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魔法少女の誓い

葉月は夢を見ていた。


なんてことない普通の家庭。少し思想が強い父親と過保護な母親、やれやれ系の弟に囲まれて人並みの悩みを抱えながら生きる毎日。

たまたま困っていたおばあさんの手助けをして、来年から中学生だからお姉さんとしていいことをした、と気分よく下校していた葉月は見たこともないほどグロテスクな怪物に襲われた。

まるで異世界ものの漫画やアニメに出てくるような、ぎょろりとした一つ目に羽の生えた紫色の生物は、不気味な高笑いをしながら襲い掛かってきた。

葉月は死を覚悟して目をつぶったが、何も起こらないため恐る恐る目を開けると、一人の魔法少女がその攻撃を受け止めていた。


ふわふわとしたツインテールが風に揺れ、スカートの宝石が虹色に輝く。


「魔法少女、ストロベリースフレ!一般人を見境なく襲うガーゴイルは私が成敗してくれよう!」


少女はポーズをキメて叫ぶとあっという間に目の前の化け物を手に持ったハンマーであっという間に倒してしまった。


「大丈夫?」


「え、あ・・・」


ストロベリースフレと名乗った魔法少女は優しい笑顔を浮かべて手を差し伸べるが、少女がその手を取る前に背後で大きな爆発音が起きた。

爆発の起きた場所からは、ストロベリースフレが先ほど倒したものずっと大きく凶悪そうな一つ目のガーゴイルが現れた。


「・・・キュプロクス型・・・!?そんな!!レベル4のさらに上だなんて!!」


ストロベリースフレは奥歯をかみしめながら震える手でハンマーを握りなおした。

少女はストロベリースフレが飛び出していくときに首飾りの後ろにあるマークが激しく点滅しているのに気が付いた。

それはまるでいつかのドラマで見た爆弾の爆発直前の点滅のように・・・



「待って!行っちゃダメ!!!」


嫌な予感がした少女の必死な言葉は魔法少女の耳には届かず、彼女は勇敢に立ち向かっていく。


少女の悲痛な声もむなしく、大きなガーゴイルにストロベリースフレのハンマーが触れた瞬間、真っ白な強い光があたりを包み込んだ。


日常を平和に生きていれば聞くことはまず無い大きな爆発音が聴力を鈍らせる。


聴力が元に戻り、あたりに沈黙が訪れる。

少女が目を開ければ、粉々になった化物の残骸と変身が解かれ冷たくなった少女の体がそこには落ちていた。


「・・・え?」


少女は慌てて横たわっている()()()()()()()()()に縋り付いた。


「なんで・・・なんで・・・?」


少女はランドセルの中にあった救急セットを取り出し、何かできないかと中身をあさる。しかしそんなもので彼女が息を吹き返すことがないとわかっている少女は震える声で言葉を絞り出した。


「お礼も何も、言えてない・・・!」


大人の足音が複数聞こえてくる。

少女は慌てて目の前の体を引きずり、近くの茂みに身を隠した。


「うまくいったか?」

「それにしても史上最強にして認知度も大きかった彼女を失うのは自治体としては痛手だよな・・・新たな収益元を見つけなければ」

「にしてもあの爆発システム、失敗したのか?体が残らないほど強いなんて家族にどう説明するんだ」

「こうなったら魔法少女のことをご家族に伝えるしかないだろ。事故を装うにしては証拠がなさすぎる」

「あの子も可哀想だよな・・・知りすぎたばっかりに」



大人たちの足音は化物の残骸を集め終わるとすぐに去っていった。


足音が遠くなり消えたのがわかると、少女は改めてその冷たい体を抱きしめた。


「私もお姉さんのように・・・ううん、お姉さんに恩返しがしたい・・・!」


少女がそう強く願うと、横たわる体の腕に光っていたブレスレットについている赤い石から声が聞こえてきた。


「それなら魔法少女になるエル!」


真っ赤な石が強く光ると少女の前に羽を四枚はやした饅頭のような生物が現れた。


「初めまして!ぼくはエルエル!魔法少女の相棒をやってる妖精エル!君の願いの強さは十分素質があるエル!!君にはぜひストロベリースフレの後任を任せたいエル!」


「魔法少女になればお姉さんにお礼も言える?」


少女はエルエルと名乗った生物に疑問をぶつけると、エルエルは少し考えてから答えた。


「うーん、前例はないエル!でもガーゴイルを倒したときの魔力残渣を使えばできなくはないと思うエル!魔力残渣は純粋な魔力だから、人間の体になじむまで時間がかかるけど・・・それでもやるエル?」


「わかった。それでもいい。私の願いが叶うなら、私はやるよ」





けたたましい目覚ましの音で瞼をこじ開ける。


葉月はカレンダーを見てから、もう一度布団をかぶる。



「早くもっとたくさん残滓を集めなきゃな・・・」


日曜のまったりした朝を葉月は満喫しながら優雅な朝を過ごした。



散歩がてら町をパトロールするのが葉月の日課だ。

パトロールとは名ばかりの町ブラなのだが、葉月は人気のない町はずれの空き地で一息つく時間が数少ない楽しみの一つなので、あまり苦じゃないようだった。


「~♪」


夏の木陰をゆらす涼しい風に乗せて鼻歌を奏でる。


「綺麗な声エルね~」


いつの間にかペンダント空出てきていたのか、エルエルがうっとりとした声を出した。


「誰に見られてるかわかんないんだから、せめて認識阻害魔法かけといてね」

「もちろんわかってるエル!」


葉月は大きくあくびをしてから地面に寝転がる。

乾いた地面に服が汚れるのもいとわず寝頃がると、何となく根拠のない特別感に浸れる。



「・・・ねぇ、エルエル、私の願いは着実に叶っているのかなあ?」


葉月の不安そうな声に、エルエルも間をおいて答える。


「・・・わからないエル・・・でも生物の命を再度取り戻すというのはすっごく難しいし、妖精界でも禁忌の魔法エル。前例も無いから資料もないし・・・」

「体の鮮度は私の魔力で保ってるからいいけど、それ以上でも以下でもないからなぁ・・・」


葉月の言葉にエルエルは答えるのをやめて、疲れたとだけ言うとペンダントの中に戻っていった。


「肝心なことはなにも教えてもらえないんだなあ・・・」


葉月の声は風に乗って、夏の真っ青な空に消えていった。




葉月の部屋に置かれたカレンダーの祝日欄に記載された「勇者の日」に赤いマーカーで大きな丸が書かれている。

窓から吹いた夏のぬるい風は、カレンダーのページをゆらゆらと動かした。


~エルエルの魔法少女解説~

こんにちは!みんなの可愛いエルエルだエル!

今日は僕の相棒である魔法少女ショコラミントのことを紹介していくエル!

衣装は名前の通りアイスクリームのチョコミントのような色のマジシャン風エル!

彼女は少しクールな子だけれど、心の中に熱いものを秘めているエル!

彼女の武器は細いテグスのような糸エル。拘束してよしとどめを刺してよしの優れモノで、ショコラミントはその糸でどんな大きなガーゴイルの動きでも簡単に封じてしまうエル!

相棒のぼくも鼻が高いエル!!

協調性が無くて人に誤解されがちな子だけれど、実は動物が好きだったりちゃんと年相応の女の子なんだエル。

僕だけは彼女の味方エル!!

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