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大学の正門の前で晴樹が出てくるのを待っていると、6人くらいの男女の集団がこちらに向かってくるのが見えた。
邪魔にならないところにいよう、そう思い正門の端の方に移動しようとしたとき、楽しそうに話す春樹の声が聞こえた。
私は振り返って春樹!と呼ぼうとしたが、その前に春樹の横を歩いていた茶髪で陽気そうな雰囲気の男性が春樹に話しかけた。
「なあ春樹、お前ってたしか彼女いたよな?なんだっけ、たしか高校で部活が一緒だった静香ちゃん?」
不意にでた自分の名前に私は固まってしまった。え、春樹ってば友達にわたしのこと話してんだ…。胸が少しジーンとなって胸の前で手を握った。春樹はなんて答えるのかな…。
「いや、あいつは彼女じゃないよ。彼女づらされて迷惑してるんだよね。もう1年くらい付きまとわれてる。断ったら何かされるかもしれないし。」
サラっと答えた春樹は風に流れる黒髪を押さえつつ、ため息をついた。
「マジか!あの子ストーカーだったんか!ごめん、春樹の彼女かと思ってたわ!」
「えー、春樹くんストーカーされてるの?こわーい!警察行ったほうがいいんじゃない?」
「絶対行ったほうがいい!何かされたら怖いじゃんね!」
「みんなありがとね。今後どうするかはまた考えるよ。」
春樹たちの会話に私は固まってしまい、その場から動くことができなかった。
そして春樹たちはそんな私に気づくことなく正門から出ていった。