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子供のようなまっすぐな

ショコラミントは困った様子で目の前の毛玉とにらめっこしていた


「んなあ」


真っ白な毛玉はショコラミントの足元に寄り添い、すりすりと頭を擦り付けた。


「ソルトエース、たすけ・・・」


パシャ


シャッター音が鳴り響き、ショコラミントの目の前には端末を構えたソルトエースの姿があった。






「今日の放課後、ラッキードナルド」

「はい・・・」


葉月は目の前で頭をうなだれさせるサエを冷めた目で見つめた。


あまりに登校しなさすぎて、魔法少女を卒業した後の稼ぎ口が心配になった二人は、久しぶりに制服に袖を通した。

妖精の魔法のせいか、数か月ぶりに登校した二人に疑うことなく話しかけてくるクラスメイトに二人は違和感を覚えながらも、眠い目をこすりながら机に向かった。


「予習してきたとはいえ、しばらくやってないとわかんないもんだね」


葉月はボーっとした様子で弁当を箸でつついた。


「ウチは親が厳しいから大丈夫だったけど葉月のとこは親は何も言わないの?」

「あーえーと・・・お母さんは『私は平均くらいはとってたから赤点回避くらいで喜ばないで』とか言ってくるけどお父さんはそういうの無いからな・・・」


葉月の何もかも諦めたような声が渇いた空に消えていった。


「そう言えば、今朝の写真伸びてたよ」


サエは端末を葉月に向けると、一つの投稿を指差した。

そこには白猫に困惑する様子のショコラミントの写真が上がっており、沢山のコメントといいねが付いていた。


『かわいい』

『これソルトちゃんが写真撮ってる設定だよね。絶対不機嫌の理由それw』

『解釈一致助かる』

『本気で困ってそうなの最高にたぎる』


葉月は興味なさげに登校を一瞥すると、箸を持つ手を動かした。





「写真に協力する代わりにちゃんと話す約束だったからね。今日は放課後ハンバーガー買ったらそのままついてきて」


放課後を告げるチャイムと同時に二人は学校を飛び出した。

最近は討伐をしすぎて市内のガーゴイルがほとんどいなくなってしまい、依頼も近くのエリアのものもあらかた解決させてしまった二人は、妖精たちに働きすぎを指摘されて休みを取ることになっていた。


ラッキードナルドで買い物をすませると、二人はとある宿泊施設に向かった。


「ここは・・・」

「自治体所有の宿泊施設。ゲスト魔法少女はここに泊まることが多い。オッケー?」


葉月がマジカルジュエルを受付にある機械にかざすと、エントランスの自動ドアが音もなく開いた。


葉月が迷うことなく一番奥の一段と豪奢な部屋の扉に鍵を差し込み中に入っていく後ろ姿をサエはただぽかんとした様子で見つめ、ついていった。


その空間はまるでVIPを接待するときに使いそうなほどエレガントな家具があつらえられており、淡い桃色で統一されたその部屋はまるでベッドで美しく目を閉じる少女のためにあるといっても過言ではなさそうだ。


「この子は?」


驚いた様子で声を小さくさせるサエを無視して葉月は迷うことなく小瓶の中身を少女の上からかけた。


「ちょっ!何してっ」

「彼女の目を覚まさせるために私は戦っているの」


止めようとするサエのことをまるで見えていない様子の葉月はどんどん小瓶の中身を空にしていく。


「これを続けてればいつか・・・いつか目を見てお礼が言えるんだ」


葉月の表情は真面目そのもので、くもりひとつないまっすぐなまなざしはどこか狂気が感じられた。

止めることなくその様子を見ているエルエルの無機質な表情も相まって、空間自体が異様に感じられる。


「あ、誰にも言わないでね?失敗したら厄介らしいから中途半端に止められたら困るし」

「い、言わない言わない!!」


葉月の冷たい瞳に見つめられ、サエは身震いが止まらない体に力を入れ、強く首を横に振った。



施設を出ると、すっかり冷めてしまったポテトをかじりながら無言で地面を踏みしめる。


「あくまで秘密の共有だけ。手伝ってなんて言わないし求めてない。これからも私のやることは変わらないけど、邪魔はしないで。それだけ」

「・・・わかった」



サエは自宅の道場で稽古をしながら頭を巡らせる。


(今までで一番まっすぐな目をしてたな・・・まるで何かに夢中になってる小さな子供のような・・・)



