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転生先の世界

『今宵、貴方と月の恋』、略して月恋。


 プレイヤーがヒロインとなり攻略対象達と恋をしていく…という至ってどこにでもありそうなごくごく普通の乙女ゲーム。けれど世界的に有名なゲーム会社が初めて作った乙女ゲームということで大きな話題を呼んだ。


 そしてリリース開始からすぐに超美麗イラストとミニゲームなどの細かい要素までの作り込みで大ヒット。街中から田舎まで広告が張り巡らされ、ゆー〇ゅーぶの広告だって「月恋しか出てこないじゃん!?」という声が広がるくらいには、月恋のCMばかり。

 日本中で月恋を知らない人はいないんじゃないかと言いきれる程の盛り上がり様を見せていた。


 そんな状況で月恋沼にハマる人達が男女問わず続出。かくいう私も、その内の一人だった。




 月恋には、7人の攻略対象がいる。王国の第二王子スートベル・グラノアラもそのうちの一人。

 ぼーっと眺めてたテレビのCMに突然映ったのは、金髪マッシュに碧く揺れる透き通る瞳のスートベル様。


 そんなスートベル様を見た時に私は、いや杏子は人生で二度目の一目惚れをしてしまったのだ。


 そこからは推しを愛でまくる幸せな毎日。グッズが販売されるとできるだけ沢山お金を積んで、ランダムグッズであればSNSで交換相手を探しまくる。

 イベントがあれば痛バを組んでオタ友と参戦。どれだけ当選倍率の高いライブであっても、死ぬ気でチケットを手に入れた。こんな感じで、前世で死ぬ直前の私は所謂ガチオタだった。


 だからこそ、転生してから早い時期に自分が月恋の世界に転生していることに気がつけた。

 ここが月恋の世界かもしれない、とは産まれた時から思っていた。けれど幼い少女が得られる少ない情報では、どれも判断材料としては決め手に欠ける。


 そんなある日家庭教師から歴史学で、グラノアラ王国の現王族について教わった。そこで第二王子の名前が前世での推しと完全に一致していると気づいた時、疑いは確信に変わったのだ。

 幼い頃から私に家庭教師をつけてまで学ばせてくれた両親には感謝しかない。




 この世界を確かめるためだけに走り回っていた幼い頃を思い出しながら、3つもある鞄の鍵を全て閉じていく。


 「よし…完璧!」


 私の前にある鞄は中にパンパンに荷物が詰め込まれて少し膨れてしまっていた。三つの鍵もしっかりかかっている。


 一人でゆっくりとこれまでの人生を振り返っていたのには理由がある。今日というこの日、私は月恋のヒロインが通う学園に入学するのだ!

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