始まり(2)
0:数時間後、再び青沢刑務所内の廊下
義人:(М)副所長さんからは穏やかなイメージ。照明は明るく、内装はベージュ色。鳥の声がはっきり聞こえるし。外には花壇があって、数種類の花が咲いていた。
義人:(М)工場では、役割を決められている囚人たちが、黙々と作業をしていた。しかし、指示や相談で言葉を交わす場面も見受けられた。
義人:(М)体育館では、バスケやバドミントンなど、区域で分けられた空間で、スポーツを楽しんでいた。ガッツポーズや晴れやかな笑顔を、見ることが出来た。
義人:(М)だから、記事のネタを集めるために、書いたメモを書きながら、思い返していたら、ふいに口から出てしまった。
義人:囚人は法を犯した罪人だから、刑務所に入っている。しかし、元々は俺と変わらない人間。それで、ここは、その人間の部分を尊重しているのではないかと、わかりました
義人:いやぁ、もっと厳しくて、暗くて、怖いところだと思っていました。やっぱり、百聞は一見に如かずですね
四月朔日:そうですよね。私たちの仕事は1日でも早く更正して、社会復帰出来るようにすること。
四月朔日:その為に、手厚い支援をしていますので。その結果が、出ているのかもしれません
四月朔日:それに、ここをつくったおかげも、あるかと……日本で、初めての刑務所図書館です
義人:(M)副所長さんが示した先には、ログハウスのような建物があった。
義人:おお。なんだか、温かみを感じます。刑務所の敷地内にあるなんて、不思議ですね。一般の図書館に見えます
四月朔日:そうなんです。『本は、人を選ばない。どんな人にとっても、本は味方である』という所長の考え方から、このようにつくられたようです。図書館員も腕の良い人が集まってくれました
義人:へぇ……ん?なんか、私の顔に付いてます?
四月朔日:いえ。では、私はこれで失礼します。ごゆっくりどうぞ
0:刑務所図書館『びぶりお』のメイン書庫
義人:(М)クローバーの庭を歩き、『びぶりお』と名がついた建物の中に入る。すぐ、目に入ったのは、高い天井を目指すように並ぶ本棚。
義人:(М)棚から飛び出すのではないかというくらいみっちりと、本で埋め尽くされている。十架以上ある本棚が配置されている。
義人:(М)慣れない俺は自分がどこにいるか、わからなくなりそうだった。でも、試しに、俺の本を探してみることにする。
義人:(М)助け船を求めて、近くにいた図書館員さんに声を掛けることにした。
義人:(М)アシンメトリーの髪型で茶髪の女性は、本のチェックをしているようで、バインダーとにらめっこをしていた。
義人:すみません。今井義人という人の本を、探しているんですけど
仁愛:今井義人の本ですね。ご案内します…!
義人:(М)俺は彼女の顔を見て、びっくりした。彼女も同じように驚いていた。だって、彼女は、俺の双子の妹の仁愛だったから。