始まり(4)
0:数日後、刑務所図書館『びぶりお』の休憩室
義人:おはよう、仁愛
仁愛:おはよう、義兄ぃ。本当に、またこんなところに来てくれるなんて……暇人なの?
義人:れっきとした仕事だよ。しかも、相手が大切な妹だとくりゃ、精が出るってもんさ
仁愛:そんなんだから、彼女できないんだよ。バカ兄貴
義人:おいおい、痛いとこついてくんなって
仁愛:ふふふ。じゃあ、始めましょうか……ジャーナリストの今井義人さん
0:刑務所図書館『びぶりお』のメイン書庫
義人:(М)ここは刑務所図書館『びぶりお』。
仁愛:(М)私は、ここで働く図書館員。名前は、今井仁愛。
仁愛:(М)双子の兄でもあり、フリージャーナリストの義人から、珍しく真面目に頼まれたから、仕方なく、取材を受け入れることにした。
仁愛:(М)私は、桃杏で生まれ育ち、昔から本と友達だった。だから、大学で図書館司書の資格を取り、公立の図書館に勤めた。
仁愛:(М)ただ、ひょっとしたきっかけで、日本で初めての刑務所図書館に来ることに。
仁愛:(М)優しい先輩方と本棚いっぱいに並んでいる本たち。今までの図書館以上に、設備は良いかもしれない。
仁愛:(М)ただ、利用者が囚人というのが、普通の感覚なら怖いと、思われるかな。
仁愛:(М)でも、私にとっては、囚人も人間だから変わらない……私も、似たようなものだから。
0:間
仁愛:(М)今、私はカウンターで、仕入れたばかりの新刊を読んでいる。
仁愛:(М)製本したばかりの固い本紙をくると、紙とインクの匂いがしてきて、私は本の世界に引き込まれる……私はこの瞬間が一番好き。
榎並:(ため息)
仁愛:(М)館内に響いた男性の声に、本の世界から現実に引き戻される。高い天井を目指すようにそびえたつ、何十架の本棚のどこかにいるはず。
仁愛:(М)私の推測では、たぶん、外国文学かな。
仁愛:どんな本をお探しですか?
榎並:うわぁ!!
仁愛:あっ、驚かせてしまってすみません。とても、悩んでいる溜め息が、聞こえたもので。お探しの本の場所が、わからないのであれば、お手伝いいたします
榎並:あ、いえ……大丈夫です。作業前にちょっと、立ち寄ってみただけですので。ご迷惑をおかけしました
仁愛:(М)私は、足早に立ち去ろうとする男性の手首を見た。3065番と印字された紙の腕輪をしていた。入所時に付けられた腕輪により、監視が出来ているとかなんとか。
仁愛:(М)だから、囚人たちが、他の刑務所よりも自由に出来るし、私たちも守られているらしい。