腕のいい畳職人が親方の娘との結婚が目前だったのにさる大店の息子に愛しいお嬢様を奪われて飲んだくれる数え歌
ひとつ ひるから ひとりざけ
ふたつ ふるえる ふてねざけ
みっつ みじめな みれんざけ
よっつ よいしれ よなきざけ
いつつ いつわり いのりざけ
むっつ むりする むかえざけ
ななつ なをよび なみだざけ
やっつ やけくそ やけひざけ
ここのつ こえなき こごえざけ
とおで とうとう とつぎざけ
■□ ■□ 原文 ■□ ■□
一つ 昼から 一人酒
二つ 震える 不貞寝酒
三つ 惨めな 未練酒
四つ 酔い痴れ 夜泣き酒
五つ 偽り 祈り酒
六つ 無理する 迎え酒
七つ 名を呼び 涙酒
八つ 自棄くそ 焼火酒
九つ 声なき 凍え酒
十で とうとう 嫁ぎ酒
■□ ■□ 意訳 ■□ ■□
昼間から一人で酒ばかり飲んでいる
手は震えるし不貞寝するしかない
自分でも惨めだと分かっているが未練が断ち切れない
泣き声をあげるほどに酔いしれてしまう
彼女の幸せを祈るだなんて偽りを言ってしまうものだから
やりきれなくてつい迎え酒もしてしまう
彼女の名を呼べば呼ぶほど涙が止まらない
やけになって火がつくような強い酒も飲んだ
なのに……凍えたように声が出なくなってしまった……呼びかけることもできない
ああ、愛しいお嬢様が……とうとう嫁いでいってしまった……
もう……飲むしか……ない……
この詩の元ネタはこちら……
https://ncode.syosetu.com/n5466es/1355/
『畳職人フォルノの過去』