浮遊大陸
朝起きると異変に気付いた。
正確には地下に居るから朝かどうかも分からないが、それはどうでも良い。
兎に角とても奇妙な事が起きた。
背中が治った。
昨日はそれ程気にしてなかったが、痛んでた。
気にしても意味が無いからだ。
我慢も出来るし。
それが今日完全に治ったのだ。
体を動かしても全く痛まない。
全くもって不思議だ。
それと、昨日殆ど何も食べてない。
そろそろちゃんと食わないとだめだ。
食料は良く探せば見つかる筈だ。
昨日は少し歩いたらキノコしか無かったし、ゴブリンにも邪魔された。
今日は本格的に探しに行こう。
今日の目標を決めたら、この遺跡となった施設の出口へ向かった。
やっぱり朝だった。
外は昨日より少し暑い。
昨日は大丈夫だったが、今日は上着を脱ごう。
ずっと制服を着ている必要も無いし。
そう言って、上着を脱いでアイテムストーンへ収納した。
これめちゃくちゃ便利だな。
よし、これで食料探しへ行けるな。
でも少し喉が乾いてきた。
探しに行く前に少し水を取っておこう。
持ち運びも可能になった訳だし。
川へ向かっている途中、昨日仕留めた緑色の狼を見つけた。
これ、一応食べれるよな?
後で火があれば食べて見ようか。
「収納!」
狼達の下に穴の開いた円盤、いや、輪っかの中に落ちて消えた。
何か最初に見たのがあの円盤でこれも円盤って呼んでたな。
普通に輪っかなのに。
それとあの狼もRPGで出るグリーンウルフとかか?
なんか地味な名前で呼んでたな。
お、着いたな。
じゃあ適当な水底に輪っかを作って、水を吸うか。
ヴォン
水底に大きな輪っかが現れて水を吸い始めた。
採取し始めて直ぐに渦が出来上がった。
流石に水の量が多すぎる。
直ぐに容量の限界が来るだろう。
ここで止すか。
輪っかは縮んで消えた。
それじゃあ食料探しか。
でもその前にこれから何処へ行くかだな。
一生ここで暮らすつもりは無いし、一番人が居そうな場所と言えばあの浮遊大陸だな。
よし、食料を確保したらそこへ向かおう。
*****
三時間後
もう結構な時間が経ったな。
まだ何も見つかってない。
見つかったのはゴブリンやオーク位だ。
そうオークだ。
二足歩行している豚だ。
しかも鎧まで着てた。
何処から調達しているのだろう?
それで、オークが見つかったと言っても、戦闘はしてない。
武装した相手に丸腰で挑むなど馬鹿の為る事だ。
普通に去っていくのを待ったよ。
ん?この先の木に何か紫色の物が付いてる。
まさか木ノ実か?!
喜びの余り、その木の下へ走り出した。
やっぱり木ノ実だ!
やっと見つけた!
でもこれ、形が変だ。
何というか、二つの違う実が捻りあって出来た様な見た目だ。
何とも不思議な物だ。
一つ食べみるか。
近くに有った実を取って齧ると、それはリンゴの味をしていた。
派手な見た目だけと、味は普通のリンゴだな。
でも、食ベれることが分かったし、ここに有る物全部掻っ攫うか。
先ず取れるやつを取った。
届かないものは、輪っかをリンゴもどきの下から上に移動させた後縮ませると取れた。
この地味な作業を繰り返すこと十五分、見える所に有るやつは全部採取した。
これでやっと浮遊大陸へ向かえるな。
でもその前に食事だ。
さっき取ったリンゴもどきを食べるか。
*****
これで準備も良し。
浮遊大陸へ向かうか。
でも何処に有るんだその浮遊大陸?
空でも飛べたらなぁ。
って出来るか。
『飛行』というスキルが有ったな。
完全に忘れてた。
今思うとこのスキルでグリーンウルフから逃げてればあんな苦労をせずに済んだのに。
まあ、もう去った事だし良いか。
『飛行』!
