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ジュジュと不思議な日記帳 ひたすら階段のぼります  作者: ななこ


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魔力集め

 魔女は王子だったモノの部屋にいた。今は人型の黒い影しか残っていない。


 子が産まれたことが知れていたので、飾りとしておいていたが、もう要らない。死んでしまったと言えば、人々は同情し憐れむ。当分部屋から出なくても、哀しんでいると誰も疑いはしない。腹の足しにもならない人の相手は面倒この上なかったから丁度いい。


 偽王子が歩けなくなり、口も聞けなくなったのは、忌々しい水精霊の子に力も声も戻ったせいだ。魔力も使えるようになっていたのは誰かが名を教えてしまったから。


 奪ったはずの名がなぜ知れたのだろう。まだ体のどこかに水精霊が潜んでいるのだろうか。全部消し去ったはずなのに。火竜王の名だけは自分にもわからないくらいに封印した。あれを渡すことだけはできない。水精霊の本体は子の中にあるはずだ。子どもごと早く消し去りたい。そのためにももっと魔力が必要だ。


 魂を奪った人の召使いが食事を運んでくる。人の食べ物などいらぬが、正体を誤魔化すために食べたふりをする。この城に魔力もちはもういない。全て名を奪うか呑み尽くした。そろそろ外へ出て補充しなくては。森の大きな木に魔力の入った実がなっていたことを思い出した。


 森に入ろうとすると、結界が邪魔をする。人ならば入れるようだ。実を持ってこさせる者を探さなくてはならない。姿を戻し、じっと茂みに隠れ人が通るのを待っていた。


 大きな荷物を抱えた男が2人。街からの帰りだろう。


「――そうか。ジュジュは魔女見習いになれたのか。それはおめでとう」

「ジュジュは毎日一生懸命に朝露を大樹様へ差し上げていたからな。あの子は本当に素直で忍耐強い。望みがかなって良かったが、家の中が寂しくて仕方がないよーー」


 大樹を知っているのか。よしあの男達にしよう。


「お待ち」


 森人が振り返ると、赤い目玉が目の前に現れた。魂を奪われた2人の意識はなくなり、魔女の操り人形となった。



 ジュジュとアオイ、ノリカは階段を上っていた。次の階にはいつ着くのだろう。もうずいぶんと上がったがたどり着かない。


「足を使ってこんなに歩くなんてないから、もうへとへとよ。少し休ませて」

「僕もちょっと座りたい」


 ノリカがすぐに座り込むので進まない。1度扉の中に戻って、また呼ぶと言っても一緒に行きたい言う。ジュジュもノリカが一緒だと楽しいので、仕方ないなと笑うばかり。


 アオイは風の魔力すら使わないので、体が重いらしい。大樹様がとても硬くてめり込むことはない。でもジュジュが転んでも痛くないから、不思議だ。


「どうぞ」


 赤い実をのりかに渡す。


「生き返るわ。力が湧いてくる。もうひとつちょうだい」


 突然ブラックがきゅいんきゅいんと鳴きだし、落ち着かない様子で走り回った。そして大樹の枝が大きく揺れ、もうひとつ採ろうと手を伸ばしていたジュジュの手にひとつだけ残して、実が全て消えてしまった。


「どうしたのかしら? お母さんの実がなくなってしまった」

「ちょっと様子を見てくるね」


 ノリカは隙間からビューと外へ飛んで行った。


「悪いことが起きたのかしら」

「まだ、決まったわけじゃない。ノリカを待とう」


 胸の前に合わせた手が震える。突然実が消えたので、あれこれ怖いことを想像してしまう。手の中にある最後の実に祈る。どうかこれ以上何も起こらないで欲しい。


 ノリカが戻って来たが、顔が青ざめている。


「大樹様の根元に男の人が2人いたの。腰に下げている籠に実が沢山入っていた」

「人なら前から実を採っていたわ。手の届くところなら大樹様は分けてくれるの」

「それが、梯子を使って手当たり次第採っていて。それにね。2人ともおかしいの。突風で話しかけても返事がないし、表情がなくて、まるで人形のようだった」

「それってもしかして、偽王子みたいに、魔女に何かされたのかな」

「……酷かもしれないけど、1人はジュジュのお父さんだった」

「えっ! まさか、そんな……」


 アオイがジュジュの背を支える。今にも倒れるのではないかと言うくらい真っ青だ。手に持っていた実を落としてしまった。


「もしかして、魔力狙いで実を持ち出そうとしたのかな」

「森には結界があったね。魔女は通れない。人を操って採りに来させたのか」


 アオイは掌を握りしめ、怒りで魔力を暴走させないようにしていた。


「上ろう! 早くお父さんも助けたい」


 泣いていても誰も助からない。ジュジュが一歩踏み出すと落とした実を踏んでしまった。ジュジュがごめんなさいと拾おうとすると、ブラックが潰れた実をペロッと食べてしまった。


「ありがとう。無駄にならずにすんだわ」

「行こう。ジュジュが泣かないんだ。僕たちが止まってはいられない」


 また3人と1匹は上りだした。


「これ見て」とノリカが指さしたところは、ジュジュが踏みつぶした実の跡。

「もしかして同じ階をぐるぐる回ってる?」

「やっぱり上れるのはジュジュだけなのかも」


 扉の前に戻り、2人は中に消えて行った。次の階に着いたらまた呼ぶと約束して。


「ブラックは残ってくれたのね。行こう!」


 ジュジュは1人になっても心細くない。父も母もいる。ブラックも。


 絶対に負けない。森のお父さんも取り戻す。それまで泣かないと心に決めた。

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