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ジュジュと不思議な日記帳 ひたすら階段のぼります  作者: ななこ


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20/35

それぞれの探し物

 次の階でジュジュに呼ばれるまで、何かできないか探していたアオイは「魔女を倒したい」とつい父の前で口を滑らせてしまった。ノリカが「もう! 止められたらどうするの」と怒っているが仕方がない。


 こうなったら父とソウセキお爺ちゃん(そう呼べとしつこく言われた!)に相談にのってもらう。母には内緒にしてと固く約束させた。


「なんだ、坊やは口から火を噴きたいのか? ならあそこはどうだろう」


 さすが火竜の子だ、だがド根性はわしに似たに違いないと笑う。石の国の洞窟で毎日ソウセキお爺ちゃんと酒を飲み比べしているドワーフ父さんおすすめの場所があるようだ。


「あそこか…。よし! 鍵を貸してやろう。ヒック…」

「行ってもいいの!?」

「すぐ帰ってきなさい。土産話を待っておるぞ」


 石の精霊王に子はいない。どこかで魔力の多い石が生れれば次の精霊王になる。ドワーフ夫婦が羨ましいし、アオイやノリカが可愛くて仕方がない。ジュジュにも早く戻るように呼びかけろとまで言われる。外に出たくても鍵を隠してしまうので困っていた。


 酔ってご機嫌な2人の気が変わらないうちに行こうと、壁に鍵を押し当てる。


 アオイとノリカが壁を抜けると、もうもうと湯気だらけの場所に立っていた。足場は固い石がゴロゴロしている。


「ここどこ?」

「アオイ…ここすごく危険かもーーーー!!」

「ウワッーーーー!!」


 エイッとノリカがアオイを宙に引っ張り上げた。


 2人が立っていたすぐ脇から、ブシューーと熱い水柱が噴き出てきた。しばらくすると静かになったが、アオイは口を空けたままだ。


「助かったーー! 危機一髪だったね。何が起きたのかな?」

「ここは火山地帯だよ。地面の下にものすごく熱い、想像もつかないくらい熱いドロドロがあってね。ドッカーーンって爆発すると大変なことになるんだって」


 手振り身振りでノリカが教えてくれる。先ほどの水柱は間欠泉。地下水が温められて、蒸気となって噴出してくるらしい。やかんの大きいの想像してみてと言われて、幼い頃ドワーフ母さんに火傷するから触るなと言われた湯気を思いだしたが、あれの何万倍だろう。それ以上だ。とにかく驚いた!


「あっちもだ!」


 よく見ればあちこちから噴き出してくる。ジュジュが知らずに飛び込んでこないといいけど!


「そのドロドロを食べればいいのかな。火傷じゃすまないよね……」

「いくら火の精霊でも無理だよ」

「他に何かないかな…。このゴツゴツした石は何だろう?」

「ちょっと待って……」


 ノリカがあたりを見回すと、いたいたと近くにいた風妖精を呼んだ。


「呼び止めてごめんね。このゴツゴツした石が何か知っているかな?」

「精霊様こんにちは! それはね、熱いドロドロが冷えて固まったものだよ」

「ありがとう。お礼にいいものあげるわね」


 ノリカはジュジュにもらった花びらに包まれた蜜を妖精に渡した。


 持ち運べるようにお弁当みたいに蜜を包んだのとジュジュから渡された時、始めての『お弁当』にノリカはすごく喜んでいた。畑で人が美味しそうに食べているのが羨ましかったそうだ。風妖精もこんなの初めてもらったと嬉しそうに離れて行った。


「これなら平気。試しに食べてみるよ」


 アオイがひとつ拾い上げて口に入れると、ぼりぼりとかみ砕く。魔力をほんの少し込めてふーーと息を吐くと、小さな火がぼっと出て来てすぐに消えた。魔女に見つかるのでこれ以上の魔力は使えない。


「やったね! あとはゆっくり洞窟で食べなよ」


 イエーイと手を叩き合った2人はゴツゴツ石を袋いっぱいに集め、鍵を使って洞窟へ戻った。



 ジュジュは扉の前で、2人の名を呼んだが、うんともすんとも返事がない。おかしいなー。ブラックは扉をガリガリと爪で引っ掻くから入りたいのかな。日記帳から声はしないけど、いいよね。


「行ってみようか」


 扉が開くと、白い森の中だった。整然と並んだ淡い黄緑色の花をつけた木々の樹皮はよく見ると、白や緑、褐色と斑だった。神秘的な、秘密の場所のような。ここにも人の気配はない。