やっぱ口にしない方が良いか。
人前で言ったら能力バレるし。
<<スキル『飛行Lv1』が発動しました>>
キュイーーーーン
またあの機械音か。
ヴォン
直後、背中に大きな円盤と輪っかが現れた。
円盤は輪っかの穴にぴったり入っている
円盤は時計回り。
輪っかは反時計回りをしている。
これが『飛行』か。
おお!少し浮いたぞ!
このまま森の上まで行くぞ!
速度が少しづつ上がってくる。
森を抜けた。
周りを見渡してみる。
有った。
もう一度見てもやっぱり大きい。
俺の向いてる方向から丁度右だ。
俺、もうこの島の端に付いたのか。
後百メートル位歩いたら島が終わってたな。
まあ、今はもうどうでも良い事だ。
兎に角次の島へ行こう。
そう考えながら俺は浮遊大陸が有る方へ向かって飛んでいった。
*****
一時間位経った。
何故かとても疲れた。
そろそろ降りて少し休憩にしよう。
そう決めると、近くで見つけたとても小さい浮遊島へ降りた。
先ず、『飛行』を使って分かった事が有る。
このスキルの速度、遅い。
時速三十キロ位しか出ない。
因みに俺の走る速度は大体倍だ。
レベルが上がれば速くなるだろうけど、今は兎に角遅い。
次、この疲労感の正体が分かった。
さっき適当にステータスを確かめてみたらMPがほぼ無くなっていた。
俺は魔力を一切使った覚えが無い。
それでも減っているとしたら、このスキルのせいだろう。
まさか魔力を消費するとは思わなかった。
これで一時間飛んだ後休憩を取らなきゃいけない。
只でさえあの浮遊大陸はとても遠くに有るのに、毎回MP切れになっていたら、いつ着くか分からない。
まあ、今は素直に回復待つしか無いか。
*****
三日後
<<スキル『飛行Lv1』が『飛行Lv2』まで上がりました>>
三日間飛び続けてやっと『飛行』のレベルが上がった。
そのほかに分かった事もいくつか有る。
先ず、初日で気絶していた時、よく襲われなかったな、という事だ。
三日も経つんだ。
勿論何処かで寝てる。
そして、その何処かというのは木の上だ。
俺は二回寝てる時に魔物に起こされた事が有る。
その二回は全てオークだ。
寝てる時み何故か木の上にいる事がバレたからだ。
結構高い木を選んでいたのにだ。
もし気絶しているときにオークやゴブリンに見つかっていたら殺されていただろう。
それと、この浮遊大陸、思ってる以上に大きい。
この三日間飛び続けたのに、少ししか近ずいてない。
しかも、この星のサイズが以上すぎる。
一日四時間も飛んでいて、軽く計算すればもう三百六十キロも飛んだのだ。
地球なら、この距離でもうすでに後ろに有る物は見えない筈だ。
それより遠い場所にある浮遊大陸が見えるのなら、この星は地球の十倍以上の大きさである事になる。
凄いな、この星。
それと、さっきスキルのレベルが上がってから速度が二倍位になった。
これはとても嬉しい。
二倍も速く目的地へ着けるからだ。
*****
さらに一週間後
やっと着いた。
しかもこの大陸のサイズがヤバイ。
遠くから見てるのと全然違う。
兎に角デカすぎる。
しかも上の方は雲で覆い隠されてる。
今からここを登るのかぁ。
嫌だなぁ。
面倒いなぁ。
まあ、この先に人がいる可能性が高いから登るしか無いけどな。
また『飛行』を起動して雲を目掛けて飛んだ。
五分位経つと、雲の中に入った。
これでこの経験は二度目だな。
それから十分間何も無い空間を登っていると、雲を抜けた。
そして、その先に有った光景はまた美しかった。
天へ向かう山の上から数々の滝が流れ落ちていた。
その滝は全て一つの湖へ向かっていて、その湖からは無数の川が放たれていた。
この世界の自然、綺麗過ぎる。
でも見惚れている暇なんて無い。
今は着地して村か町を探そう。
そうやって、意識を戻すと、近くに見つけた野原へと下りた。