どれくらい時間が経っただろうか。

冷え切った道場の空気が火照った体を包み込む。


「・・・っはぁ・・・・」


サエが道場内に設置された時計を見ればいつの間にか数時間が経過しており、窓の外は闇に包まれている。

その異常なほどの漆黒がサエをじっと見つめている。


「・・・?なんだろ」


サエは好奇心に勝てず、道場の出入り口の戸に手をかけた。


「!?」



扉がミシミシと音を立てて砕け散る。

木製の扉は掛江らになって漆黒に飲み込まれ、跡形もなくなってしまう。

漆黒は入り口の備品をすっかりのみ込むと、サエの体に覆いかぶさった。



(なにこれ?なんだか・・・温かい・・・)



サエは暗闇のゆりかごに包まれながら、その温かさに心地よさそうな様子で目を閉じた。






サエは自宅のベッドで目を覚ました。


「おはよう、サエ。この前のテストで七割も点数とれたんだって?」


サエは朝食の席で母親に話しかけられるとびくりと肩を震わせた。


「ごっごめんなさ・・・」

「平均より取れててすごいじゃない!さすが私の娘ね!」

「へ!?」


サエは素っ頓狂な声を上げ母親を見ると、まるで無害そうな表情でサエに笑いかけた。


「どうしたの?ほーら、お父さんもそろそろ弟子たちが道場に集まるんだから急いで食べちゃって!」


父親も穏やかな様子で朝食を食べている。


「・・・」


サエは普段の様子とはまるで真逆な様子に恐ろしくなり慌てて食事を済ませると部屋にこもった。


サエは今までの記憶を思い起こす。

「できなくてみっともない」と言いながら武道と勉強の両立を強要し、まだ中学生のサエに基準に対して痩せすぎなほどの体重や美しい容姿を求めた。

痩せろと言っておいて、栄養の偏った量だけ少ない食事を出す、理想だけ高い娘を人形扱いしているような母親。

武道の師範として数多い弟子を抱え、乱暴な言動を家族にぶつける体の大きな父親。


そんな変な家族だからか、兄は高校に進学すると同時に高校の寮へ逃げるように家を出て行った。


それが目の前で繰り広げられる平和な、サエがあこがれていた「普通の穏やかな家族」に代わっているのだ。

出て行ったはずの兄も家から高校に通っているようで、食器はきちんと四人分、流しに置いてある。


「・・・ふふ」


サエは慣れないながらもその日常がとてつもなくうれしく感じ、口角が少しだけ上がっていた。




「ずっと・・・ずっとこんな日常が続けばいいのにな」




窓の外は静止画のように静かで、まるで絵本のように晴れ渡っていた。


鳥の声ひとつ聞こえないほどに平和で静かな空間がサエの肌を心地よく包み込んでいった。


布団の中で、胎児のように眠るサエの表情はとても穏やかで、小さな子供が安全な場所を見つけたときのようだった。

~エルエルの魔法少女解説~


こんにちはエル!ぼくは魔法少女の相棒をしているエルエルだエル!

今日は始まりの魔法少女、チェリーについて解説するエル!!

魔法少女チェリーは、ルビーのはめ込まれた懐中時計で変身するエル!真っ赤な衣装に身を包み、敵を一人で倒していたレジェンド魔法少女エル!

魔法少女保護法を作るために、魔法少女を卒業してすぐ出馬して、新たな政党を立ち上げたエル!

今でもたまにテレビにも出演しているエルね~。

当時は史上最年少での出馬だったけれど、魔法少女を卒業する直前に魔法少女チェリーの正体を生放送の場でさらして一気に知名度を上げたおかげで、19歳で議員になることができたエル!

本名は佐倉ちえり。彼女のおかげで今の魔法少女の給与形態や様々な基準ができて、研究も一気に進んだエル。

今ある魔法少女保護法をはじめとした、魔法少女に関する法律や法令はみーんな彼女が作ったんだエルよ!!人間の中でも本当にすごい、ストロベリースフレと並んで尊敬すべき人間エル!

魔法少女になると魔力に触れた影響で体の衰えに遅れが生じるから、40歳になった今でも10歳以上若く見えるみたいエル!エルエルには人間の美醜や容姿、年齢の価値観が全く理解できないから、その素晴らしさはわからないけれど、人間にとってはすごいことらしいエル!

日本人はもともと幼く見えるみたいだし、元魔法少女と普通の人間の見分けはあんまりつかないエルね。

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