「夢の中じゃないね。少し探検に歩いてみよう」

「きゅいん」


 しばらく木々の間を歩いていると湖が見えた。ブラックは立ち止り、きゅいんと鳴くと、前脚でジュジュを前に押し出す。この先は1人で行きなさい。そう言っているようだ。


 ジュジュが不安に思いながらも湖のほとりまでやって来ると、そこには水浴びをしている1頭の白馬がいた。後ろ姿だがなんて綺麗なんだろう。水を弾く毛がキラキラ輝いている。仲間はいないのかしら。よく見ようと近づいてみた。


「あれ? 馬? 違う! 角があるわ!」


 気配を感じたのか、それはゆっくりとジュジュの方へ頭を向けた。額には角がある。水浴びをやめて岸に上がって来た。


「邪魔するつもりはなかったの。でも急に近づいてごめんなさい。私は木の精霊ジュジュです。あなたは?」


『木の精霊がなぜここへ来た? 用がないならお帰り』


 頭の中に直接返事が聞こえた。頭の中をのぞかれたように感じる。


『我らは長い間他の種族と話をしていない。不快に思ったのなら謝ろう』

「少し驚いただけです。もしかしてユニコーンですか?」

『人はそう呼ぶな。精霊でも魔物でもない我らは聖獣とも呼ばれている』

「あの…。あなたのその折れている角は痛くはないの?」


 ユニコーンの角は途中でぽっきり折られたかのように先がない。折れた箇所が黒く変色していたので、ジュジュには痛そうに見えた。


『痛くはないが、これのおかげで仲間からも離れて暮らす羽目になった』

「仲間と離れるのは辛いね」


 優しい子だとユニコーンは少し頭を下げて角をよく見えるようにしてくれた。気位の高いユニコーンが最も大切に自慢している角が折れたなら、群れからはじき出されてしまう。ましてや黒い魔力で穢されているのでなおさらだ。


 ジュジュはつい角を触ってしまった。ブルブルっと体を震わせユニコーンは後ずさる。


「ごめんなさい! 許しも得ずに触ってしまった!」

『いや。驚いたが…なんて言えばよいのだろうか…。もう1度触ってみてくれないか』

「こうかな」


 ジュジュはそっと黒くなった切り口に触ると、不思議と先ほどより色が薄くなった。もっと薄くなーれと呟きながら魔力を込めてみると、真っ白に輝きだす。持っていた手鏡をユニコーンに向けて、綺麗になった角を見せると、大切な角が戻ったと大喜びだ。穢れが無くなればまた伸びると言う。


『すごい! ありがとう。ジュジュは恩人だ! 浄化の魔力を使ったのかい?』

「そうなのかな。自分に何ができるのか知らないの。最近人でなく木の精霊だって知ったくらいなのよ。魔力だって全然少ないの」


 ジュジュは大樹の階段を上り始めてからの話をした。少し長くなったが、ユニコーンは黙って聞いてくれた。


『異界からの魔女か。この角は前に落ちて来た魔物に折られたんだよ』


 その時は羽の生えた鳥型の魔物がこの白い森にもやってきて、草木を枯らせ、湖を汚し、ユニコーンの群れを襲ってきた。まだ幼かったユニコーンは逃げ遅れ角を折られた。咄嗟に母が魔物を蹴り飛ばしてくれなかったら命を落とすところだったが、その母は魔物の餌食となってしまった。


「それからずっとひとりぼっちだったの?」

『もう慣れたさ』


 同族以外で、もし関わるとすれば気に入った乙女のみ。それも稀なことだ。隔絶された島に渡る人もいない。精霊たちが訪れても長くは留まらないし、ユニコーンも姿を見せない。


「また会いに来てもいいかしら?」

「大歓迎だ。友達になってくれるかい?」

「もちろんよ! 次は風精霊のノリカも連れてくるわ。男の子はダメなんだよね」

「ジュジュの友達ならいいさ」


 もう行くねとユニコーンの首に腕を回し抱きしめる。


『その魔女は大蛇が化けているなら、これをジュジュにあげよう』


 それは折られた角の先。木の洞に隠してあった。まだ輝きを失わない角にはユンコーンの魔力が宿る。その力は蛇の毒と水の浄化。水浴びも遊びではなく浄化をしていたそうだ。もし魔女が本体を現したら毒を浴びる前に角を刺すといい。魔物にどこまで効くかわからないが、弱毒化はできる。


「ありがとう。必ず倒してみせるわ」

『僕はトオマ。永馬だよ。さあ森の出口まで送ろう。背にお乗り』


 ジュジュはお言葉に甘えてと背に乗せてもらう。ゆっくりと歩くトウマとおしゃべりしながら森を散歩した。出口に近づくとトオマが立ち止る。この先に火竜の匂いがする。会いたくないから、ここまでと言って森へ帰って行った。


「ありがとう! トオマ、またね」


 ジュジュはその姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

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