のついたヘアピンを渡すと変身を促した。
混乱して現実を受け入れられないサエにうーにゃんは後ろを見ながら叫んだ。
「タイミングよくガーゴイルが出たにゅん!サエ、変身にゅん!!!!」
サエはさすがに身の危険を感じたのか、思わず頭に浮かんだ言葉を口に出していた。
「めぐるリボンは謎の中、不思議の国へご招待・・・!」
サエの手にあるヘアピンの宝石がまぶしく輝く。
その宝石の中から黄色のリボンが飛び出すと、サエの体を優しく包みこみはじめた。
光がおさまると、メイド服と不思議の国のアリスの服をほうふつとさせるような衣装に身を包んでおり、サエは驚きの声を上げるまもなく変身後の名乗りをあげた。
「魔法少女、ソルトエース。誰も、悲しませないために・・・!」
ソルトエースの揺れる白髪と正義に輝く瞳が新たな魔法少女の誕生を静かに宣言したのだった。
魔法少女の情報共有サーバー、通称「まほリンク」の最新ニュースが更新された。
『新たな魔法少女、誕生』
~エルエルの魔法少女解説~
こんにちはエル!ぼくは魔法少女の相棒をしているエルエルだエル!
今日は僕たち妖精の国と日本の関係について解説するエル!!
僕たち妖精は、人間や様々な動物の感情エネルギーをご飯にして生きているエル!人間たちの言う電気や水道みたいに、僕たちのごはん以外にもすべての動力源になる感情エネルギーは、昔は妖精たちだけの中でだけでまかなえたエル。でも妖精が増えすぎてエネルギーの供給が追い付かなくなった時、女王様が人間界に助けを求めることにしたエル!!
地球の国の中でも最も繊細な心をもち、言葉や表現の多彩さがどの国よりも優れて見えた日本のトップと女王様が話し合い生まれたのが始まりの魔法少女、チェリーだエル!
大人になった今では彼女は大臣として魔法少女のサポートや治安維持をしてくれているエル!
妖精界のエネルギーは、魔法少女の活躍を見た一般市民などから霧のような形状で回収して妖精界に贈られるエル!一応感情エネルギーに種類はなくて、恐怖も喜びも羨望も、関係なく回収することができるエル!
効率よくエネルギーを循環させるためにもこれからも魔法少女のみんなには頑張ってもらいたいエル!!!




