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虚偽と信念

【新種のガーゴイルが急増しているためランク表を更新しました】


まほリンクの公式発表欄に大きな見出しが表示された。


動物型と人型の間に植物型、人型と災厄の間に単眼型・憑依型という全部で三種類の分類が追加されていた。全体的に強さは底上げされているらしく、魔法少女になったばかりの新人魔法少女は必ず同じ、もしくは近くの自治体所属先輩魔法少女が一定期間以上同行し戦闘サポートすることが決められたとの表記もある。


「え」


葉月は眉間にしわを寄せチャットアプリを開いた。


『サエ、まほリンク見た?新人教育の要請来たらそっちでテキトーにやっといてね。私やりたくないから』


葉月のメッセージに既読が付いてすぐ、驚いたキャラクターのスタンプが送り返されてきた。


『え!?なんで!?一緒にやろうよ!』

『忙しいから無理』

『もう!!仕方ないな!!後で何かおごってよね!』


葉月は面倒くさそうにため息をついて、チャットアプリを閉じるとまほリンクの支援要請掲示板を眺める。もう近くの自治体の要請はほとんどなく、一番近いのは隣の県の県境にある小さな村だ。公共交通機関が通っておらず、車でも数時間かかる距離だ。

魔法少女に変身してしまえば負担は少ないが、それなりの距離となると絶対どこかで目立ってしまう。


「どうするか・・・お小遣いもそんなにないし」


そんな中、その町の支援要請詳細に葉月の目が留まった。


「・・・超大型ガーゴイル三体の討伐?」







「おお、本当に来てくれるとは!!」


作業着姿の老紳士が嬉しそうに声を上げた。


「魔法少女ショコラミントともうします。対象を排除したらすぐ帰る予定なのでまずはガーゴイルの出現場所を・・・」

「あぁ、それなら資料が全部公民館にあるからまずはついてきてくれるかい?椅子にでも座ってしっかり情報共有させてくれ」



ショコラミントは求められた握手に応じながら淡々と言葉をつづけた。


「わかりました。とりあえず超大型ガーゴイルとやらの具体的な特徴を教えてくれますか?また聞きのものでもいいので」

「焦らない焦らない。それも公民館でまとめて説明させてもらうから」


ショコラミントはその笑顔の不自然さに首を傾げつつもその背中についていった。


「ここに座って待っててね。この町は気温が寒いからお茶でも飲んでくつろいでいてくれ。今資料持ってくるからね」


老紳士が部屋を出てすぐに、ショコラミントは出された紅茶のカップを持ち上げ真っ先に香りを確認した。

母親が集めている紅茶のようなかぐわしい香りはなく、かといって市販のティーバッグの紅茶特有の香りも無し。砂糖もまるで粉薬のようにサラサラだ。


見回せばあからさまなカメラこそないものの、不自然なほど部屋のあちこちにペン立てやぬいぐるみが置かれている。


「・・・」


ショコラミントはカップを持ち立ち上がると、そのまま部屋を歩き回った。

流し台はないが窓がある。窓の外に人影はなく、虫の声だけが聞こえてくる。


「・・・ねえエルエル、これあげる」


ショコラミントのリボンにあしらわれたサファイヤからエルエルが勢いよく飛び出してくる。


「本当にいいエル!?」

「うん。おいしかったらお代わりもあるよ。全部飲んでいいから」

「やったエル!!」

「声大きい」


エルエルはおいしそうにカップの中身を一気に飲み干すと、そのままティーポットの二の隙間から中に入り込み、中に入っていたお茶をすべて飲み干してしまった。


「・・・」

「?どうしたエル?」

「まあいいか」



エルエルがキョトンとした次の瞬間、部屋の扉が開いた。



「そろそろ眠っただろうか」

「でもこんなやり方・・・いいんですかね、村長?」

「仕方ないだろう?僕もこんなことしたくないんだ」

「仕方ないんですかねぇ・・・あっ」


二人の男とショコラミントの視線がつながる。

