死に際
僕がまだ地球での生を謳歌していた頃、正確には謳歌というほどの人生を送れていてはいなかったかもしれないが、人生を終えるまでの23年間思い出してみても本当になにも面白味のない一生だった。
普通の家庭に産まれ、普通に進学し、普通に就職し、普通に死んだ。
些か早すぎる死であったものの、誰かを助けてトラックに轢かれたわけでもなく、誰かに殺されたわけでもなく、ただのありふれた病だった。
気づいた頃には手遅れで、あれよあれよという間に死んでしまった。
死ぬ間際に思ったのは、本当にモブみたいな人生だったということだった。
回りの人間の引き立て役にすらなれないスポットライトの端にもひっかからない石ころのような人生だった。
死んでもだれかの記憶にすら残らない人生を送ってしまった。
そのことに少しの後悔をした。
いや、激しく後悔をした。
もっとだれかの役にたちたかったしだれかに頼られたかった。
子供の頃に憧れた画面の中のヒーローになりたかった。
モブには文不相応な後悔と願望を胸に死んでしまった。
その念が強すぎたのが良かったのか、悪かったのか、転生してしまった。
この狂った世界に。