夢見る最高の学園生活
まあキャッキャと騒いでいるけれど実の所は私の入学する学園が、本当に月恋の舞台になるのかはわからない。
この国では16歳から18歳までの3年間で義務教育を受けさせる事、とだけ決められている。そこに身分を分けて学校生活を送らせるという旨は明記されていないのだけれど、貴族と平民では生き方そのものが違うため授業の内容も変わってくる。
そのため学園は貴族な必要な授業を、学校は平民に必要な授業を行うという形に自然と移り変わっていったのだ。だから貴族は少なく平民が多いこの国に学校はいくつもあるけれど、学園というのは一つしかない。
一方ヒロインは平民でありながら、頭脳明晰かつ魔力保持者であることで学園に特待生として入学してくる。
月恋のオープニングでは、ヒロインが学園の門を開くアニメーションから始まり攻略対象達のスチルが流れていく。
そのムービー内で私の推しである第二王子アラン様は学園の三年生である事を示す黒のネクタイを締めた姿で、一年生を意味する赤のリボンをつけたヒロインと何度も登場してきた。
そして、なんと今年4月から第二王子は学園の三年生になるそうだ。この噂がもし本当なら、私はヒロインと同い年で、今日ヒロインもまた学園に入学する。
ということは私の学園在学中に、目の前で壮大な恋愛劇が繰り広げられ良くも悪くも巻き込まれる可能性だってあるかもしれない…!
とかなんとか思っていた私であったが、よく考えると前世で月恋を何度もプレイしてきて、テリシア・シドレーヌなんてキャラクターが出てきた記憶はない。
それはつまり…ただのモブキャラとしてアラン様のご尊顔を拝むことが出来るということなのだ!
前世では同担拒否のガチオタだったけれどリアコではなかった私にとってこのモブキャラポジは最前席の価値と同等…いやむしろそれ以上!
この学園生活でアラン様とお近付きに…なんてそんな大層なことは微塵も望んでいない。推しと同じ空気を吸っているという実感に、推しが生きていることを全身で感じられる…この程よい距離感こそ至高!
…少しはしゃぎすぎた気がする。ただ学園生活に心躍らせている理由はアラン様と会うことだけには限らない。
私より先に学園に入学した二つ上のお兄様、これがもう一つの理由だ。
学園は全寮制で2人1部屋。相部屋の相手は基本的に学園側で決められる事になっている。けれど貴族が多い学園のため、家族は申告制で相部屋を認められる。もれなく私もその例外ではなく…。
つまり今日から優しい私自慢のお兄様との二人暮らしが始まるのである…!
転生してからイケメン兄の良さを知り、すっかりブラコン化している私にとってこれからの生活はあまりにも好条件すぎるのだ。