ひとりはショコラミントを案内した作業着姿の老紳士、もう一人は二十代そこそこの若い男だ。


「なぜだ、魔法少女にはやはり市販の薬は効かないのか・・・!?」


老紳士は落胆した様子で立ちすくんでいる。

ショコラミントはソファの上で呑気に寝こけているエルエルをちらりと見やってから、冷たい視線を男たちに向けた。

その視線の鋭さに男たちは一時たじろいだが、あくまで年端もいかない女子供だとたかをくくっているのか素手でショコラミントに襲い掛かった。


「おじさんたち、さすがにあやしすぎますよ」


ショコラミントは二人を魔法の糸であっという間に体と口を拘束すると、県の役所にそのまま連れて行った。

呑気に幸せそうな寝息を立てているエルエルはショコラミントがわしづかみしてサファイヤの中に無理やりねじ込んだ。






「これ、心当たりありますよね?」



激しい移動のせいで気絶している二人の男を床に投げ捨てると、それを見た県知事は顔を青くさせ声を震わせた。


「ここっこことあたり!?」


「虚偽の支援要請は魔法少女保護法で犯罪扱いになると思うんですよ。確かそれを共用、あっせんしてもアウトだったと思うんです」

「そ、そうだな。それでなぜ僕のところに?」


知事は滝のように流れ続ける汗をハンカチで一生懸命拭きながらショコラミントに笑いかける。


「一応公民館で私が通された部屋の中にあった不自然な備品の現物と配置図、写真を持ってきています。このペンは県のマークがついているし、作業机の中から県の重要書類や秘匿文書を入れるのに使う封筒も見つかっています。・・・中身は空でしたが、あて名は村長さんです。もしかしたら指紋も残っているかもしれないですね」


ショコラミントが男たちの横に投げ捨てたゴミ袋の中にはぬいぐるみやペン、テーブルタップなど様々なアイテムが乱雑に詰め込まれている。


「・・・」

「どうすればいいかわかりますか?」

「・・・」

「ちなみに明日、動画配信にゲストとして呼ばれています」


県知事はそこまで聞くと青い顔をそのままに震える声を出した。


「・・・わかった。村の者たちには公的に聞きとり調査を実施、現時点の現行犯である二人は法にのっとり終身刑にする」


「ンー!!!」

「ンーンー!!」


床に転がっている二人はいつの間にか目を覚ましていたのかその言葉を聞いて激しく暴れたが、ショコラミントも県知事も二人のことは見向きもしない。

そうこうしているうちに妖精を連れた黒服の男たちが部屋に入ってくると、二人は抵抗もむなしくそのまま部屋の外に運び出されていった。


「次はないですよ」


ショコラミントが冷たい視線を外に向け、迷うことなく窓から外に飛び出していく。

その後姿を見て県知事は握りしめた手に強く力を入れた。






ショコラミントは屋根の上を走りながら、今にも泣きだしてしまいそうな表情で悔しそうに歯を食いしばる。


「ほんっとうに胸糞悪い」


前髪が風にあおられる、隠れた片目が少しだけ外に曝される。


その瞳は希望と勇気に輝いている反対側の瞳とは違って、光のない深い色が支配しているのだった。

~エルエルの魔法少女解説~


こんにちはエル!ぼくは魔法少女の相棒をしているエルエルだエル!

今日は魔法少女たちのキラキラした目について解説するエル!

魔法少女の瞳は正義に輝いているエル!みんなすっごくキラキラエル!

この目は正義の象徴でもあるけれど、彼女たちの身バレ防止の役割もあるんだエル!


変身すると、魔法少女はみんな例外なくこの瞳になるけれど、羨みの灯を使ったり正式な方法で変身していない子はこのキラキラ名瞳にならないんだエル。


え?ショコラミントはって・・・?何言ってるエルか?ちゃーんと輝いてるのはみんな見ての通りエル!!片目が前髪で隠れてるのは何でかわかんないエルけど、別にそんなに気にするものエルか?

エルエル、難しいことはわからないエル~!

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