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理由  作者: 詩音
5/7

始まり(5)

仁愛:そうですか。それにしては、真っ先に外国文学に来るなんて、珍しいですね

榎並:え?

仁愛:しかも、眺めていたのは児童向けの方。子どもはお好きですか?

榎並:し、失礼します!

仁愛:(無視して)白雪姫って、原作のグリム童話と日本の絵本で書かれているものでは、結末が違うんです。いや、原作が残酷すぎて消されたと、いった方が正しいでしょうか

榎並:っ!

仁愛:有名な白雪姫の結末は、『王子様のキスで目覚めた白雪姫は生き返り、そして王子様と結婚し、幸せに暮らしましたとさ』と、ハッピーエンドで終わります

仁愛:しかし、原作には続きが

仁愛:白雪姫に意地悪をしていたのは、実は王妃おうひで、2人の結婚式に呼ばれた王妃は、焼かれた鉄の靴を履かされて、倒れて死ぬまで、踊らされるんです

榎並:な、何が言いたいんですか?

仁愛:白雪姫を例に挙げましたが、昔の外国の児童文学には、子どもがいじめられる物語が、多いですよね

仁愛:でも、現在の日本で、児童虐待や体罰が絶えないと、思いませんか。子ども自身が、助けを求めることが出来ず、命を落としてしまうことがほとんど

仁愛:ただ、虐待を受けている現状を知ってしまったり、その上、子ども自体が助けを求めてきたりしたら……全力で助けたいと思うのが、良心りょうしんだと、私は思います

榎並:……

仁愛:童話つながりで言いますと、ハーメルンの笛吹きが、そうだと思います。

仁愛:笛吹きの男は、子どもを誘拐した悪者ではなく、町中からネズミを払ったのに、大人たちからののしられた悲しい英雄なんだと

榎並:悪者ではなく、英雄……?

仁愛:だから、私はこう思っているんです……正義と悪は紙一重だなって

榎並:正義と悪が紙一重……

仁愛:良かったら、『グリム童話集』借りてみませんか?

榎並:……はい

仁愛:では、カウンターへどうぞ

0:青沢刑務所内の面会室

榎並:あ、こんにちは

義人:作業の後でお疲れのところ、すいません。私、フリージャーナリストの今井と申します

榎並:榎並えなみです。児童5人誘拐事件を起こした凶悪犯です

義人:ご自身をそんな風に紹介されなくても

榎並:いえ、事実ですから。それで、あなたもぼくを叩く記事を書きに、わざわざいらしたのですか?

義人:いいえ、私はあなたが刑務所図書館で借りた本について、聞きたいだけです

榎並:本……ああ、借りましたね。囚人は本を読んではいけませんか?

義人:そんなことは思っておりません……私は、ここで図書館員として働いている女性を取材しておりまして

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