表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/51

第7話 リカバリー

「それとってください。」


ボスの膝の上に乗った部下は言う。


「はいはい。」


そう言いながらボスはテーブルの上のクッキーを部下の口元に運ぶ。


部下と魔法少女との激しい戦闘の後、綺麗に片付けられた部屋には甘く優しい時間が流れていた。


サクサクとクッキーを噛み締めながら部下はどこかツンとしている。


「ボスはクッキー好きですか?」


唐突に部下は尋ねる。


「あぁ、もちろん好きだよ。」


ボスは答えた。


「じゃあ、あの魔法少女とクッキーならどっちが好きなんですか?」


「いや、部下様。あれは違うんですよ...。」


この甘く優しい空間では、このようなやりとりがもう何回も行われていた。


ボスは参ったなぁと言う表情で、言葉を絞り出す。


「俺があの子に好きだといったのは、敵を油断させるためであってですね...。」


ふーん、そう言いながら部下は冷めた目でボスを見つめる。


「いや、だから、私が本当に好きなのは部下様なんです。」


これでどうか機嫌を直してくれないだろうか、淡い期待を込めてボスはちらっと部下を見た。


「あの女みたいに、そんな手口じゃ騙されませんよ。」


部下の表情は、若干柔らかくなった。しかし、まだまだ手強かった。


「本当に私の事が好きなら、もっともっと愛を囁けるはずですよね?」


部下は言う。

ボスは気恥ずかしそうに、何度も部下に愛を囁いた。


「えへへ...。」


部下は、照れたように可愛らしい笑顔を浮かべる。ボスは、ほっと胸を撫で下ろす。


「でもねボス。言葉だけじゃ愛って伝わらないと思うんです。」


部下は言葉を続ける。


「だからね、キスして欲しいなって。」


ボスは、高まる心拍数を横目に、努めて冷静にわかりました。と呟いた。


そっと目をつむる部下。

2人の距離が徐々に近づいていく。


秒針の音だけが部屋にこだましていた。


唇が触れるか触れないかのタイミングで、部下は自重を突然後ろに傾けた。


完全に油断していたボスは、そのまま、力の流れる方に倒れる。


側から見るとボスが部下を押し倒しているような姿勢が完成する。


そのまま、2人の距離は0になった。


この時ボスは、部下のこの行動の意味を理解していなかった。


突然ドアが開く。


「ボス!頼んでいた最新兵器が出来上がったみたいですよ!!....ってえぇ!?!?」


突如、黒服の人間が入ってきた。


ボスは、やられたなぁと自身の迂闊さを感じていた。しかし、ここで動揺しては悪の組織の長としてメンツが立たない。


気づけばボスは腰を前後に何度も動かしていた。


「ひぇぇぇ、僕が見ている目の前でそんな事まで...!!と、とにかく兵器が出来上がったので後で博士の所に行ってあげてください!それでは!」


ひぇぇぇぇぇという叫び声を上げながら、黒服はもと来た道を戻る。


2人の唇が離れると、部下は悪戯っぽく笑った。


「ボス、あんなに人に見られていたのに、そんなに私としたかったんですか?」


部下は言う。


ボスは仕方なさそうに笑顔を浮かべながら、あぁと答えた。


自分では律する事ができていると思ってはいたが、自身で思っている以上に私は部下に掌握されているのだなぁと満更でもなさそうにボスは思った。


「責任取ってくださいね。」


部下は言う。


「わかったよ。」


ボスははっきりと言った。

ピッという音も聞こえた。明らかに録音したなとボスは思った。


ここまで自分が油断してしまう人間に、責任を求められるのはある意味幸せな事なのかもしれないとボスは少し嬉しい気分でもあった。


「ボスー。」


部下は静かに笑いながら、ボスに抱きつく。

ボスも部下の頭を撫でる。


2人の時間は続いていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