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新世界へ1

 

 ..............て!...............ます!


 耳元で誰かが何かを叫んでいる。


『.....うーん。うるせーな。こちらとた休みでハンモックに揺られながら健やかに寝てんだ。ささやかな幸せ邪魔すんじゃねーよ。』


『.....ウォフ。ワゥー』


 微睡の中、1人と1匹はおざなりに返事をする。


『起きて!こんなとこで寝てるとか阿呆ですか!逃げないとと死にます!』


 自立式のハンモックが蹴られ、ハンモックごと地面に転がる。


『ぐわぁ。てめー何すんだ!』

『ウォフゥ。グルル。』


 咄嗟に出たのは、この言葉だったが、周囲を見渡し、灰髪の男と1匹は状況に唖然とする。


 なんとそこは寝ていたはずの建物の中ではなく、樹木が立ち並び、草が生い茂る自然豊かな森の中だったのだ。


 自分たち以外そこに存在するのは、寂しく転がった自立式ハンモック、先程叫んでいた男を含む、男女5人組、そして馬鹿でかい熊が1匹、そしてオレ達だ。


 ハンモックにいるときは抱き枕とでも思われてたのか、いきなりでかい狼まで出現してさらにパニックになったみたいだ。


『うわぁぁぁぁ。でかい狼まで出た。』

『おい!そんな奴らに構ってんじゃねーよ!早く逃げんぞ!』


『でもこの人放って置けないよ!』


『うるせーぞ!足手まといが!

 散々探索でも足引っ張りやがって!

 そんなに死にてーなら一緒に死んじまえ!』


 先行していた一人の男が、抗議した最後尾の男の足を払って倒し、持っていた両刃剣で切りつけた。


『ぐぁぁ。何するんだ!』


 少年は悲鳴をあげて倒れ、そこに切りつけた男の取り巻きがさらに蹴りを入れた。

 その反動で、熊のいる方向に倒れ込んでしまった。


『じゃあな。仲良く食われてろ』


 そう言い残すと、男とその取り巻き3人は足早に過ぎ去ってしまった。


『ぐぅっ!くそ!』


 少年は蹲り、絶望的な声で叫んだ。


(ふむ...。状況は読み込めてないが、あいつらは少年を見捨てて逃げて、この少年と俺達は熊に襲われようとしているってことでOK?)


(ぐるぅ)


 少年は両手剣を抜き、決意したような目でこちらを射抜いて叫んだ。


『早くその狼の魔物から離れてください!』


 気まずそうに、頭をかきながら、


『すまんな。こいつは俺の仲間だ。』


 少年は困惑したような表情を浮かべたが、すぐに切り替えて、


『ではアッシュグリズリーと.......』


 がぁぁぁ!


 獲物が増えて、困惑していた熊が落ち着いたのか、急に叫び少年に飛びかかった。


 少年は間一髪のところで前転し、こちらの方向へ回避することに成功した。


 俺たちを背に体勢を整えて、


『見たところあなたは冒険者ではないようですが、戦えますか?』


 少年がそういうので不思議に思い、自分の格好を思い出した。


(そうだ。俺今寝間着じゃん。)


(そりゃそう思うよね。納得。)


『あー。一応冒険者もやってるよ。ここになんでいるのかはわからないけど。

 君はここら辺にすんでいるのかな?というかここはどこなのかな?』


 少年はアッシュグリズリーに正に殺されそうになってるのに、なんて呑気なんだと思い、心の中で舌打ちした。


『予備の短刀を渡すので集中してください。死んじゃいますよ!』


(あー。とりあえず落ち着いて話すには、この熊さんどうにかしねーといけねーか。)


 灰髪の男はそう一人で納得し、収納庫から一振りの大きい片刃剣を取り出し、少年の前に出る。


『何してるんですか!危ないんで下がってください!』


 少年は焦って、止めようとするが灰髪の男は、飄々と


『大丈夫。大丈夫。ちょっと見てて』


 といい、ナイトキャップを脱ぎながら、アッシュグリズリーの方へ歩いて行ってしまった。


『一応ここがどこだかわからんが、恩恵は使えてるな。』


 使った恩恵は《立体探知》半径100M以内の生命体を感知する恩恵だ。


 現在半径100M以内にでかい生体反応はない。熊と俺たちしかいない。


『魔法は使えるかな?』


 灰髪の男はおもむろに軽くジャンプし、《エア》とつぶやいた。


 すると背面から押すように風が吹き、その体は一瞬でアッシュグリズリーの懐に入った。


 そしてそのまま右手に持った片刃剣を左から右に一閃し、アッシュグリズリーの首を狩った。


『うん。ちょい違和感あるけど普通に使えるなー。悪くない。』


 少年は目の前のことが信じられなかった。


 アッシュグリズリーといえばこの森の魔物の中でも強力で、中級の冒険者であっても油断すればやられる強さを持っていたからだ。


 軽口を叩きながら、剣に着いた血を振り払い、唖然としている少年に向かって笑顔で言い放った。


『俺はミスト。こいつはアマル。よろしくな。』


 これが最初の出会いであった。


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