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ジュジュと不思議な日記帳 ひたすら階段のぼります  作者: ななこ


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再生

 ジュジュ達は水の国で底をついた魔力の回復をさせてもらった。美味しい水とお風呂。ミウが色々と世話を焼いてくれる。アオイも嬉しそうだ。


 ミナトは城の上にある尖塔にこもり、ものすごい魔力を放っている。水の国はこのまま水中にとどまるが、入り口である湖のある島をつなげなくてはならない。空気も水もビリビリと震え耳鳴りがする。城の外へは出てはいけないと言われ、虹が見られないとノリカは残念そうだが、いつでも遊びにいらっしゃいとミウが言ってくれた。


「ようやくつながったよ」


 広間に戻ったミナトがやっと解放されたと椅子に座ろうとしたが、急に顔を強ばらせ窓を水で塞いでしまった。


「お父様ったら。お迎えが来たわ。みんなで太古の森へ行ってみましょう」


 ミウが窓に手をかざし開け放すと、火竜となったハクトがいた。


「火竜! 次にミウに何かあったら、水中深く沈めて、溺れさせてやるからな」

「ミナト様、もうお叱りは十分受けたはず。わたしとてミウやアオイにもう危険な目に遭わせたくない。だからもう2人をお返しください」

「お父様、これからはすぐに会いに来られますよ。それに火竜などと。そろそろ名をお呼びになったらいかがですか?」


 ミナトは知らんと顔を背けてしまった。ミウに呆れられたミナトは、アオイにここに住まないかと誘って、やんわり断られていた。渋々だが、最後は手を振って見送ってくれた。


 ミウとウタネはハクトに。ジュジュはブラックと一緒にアオイに乗せてもらい、太古の森を目指す。眼下に広がるとてつもなく広い地。本当につながったんだ。


 もうどこにも大樹が見えない。胸が高鳴る。


 森に降り立つと、金茶の髪に榛色の瞳の母ミノリと、黒檀のような黒髪、常盤色の瞳の父イブキが寄り添って立っていた。ジュジュを見つけ微笑む。


「ジュジュを本当にこの腕に抱ける日が来るとは。夢のようだわ」

「よくがんばったね。もう大樹の役目は終わった。これからはいつでもこうして会える」

「お父さんお母さん、とても会いたかった。生んでくれてありがとう。助けてくれてありがとう」


 ジュジュは母の胸に顔を埋めた。妻と娘を父が抱きしめる。


「さぁ次は森人の家に行って来なさい。あの者達もジュジュの帰りを待っている」

「でも姿が変わってしまって、何と言えばいいかしら」

「心配はいらないよ。これを使いなさい」


 父から差し出されたのは櫛。これで髪をとかせば人の姿に戻れるという。


「ジュジュ、約束通り僕が風に乗せて連れて行くよ」

「青の火竜。森人の家は近い。歩いても行けるが?」

「イブキ様。ハクト様やミウが来ていますよ。再会を祝いませんか」


 ミノリがちらっとジュジュとアオイに今のうちにと目で合図してくれた。ミウ様もノリカも笑っている。2人は手をつなぎ、ふわっと飛んで行った。


 赤い実のなる木が見えた。小さな家の煙突に煙が立ち上り、パンの焼けるいい匂いがする。ちょうど仕事から昼休憩に戻る父の姿が見えた。


「お父さん!」

「かっ! 母さん! すぐに来てくれ! ジュジュが戻ってきたぞ」


 扉からお母さんが飛び出してくる。ジュジュの姿を見て泣き出してしまった。


「心配かけてごめんね。お父さんが無事で良かった…。お母さん、ずっと会いたかった」

「いいんだよ。元気にしていたのかい? ジュジュがこうして戻って来てくれただけで嬉しい」

「そうだよ。怪我はないか? 大樹様がいなくなってジュジュ達魔女見習いがどうなったか心配していたよ」

「うん。大丈夫。どこも怪我はないよ」


 ちょうどパンが焼き上がるよ。一緒に食べよう。親子3人は家の中に入っていった。


 森人に火の精霊であるアオイは見えなかった。次はきちんと紹介するね。そうすればきっと見えるよ。アオイもご両親に挨拶したいからまた来るよと風に乗って去って行った。


 ジュジュには階段での出来事が話せなかった。でも森人である父も母も無理に聞かないで、無事な姿を見ただけで十分だと言ってくれた。苦しいことも泣きたい日もあったがこうして安らげる家がある。ジュジュは久しぶりに熟睡した。


