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レッツチャレンジ

『最近は推し魔法少女のコスプレを楽しむファン、まほ友のイベントが増えてきました』


電気屋のテレビからは楽しそうな声が聞こえてくる。


『あなたの推し魔法少女は誰ですか?』

『やっぱりパチットキャンディちゃんかな!あんまり同担いないけど、頑張ってる姿に私も元気づけられるんです!!』

『それがしはやはり、マジカルメロディのリリートーン様ですかな。前衛のお二人を一馬力でサポートするその真摯な姿と、誰にも汚すことは許されないその神聖なお姿こそ至高!!・・・あ、もちろん箱推しではありますよ?あの三人は三人だからこその魅力が・・・』


葉月はテレビの前で立ち止まる。


『そちらは誰のコスプレですか?』

『ショコラミントちゃんとソルトエースちゃんの併せでーす!!この二人同じところで活動してるのに共闘を見たことが無いんだけど、ぜひ共闘してるところが見たくて~』


葉月の持つペットボトルが音を立ててひしゃげ手を濡らした。


「なにこれ・・・」







「あーそれね。最近増えてるよ」


サエはラッキードナルドのナゲットを一つ、口に放り投げながら答えた。


「ほぼ全都道府県に魔法少女が所属してるからね。ブイチューバ―みたいに無限に増えてるし無限に消えてるからかな。しかも実際に【その姿】で会える可能性も高いっていう・・・」

「・・・確かに」


葉月はシェイクをかきまぜながら頭を悩ませた。


「それにしても私たちの併せコスか・・・見てみたいな」

「は?本気?」


サエの言葉に葉月は思わず食べようとしたポテトをスカートの上でバウンドさせた。


「コスプレっていうていでイベント行かない?」


サエは葉月の手を取りキラキラした瞳で見つめる。


「・・・うぅ・・・」






快晴のまぶしい光の下、ソルトエースの声が響き渡る。


「きたー!!!!まほ友イベント!!!」


「はぁ・・・」


ショコラミントの消え入りそうな声は雑踏に消え、二人の前には早々に人だかりができた。


「再現度がすごく高いレイヤーがいるらしいぞ」


どこからかそんな声が聞こえてくる。


カメラのフラッシュに照らされ、ショコラミントは不機嫌そうに目を細める。

しかしそれすらも解釈一致なのか、人だかりはよりいっそう盛り上がった。


「更衣室が個室でよかったね」


ソルトエースがショコラミントに耳打ちすると、一部男性カメラマンから歓声が上がる。


「離れて」


ショコラミントがソルトエースの顔を手で押すと、ソルトエースが不服そうにほほをふくらませる。

二人のやり取りを見てフラッシュの数が増える。


「あ、あの!一緒に撮っていいですか!?」


おそらく他県の魔法少女のコスプレをしているのだろう、かわいらしい衣装の女の子に話しかけられる。


「私『石英の煮つけ』って言います!良ければSNS出フォローさせてください!!」

「え、あ、えと」


「石英の煮つけ」と名乗った少女の前のめりな様子に若干引いている書、御ラミンとヲ押しのけ、ソルトエースがとっさにスマホを取り出した。


「二人で共同アカウントしかないんですけどいいですか?」


ソルトエースの端末には一つのアカウントが表示されており、石英の煮つけとともにショコラミントがそれを覗き込むと、そこには『ツイン☆ジェラート』というアカウントが表示されている。


