表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理由  作者: 詩音
7/7

ツミビト(1)

義人:よっ、また来たよ。仁愛にあ

仁愛:ようこそ、義兄よしにぃ。相変わらず、都会からこんな雪国に、足蹴あしげもなく通ってくれるなんて、しぶとい人ね

義人:お前も似たようなもんだろ?

仁愛:そうね……一卵性双生児だから、しょうがないかな

義人:ふう……やっぱり寒いな

仁愛:そりゃあ、そうだよ。ここは山だからね

義人:お前は慣れたのか?

仁愛:まぁ、3年もいれば、慣れるしかないわよね

義人:そっか。あっ、そういえばさ……この前の記事、評判良かったよ。ありがとうな

仁愛:別に、ありのままを伝えただけだから。義兄よしにぃの文章力の賜物たまものだと思うけど

義人:おいおい、そんなに褒めんなよ。かわいい仁愛にあに言われたら……義兄ぃ、調子乗っちゃうぞ

仁愛:ああ、勝手にどうぞ……やっぱり、類は友を呼ぶなんだね

義人:ん?ああ、ライのことか

仁愛:クソめんどくさい人だから、どうにかしてくれない?

義人:クソって言うなよ(軽く笑う)いや、俺よりもお前の方が会いやすいんだから。適当にあしらえばいいんだよ

仁愛:ああいう人、生理的に受け付けないわ

義人:はっはっはっ、仁愛が俺以外のやつのことで口汚くなるの、初めて聞いたよ。じゃあ、今回はその話を、記事にさせていただきますか……刑務所図書館員の今井仁愛さん?

0:間

仁愛:(M)私は抱えていた最後の本を納めて、書庫を出た。年代の古い本が眠っているため、厳重に管理しなければならない。扉を閉めると、三重に鍵をかけた : 

仁愛:柞木ゆずきさん、休んできてください

柞木:仁愛ちゃんこそ休んできて。私はもうちょっとやるから

仁愛:それ、三度目ですよ。せめてご飯食べてきてください。後は私がやりますから

柞木:はいはい、わかったよ。よろしくね、仁愛ちゃん

仁愛:(M)柞木さんが、控え室に入っていったのを確認してから、作業を始めた。

仁愛:(M)どんな作業かというと、本の裏表紙に、ちゃんとブックカードが入っているか、を確認していくというもの。

仁愛:(M)この図書館はニューアーク式という、貸し出し方式がとられている。今では数少ない黄色のブックカードを用いる。

仁愛:(M)私は文字がびっしり書かれたブックカードを見ると、嬉しい気分になる

仁愛:やっぱり本はいいなぁ

0:間

ライ:今日は良い天気だね

仁愛:(M)窓は曇りガラスになっているため、外の様子を知る事はできないはず……また来たのか。

ライ:そう思わないかい、ミスにあ?

仁愛:(無視して)返却ですか、貸し出しですか?

ライ:そうだな……じゃあ、この本を返して君を借りていこうかな

仁愛:(ため息)確か、一〇〇五番でしたね。1枚でよろしいでしょうか

ライ:ありがとう、今日はそうしようかな。マイスイートハニー、いち押しの本を、俺に教えて?

仁愛:さっきからされている発言、冗談を通り越してセクハラです。もう少し、言葉を選んだ方がよろしいと思いますよ、ライさん

ライ:相変わらず冷たいなぁ、仁愛ちゃん。俺は行きつけのかわいいオネェちゃんから、本を借りたいの!

仁愛:(M)意味のないやり取りをしながら、返却されたブックカードを取り出し、返却日の欄に今日の日付を書き加え、裏表紙に入れた。

仁愛:(M)確認し終わった本と一緒にさっきの2冊を持ってカウンターを出る。

ライ:君のオススメの本を借りたいって言っただけじゃないか。そんな風に言わなくてもさ、ね!

仁愛:(M)うだうだ弁解しながら、本棚の迷路の中をくぐり抜けて、ついてくる。手元の本を本棚に戻していくうちに、どんどん近づいてきた……本当にしぶとい人。

仁愛:(M)本をたくさん読んでくれることは有難ありがたいが、暑苦しいほどの、底なしの明るさで、話してくるのは、どうも気にくわない

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