 アオイはドワーフの家を訪ねた。地下にあるドワーフの国は星の谷の近くにあった。


 バチン! 家に入るとアオイはお母さんに思い切り叩かれた。


「魔女を倒すためにジュジュちゃん達と旅してたって? 母さんに内緒で! もし坊やに何かあったら、何も知らない母さんはどうしたらいいの!」


 ドワーフ父さんも一緒に叱られてくれた。自分よりも背の高くなった息子をお母さんはまだ坊やと呼ぶ。アオイはごめんとありがとうを繰り返した。


 次に危ないことをするときは必ず母さんに最初に言いなさいと約束させられた。そしてたくさんお食べとダイヤモンドを山盛り用意された。強くて優しい父さんと母さん。魔女には困らされたが、この夫婦の子になれて幸せだとアオイは心から思った。


「これは水の国から」


 ミウからの感謝の気持ちだと、汲んでも汲んでも減らない水瓶が贈られた。


 異界が戻ってもやることはたくさんある。太古の森を囲むよう広がる荒れ地。石のように堅くなってしまった地面。あちこちに転がる大岩。他には何もない。


 アオイは地面に手をつき友の名を呼ぶ。


「巨人の叶夢(トム)! 巨人達の力を貸して欲しい」

「青生だね。少し待っていて」


 しばらくすると巨人達が現れた。ノリカに頼んで風精霊に迎えに行ってもらった。


「ノリカの頼みとはいえ、重たい巨人を運ぶのは骨が折れる。帰りはしばらく休んでからにしてくれ」


 火竜になったアオイを軽々と運んだハヤテでも大変だったらしい。他の風精霊もノリカの配るミノリの蜜をごくごく飲んでいる。


「風達よ。帰りはゆっくり歩いて帰るから心配はない。ありがとう」


 巨人が歩くのも大変だと思うけど。とりあえずこの地を再生してから考えよう。


「ここを踏んで再生して欲しい。大昔は緑でいっぱいだったんだ」

「ここまで地力の枯渇した大地は初めて見るよ」


 少し巨人達で相談してみると言う。何か良い方法があるのだろうか。


「アオイ。僕たちは地中にある魔力をずっと取り込んできた。ここですべてを地中に返すことに決めた。魔力と言っても地力を戻すだけだ。ただそうすると僕たちは巨人ではなくなる」

「それはトム達が消えてしまうってこと? そんなことは頼めない。違う方法を考えるよ」

「アオイ。違うよ。消えはしない。ただ体が人に近いものになるんだ。巨人ではなくなるってことさ」

「巨人達はそれでいいの?」

「いいさ。魔力回復は日の光だけで十分になるし、もう誰も驚かさずにすむ。それに1人で暮らさなくてもよくなる。良いことだらけだよ」


 アオイの隣で心配そうに話を聞いていたノリカもほっとした様子だ。


「地力が戻ったら種をまくね。そうしたら水の精霊達は雨をお願いします」


 水の国で知り合った精霊達をジュジュは助っ人に呼んでいた。ミウはミナトとハクトが取り合って呼ぶことができなかった。


 トムがアオイにひとつお願いがあるという。それは今までずっと孤独にひっそりと暮らしていた巨人達が夢見ていた、仲間同士で思い切り遊ぶこと。今この地には踏み潰すものは何もない。思い切り駆け回ってみたいと言うのだ。


「楽しそうだ。僕も仲間に入れて欲しい」


 アオイは魔力を込めて火竜になる。よーいドンで、アオイと巨人達が走り出した。ドスンドスンと地面が揺れても誰も驚かない。踏みつけた後は地面が柔らかくなっていく。女性の巨人達も輪になって踊り出した。大きな岩はボールのように投げられ砕ける。ブラックも泥だらけになって遊んでいる。きれいな白いウロコはまたブラックになってしまった。あとでお風呂に入れなきゃ。


「みんな楽しそうだね」

「仲間には入れないけどね」


 ジュジュと水の精霊達はノリカの風に乗り、上から巨人達の楽しげな声を聞いていた。


「疲れたーー」

「楽しかったな」


 大の字で倒れ込むアオイと元巨人達。もう頭に鳥の巣は乗せられないけど、ノリカはトムを訪ねて遊びに行こうと思う。


 ジュジュは太古の森で集めた色々な種をまいた。魔女に倒された魔樹も挿し木した。優しい雨が降る。荒れ果てた大地が蘇るが待ち遠しい。

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