灰色巨人
そうやって、意識を戻すと、近くに見つけた野原へと下りた。
やっと着いた。
と言いたいところだが、実際まだ目的地には着いていない。
町か村はまだ見つけてないだから気を抜けない。
でも凄く疲れた。
今日はもう休むか。
まあ、ここから動いた後な。
この見晴らしの良い野原で野宿とか自殺行為だ。
いつ魔物が来てもおかしくない。
んじゃあ、適当にあの森へ行くか。
町探しは明日からだ。
思考を終えると、視線の先に有るとても暗い緑色の葉で出来た森へ歩いていった。
森に着くと、それはもう立派な木がた沢山立っていた。
葉が多く、中は暗くて良く見えない。
中には入らないでおこうか。
迷いそうだし。
その結論を出すと、『飛行』を起動してきの上の一番寝やすそうな枝へ飛んで直ぐに眠った。
魔力を消費し過ぎて疲れたからだろう。
*****
「ゔがあぁぁぁーーーーーー!!!」
「うわっ!」
俺は物凄く大きな音に驚いて木から落ちた。
一体なんなんだよ。
ドスン
ドスン
ドスン
ドスン
何だ、この音?
何かが近付いてくるのか?
魔物の足音か?
もしそうなら相当ヤバいな。
一歩一歩が重い。
相当図体がデカイのだろう。
速く逃げよう。
ドスンドスン
ドスンドスン
ドスンドスン
ドスンドスン
くそ!
動き出したらペースを上げて来やがった。
ヤバい!
ヴーーン
バキバキバキ
え?
何かが物凄い勢いで木を殴り飛ばしたんだけど。
一歩遅れていたらその何かに当たって死んでたんだけど。
「ゔおおおぉぉぉぉおーーーー!!!」
その轟音の元凶へ振り向くと、そこにはとてつもなくデカイ棍棒を持った灰色の巨人が俺を睨んでいる。
それを見て腰が抜けて地面に落ちた。
ヤバい。
今までの魔物とは明らかに角が違う。
怖い。
身体が動かない。
殺される。
死ぬ!
その灰色巨人は手に持つ血塗れの棍棒を振り上げる。
ここで終わるのか。
そう諦めた時、一つのスキルが俺を助ける。
<<スキル『恐怖耐性Lv3』が『恐怖耐性LV4』まで上がりました>>
身体が動いた。
でも恐怖は和らいでいない。
「『メカナイズ』起動!レッグズ!」
キュイーーーーン
それでも俺は走り出した。
あの恐ろしい魔物から出来るだけ遠くへ。
ズドーーーーーーン
後ろか物凄い音がした。
それでも止まらない。
ただ走り続ける。
「ゔごおおおぉぉぉぉーーーー!!!」
ドスンドスンドスンドスン
ドスンドスンドスンドスン
ドスンドスンドスンドスン
ドスンドスンドスンドスン
直後、とても大きな影に飲み込まれる。
アイツ、走って俺に追い付きやがった!!
身体はデカイのに滅茶苦茶速い!
ヤバい、このままじゃあ逃げきれない!
どうする?!
考えろ俺、考えろ!
スーーーー
ズドーーーーーーーーーーーン
灰色巨人の棍棒が地面に叩きつけられた。
今は兎に角走れ!
もっと速度を出せ!
スキルは無理だ!
飛んだら捕まる!
それ以外は役に立たない!
もう走る事以外に生き延びる方法が一切無い!
キュイーーーーーーーーーーン
ガタガタガタガタガタガタ
足の歯車が音を立て始めた。
そして、速度が徐々に上がり始める。
走るのに精一杯でその事に気付いてなかった。
少し経つと、俺は灰色巨人と同じ速度で走っていた。
だが、それだけでは止まらなかった。
速度はまだまだ上昇する。
「ゔがあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!」
灰色巨人が叫ぶ。
俺が速度を上げたことに怒ったのだろう。
数秒後、直ぐ右側に大きな岩が落ちて来た。
ズドーーーーーーーーーーン
とんでもない威力の衝撃が走った。
お前、一体どこからそれを出しやがった?!
ここは野原だぞ!!
その衝撃にとても驚いたが、走るのを辞めなかった。
その後も何度も巨大岩が投げつけられて来たが全て俺には当たらなかった。
突然、全ての攻撃が止んだ。
でも灰色巨人はまだ付いてくる。
何をする気だ?
その考えを読んだようにいきなり巨大な影が現れた。
走りながらその影の元へ顔を向けると、絶望した。
最初の岩より二十倍位デカイ巨岩が俺を目掛けて飛んでいた。
しかも正確に走っている俺に当たるように。
直径は軽く五百メートル位だ。
まだ死にたくない!
死にたくない!
でもこれだけは確実に避けられない!
俺の意思を誰かが聞いてくれたかのように走る速度が一気に上昇した、
パーーーーーーーーーーーーーン
音速をの領域を超えて。
ドゴーーーーーーーーーーン
後ろで巨岩が地面に衝突する音がした。
*****
どれだけ経ったのだろう。
五分か?
十分か?
分からない。
もう灰色巨人からは逃げきれたはずなのに、まだ止まるのが怖い。
足が熱くて痛い。
頭も熱い。
溶けそうだ。
でも止まらない。
止まれない。
ーーーーーーーーーーーーー
機械化デバイス:レッグズがオーバーヒート状態になりました
緊急冷却プログラムを実行します。
対象温度:千六十五度
ーーーーーーーーーーーーー
ガキ
ギューーーン
何かが始まった。
緊急冷却プログラム?
足がオーバーヒート?
意識が朦朧しているから良く分からない。
プシューーーーーーー
足から白い煙が吹き出て来た。
足の表面が熱い。
熱気か。
それと同時に速度も落ち始めた。
少しすると、俺は音速の内の速度に戻った。
それでもまだ結構速い。
ーーーーーーーーーーーーー
機械化デバイス:ブレインの熱量ピークに到達しました。
冷却プログラムを実行します。
ーーーーーーーーーーーーー
報告の後、勝手に口が開いた。
何かと思っていると、その中から白くてとても熱い煙が出て来た。
足と同様の熱気だろう。
でもこっちは吹き出ないな。
緊急じゃ無いからか?
「っ!」
いきなり足がより痛くなった。
ヤバい、もう走れない。
立つことも無理だろう。
落ちる。
向こうに何か石壁のような物が見える。
「おい、お前!大丈夫か!」
誰かに話し掛けられた。
あ、ヤバい。
意識、が、落ちっーーーーー。
直後、俺は地面に倒れ、意識は闇の中に消えていった。