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理由  作者: 詩音
3/7

始まり(3)

0:刑務所図書館『びぶりお』のメイン書庫

義人:(М)クローバーの庭を歩き、『びぶりお』と名がついた建物の中に入る。すぐ、目に入ったのは、高い天井を目指すように並ぶ本棚。

義人:(М)棚から飛び出すのではないかというくらいみっちりと、本で埋め尽くされている。十架じゅっか以上ある本棚が配置されている。

義人:(М)慣れない俺は自分がどこにいるか、わからなくなりそうだった。でも、試しに、俺の本を探してみることにする。

義人:(М)助け船を求めて、近くにいた図書館員さんに声を掛けることにした。

義人:(М)アシンメトリーの髪型で茶髪の女性は、本のチェックをしているようで、バインダーとにらめっこをしていた。

義人:すみません。今井義人という人の本を、探しているんですけど

仁愛:今井義人の本ですね。ご案内します…!

義人:(М)俺は彼女の顔を見て、びっくりした。彼女も同じように驚いていた。だって、彼女は、俺の双子の妹の仁愛にあだったから。

0:刑務所図書館『びぶりお』の休憩室

仁愛:義兄よしにぃ。来るなら、連絡ぐらいしてよね

義人:(М)俺を、休憩室に入れてくれた仁愛は、少しいじけながら、コーヒーを俺の前に差し出してきた。

義人:(М)ラベンダーの香りが、ほのかにする。こいつ、ラベンダーが大好きだったな。

義人:ごめんごめん。お前がいること、忘れてたよ

仁愛:嘘つき。絶対、確信犯だね

義人:バレたか……しかし、俺の本があるなんて、良い図書館だな。おまけに、お前がいるとなりゃ、たくさんの人が読みに来るだろう

仁愛:どうだか。私はその人が読みたい本を考えて、薦めているだけよ。それに、図書館から本を借りていくほどの本好きは、そんなに囚人にはいないし

仁愛:前が忙しかったぶん、ゆったりできてるから私はいいけどね

義人:そうか、良かった

仁愛:それより、今日はどうしたの?暇で来たようには、見えないけど

義人:刑務所の取材だよ。謎に包まれた刑務所での様子を、記事にしたくてね。所長に会いたかったんだけど、いなくてさ。代わりに、副所長に案内されて、ここに来た

仁愛:なるほどね……そういえば、所長さんに会ったことないかも。もう3年になるのにさ

義人:もう3年か。時が経つのは早いな

0:間

義人:(M)仁愛が、桃杏とうきょうから離れていってから、それくらいになる。それから、俺たちは、会っていなかった。だから、俺がここに来た理由は、もう1つある。

義人:仕事は慣れたか?

仁愛:まぁね。一緒に働いている人が、良い人たちばかりだし

義人:そうか。それなら、1つお願いがあるんだけどな

仁愛:お願い?

義人:お前のことを、記事で書きたい

義人:刑務所図書館員として、どんなことをしているのか、どう囚人と関わっているのか、本とはどういうものだと思うか……世の中の人に伝えたいんだ

仁愛:(かぶせて)嫌よ。他の人にして

義人:俺は小さい頃から、お前を見てきた。昔から本が好きなのも知ってる。一般の図書館で、働いていたお前の状況も知ってる。

義人:だからこそ、今のお前の状況や気持ちを知りたいんだ。前とは違うお前のことを……お前じゃなきゃ駄目なんだ

義人:お前の兄としてではなく、ジャーナリストの今井義人として、お願いします。あなたの……刑務所図書館員、今井仁愛さんの記事を、書かせてください

0:間

仁愛:へぇ、義兄ぃが真面目に頼み込むなんて、珍しくて面白い……いいよ。ただ、1つ条件があるわ

義人:どんな条件でものむよ。何だ?

仁愛:どんな事もありのまま伝えるから、正直に書いてね。楽しいことも、怖いことも

義人:……わかった。ジャーナリストとして、その約束は守るよ。でも、無理だけはするなよ

仁愛:わかってるよ。本当によろしくね、義兄ぃ!

義人:(М)俺には、身体の力はない。だから、俺は、ペンの力で仁愛を守りたい。いや、守ってみせる。

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