「確かにお二人のコスしてるショコラミントちゃんもソルトエースちゃんも名前がアイスにありそうですもんね!それぞれのお名前も知りたいです~!」


石英の煮つけは目をキラキラさせている。


「え、と・・・はぁぶです」


ショコラミントがとっさに名乗ると、ソルトエースもにっこり笑ってつづけた。


「Iラブしおで~す!」


「わぁ!可愛い名前!!私酔った勢いで付けた名前でフォロワー増えちゃったから変えられなくて~」

「え、成人済みですか」


石英の煮つけの言葉に驚いてショコラミントが聞き返すと、嬉しそうにその場を回りながら石英の煮つけは飛び切りの笑顔を見せた。


「そうだよ!若く見えるってことだよね!やったー!!!!」

「驚きだね・・・」


三人が話している間にも周りの人だかりは増えていく。


「石英氏!!!こんなところに・・・ややっ!その姿は最近沖縄で人気急上昇している魔法少女

なーちりー様では!!!!」


人だかりの中から小太りの青年が話しかけてくると、石英の煮つけは大きな声で返事をして手を振った。


「鯖缶さん!夏コミぶり~!新作お披露目しに来た所存!!」


鯖缶と呼ばれた青年は汗を無地のハンカチでぬぐうと、ショコラミント達に綺麗な礼をした。


「おっと失敬、新しいレイヤー様ですかな。最近よく様々なメディアで見るラインナップ!!!お目が高いですなぁ~」

「はぁぶちゃんとIラブしおちゃんだって!たぶん初コスだから優しくしてあげてね!」

「ほほう、確かにお若い・・・それがしは鯖缶ジャムと申しますぞ。最推しはリリートーン様、全ての魔法少女を愛し応援するものですぞ!!」


青年は勢いのままに語り始める。

その姿を見てショコラミントは既視感の答えに気が付いた。


「あの・・・この前テレビでインタビューされてませんでした?」


ショコラミントの言葉に鯖缶ジャムははっとすると、ショコラミントに詰め寄る。


「そうなのですよ!リリートン様がセンターを務めるマジカルメロディのすばらしさを全国に伝えることができてうれしさで目から体中の水分を失ってしまうかと思いましたぞ~!!!」


鯖缶ジャムは感動のあまり天を仰ぎ、満足するまで叫ぶと、首から下げたカメラを構えた。


「さて、早速ですがそれがしにも一枚、いいですかな?」





陽が落ちかけ空が橙色に染まる。


結局新人コスプレイヤーの再現度が高いと注目を浴びた二人のアカウントは一日でフォロワーが10万を超え、有名人の仲間入りを果たしてしまったのだった。





「・・・で、サエ、言い訳を聞こうか」


「ごめんなさい」




二人はカラオケボックスの一室に来ていた。

アカウントの概要欄には「ソルトエースとショコラミント限定レイヤ―」の一文だけが書かれている。

今日あげた写真のコメント欄には「if世界の衣装も見てみたいです」「百合っぽい絡みの写真希望」等好き勝手なリクエストが並んでいる。


葉月は目の前で正座するサエににっこりと笑顔を向けた。


「もしかして許されたり・・・」

「しないけど?・・・まああれだけ有名になっちゃったし仕方ないから・・・」


葉月は深い深いため息をついて間を置くと、先ほどよりいい笑顔でさサエに言い放った。


「責任取ってこのアカウントはひとりでちゃんと運用してね?私は一切やらないから。責任も取らないからよろしく~」



葉月は正座したままのサエをそのままにテーブルに千円札を置いて部屋を出て行った。


カラオケボックスの中からは切なそうな歌声が響いていた。

~エルエルの魔法少女解説~


こんにちはエル!ぼくは魔法少女の相棒をしているエルエルだエル!

今日はまほ友について解説するエル!


まほ友とは、魔法少女のことが大好きな人たちの総称エル!

魔法少女を応援する自治組織みたいなのもあって魔法少女を汚す輩に対して少々過激な行動を起こすこともあるみたいだけど、魔法少女を応援するきもちはエルエル達と一緒だと思うエル!

何より魔法少女に守られてばかりではいられないと、クラウドファンディングで集めたお金を魔法少女の支援や制度の改善に活かそうという話も出ているみたいエル!

なんて高尚で素晴らしい考えだエル~!!!僕も見習ってこれからもショコラミントの手助けをしたいエル!

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