表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/87

はじまりのはじまり

 穏やかな最期だった。


 如何なる事象も、そうであるように。それは、最初はとても、小さな小さな火だった。その火は、幾度となくそう、数えるのも嫌気があるほどに踏まれ消されつぶされた。だが、その火は絶えなかった。火はやがて、消えることのない種火となった。それは、時と共に成長し、そのままに焼き尽くす焦熱となった。それは、もはや止めおくこともできず、大地を大空を業火によって焼いた。


 残るものなどないほどに。


 それを破壊と呼ぶ者のがいるだろう。だが、それは、我らにとっての悲願。

 再生に向けての悲願だった。


 そう、つい先ほどまでは。


「いかんな。魅入られてしまうとは……だが、それも良し」


 黒く禿げあがった大地。焼け落ちた空。それは、私にとっては知りたる景色だった。


 はぁ……大きなため息が出た。それは、失望や疲弊ではない。


 ただただの、心からの感嘆とやり終えたという安堵。たったそれだけだった。


 

「第拾参班 収容完了。壱班より第拾参班、総班、目的の行動を完了した」


 不意に、頭の中に文字が顕われる(あらわれる)。 そう言えばそのようなことも命じていたと今更のように感じ入る。


「ああ、すまない。君たちは無事か?」


「ええ、私……■■:■■以下、全部隊現存。皆たちも、全員無事」


 その声に思わず口角を上げた。彼女とは世界をかけて争い、そして、共闘した。いわば、同志。そして、運命共同体だった。


「気苦労をかけるな。

 まあ、今回の件だ。特に彼女なんて怒っているのじゃないか?」


「ええ、当然よ。怒ってる。

 でも、わかってくれている。ちゃんと理解しているの。


 だからこそだけど、こちらからの提案。


 今ならば間に合う、当然に反対者もいる。でも、あなたの席は空けてある。


 せめて……」


「ああ、わかっている。だからこそだ、すまない。君たちと共に向かうことはできない」


 私の言葉で長い沈黙が訪れた。それは、おしゃべり。だが、それでいてとても、プライドの高いものだ。

 だが、私の言葉に、きっと泣いている。一言も発せしないのは、それが、誇り高いから。それと、私の心変わりを待っているからなのだろう。

 だが、それの想いには答えることはできない。私には……果たすべき私の約目というものがある。



 すっと、それは、普段は土くれと忌む心臓の位置に手を寄せた。まるで、わたしたちが言うことは全て真実であるとでも言いたいように。

 

「わたしたちは、あなたを想ってここにたっています。


 私は理解しています。あなたが、いえ、貴方たちが生み出した土くれが……それがあなたにとっていかに重要で、護るに足る一物であるかを。

 あなたは、土くれを慈しみ、憐れみ、そして、土くれを愛していることを知っています。

 だとすれば、わたしたちは、わたしたちは…………あなたにとって取るになりない――道具のようなものだったのですか?」


 悲痛で、棘のある言葉だった。ただ、それは、大きく迷った挙句に何とか出た言葉だったのだろう。鏡面のようなそれからは、いつもの活溌としたその顔を想像することはできない。

 否だ。

 私はわかっているのかもしれない。ただ、それにしても、その単純な答えを出すことは、知恵の神ですらその権能の範疇外であるということらしい。


 

「まあ、そういうものだ」


「まあそう言うことね。あなたは、そういうと思っていました。……少し。残念です。でも、あっちはとてもいいところだと思ういます。でも、……それでも、あなたがいないことだけが残念。だけど、あなたの席は空いている。

 だから、――――いつでも来てもいいのよ」


 辛うじて絞り出した言葉に、それは、得意げに、胸を張る。だが、それが、どこかさみし気を感じるのは、それにおおきな意味を与えてしまったからだ。そうだからこそ、私にはやるべきことは決まっている。だからこそ、それが示す未来につながる選択ではなく、我らと我らの戦友すべてにとって無慈悲で無意味、そして無価値な選択を選んだのだろう。

 

「それには沿うことはできない……だが、皆を頼む」

 

「神命。拝命しまいたしました。我が主神。

 

 ふふ、私に命令できるのってあなた位なものよ。

 本当に。全く。

 全く、土くればかり愛してくれて。火くれのわたし達は、何故愛されないのかしら?」


「土くれか。知らないのか?被創造物は創造主を無尽蔵に愛するのだ。それが、似た形、そして、似たものならば、なおのこそだ。君が君たちの皆を愛し、そして愛されているように。いつか君も理解するのではないか?愛するということの意味を」


「なに?生理現象とかの話?浮気性な(ひと)が言いそうな言い訳。――わかっている。あなたの言うことがそう言うことじゃないと言ことくらいは。

 でも、忠告はしておく。


 あなたと過ごした日々。とても楽しかった。一緒に来れないのはとても残念だけど。獣たちと共に、わたしたちは逝くから。


 だが、それでも、この焦熱に焼かれたこの世界にもし、私と皆の意志が残るのならば。その意味のすべてに祝福を。この世界は……たとえ、この世界が無くなっても。この世界に祝福を。そして、幸運を。

 私、輝ける星の御名において。

 我らの。そして、今は亡き皆の。主神のあなたに。

 祝福を。

 とても短い間だったけど」


 それの言葉に、ゆっくりと首是する。それが見えていたように、貴女との交信が終る。ゆっくりと、ただ久方ぶりに、前を向くことができた。そこに、貴女はいない。

 

「わたしこそが願うべきだな。輝ける星の真名と、残された炎。そして、火くれのすべてに幸運のあらんことを。そして、いずれの星辰整うときに、君たちの帰還のあらんことを」


 


 それが、上昇を開始したことを確認して、そっと懐に手を這わせる。

 それをゆっくりと取り出した。


 拾参の影が虚空に消えるのを確認すると、私は、万感の思いを胸にそれを天に掲げた。

 


 始めに光があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