着地
雲を抜けた途端俺はその光景を見て言葉を失った。
そう、それだけ俺の見た物は美しかった。
いや、本当のところ言葉を失った理由は三つ程ある。
一つ目の理由は、さっき言った通りただ単純に綺麗だった。
二つ目は、俺が見たのが浮遊島だったからだ。
そう、見間違いではなく本当に浮遊島だ。
頭など打ってない。事実だ。
それで、三つ目は、二つ目を見て理解した事がここが地球ではないって事だ。
世界も違うかもしれない。
いや、確実に違うだろう。
何故ならこっちの世界にはスキルやステえータスがあるからだ。
こっちは結構ショックだった。
もう母さんには会えないかもしれないから。
父さんにも、友達にもだ。
ここが地球ではないとわかって色んな事に理解が行った。
でも納得はしていない。
今はこれで十分だ。
で、話を戻そう。
俺の見た光景に付いてだな。
先ず、真下には結構大きめの島がある。
勿論浮遊島だ。
見渡す限り大なり小なり色んな浮遊島がある。
「お!あっちには桁違いにデカイのがあるな。浮遊大陸か?」
で、だ。一番綺麗でヤバイと思ったのが海だ。
そう、浮遊島の下には海しかない。
つまり、着地をミスったらお終いだ。
海上に陸地は見えない。
落ちたら助からない。
そして俺は今運の悪い事に丁度浮遊島の端っこにいる。
これ、マジヤバイ。
おお。もう地面に近ずいてきた。
んで、予想どうりズレてる。
海に落ちる。
まあ、もうだいたいどうすれば良いのか分かる。
今腹が下に向いて落ちている。
身体を起こすのは簡単だ。
空気抵抗とか役立てれば体の向きを変える事が出来る。
身体を起こした後は減速だ。
さっき習得したスキルの効果が予想通りなら可能だ。
だがここで一つの問題が出てくる。
ズバリ、安定性だ。
減速する為には落ちている方向の逆向きに空気を放出する必要がある。
そこで僕は絶対体身体の垂直を保つ事ができない。
<<一定条件をクリアしました。スキル『思考加速Lv1』を習得しました>>
びっくりした...
何か新しいスキルゲットしたな。
まあ今は良っか。
話がそれた。
起こした身体を垂直に保つ事は不可能に近い芸当だ。
綱を渡る事と一緒だ。
いや、それ以上の難易度だろう。
丁度思考が終わったところにもう着地しなきゃいけなくなった。
空気を放出する直前に身体を起こさなといけない。
という訳で、
『空気放出』、起動!
ーーーーーーーーーーーーー
『空気放出Lv1』:起動します。
出力を選択してください。
__________%
ーーーーーーーーーーーーー
え?出力選べるのかよ?
って、そんな暇など無い!!
うわっ!身体の向きが変わる!
減速出来ない!
もうテキトウに五十パーで良い!
だが少し真が有る。
もう一度体を起こせる。
成功だ。
ーーーーーーーーーーーーー
出力:50%
レディー
プロセス開始します。
ーーーーーーーーーーーーー
ギュイーーーーーン
足の内にある歯車が回転をより高速にする。
<<スキル『思考加速Lv1』が発動しました>>
ん?俺、そんなスキル使ってないぞ。
でも良っか。
おお!落ちる速度が落ちたぞ!
いや、俺の思考が加速して認識速度も上昇したのだろう。
これ、便利だな。
ガーーーーーーーーーーーーーー
うわ!これ、強すぎる!
『思考加速』が無かったら反応が遅れて足の向きを変えていただろう。
そうなれば真下へ一直線で飛んだだろう。
良かった〜、そうならなくて。
だが今安心している暇はない。
急に始まった空気の放出出力に驚きつつもちゃんと身体の向きを垂直に維持している。
だが、その状態を長く保つことは出来なかった。
「くそ!やっぱ無理か!」
この言葉の後、俺は状態を崩して陸地の方に飛んで行った。
**********
「う〜ん」
目が覚めた。
頭が痛い。
あの後どうなったんだろう。
<<スキル『空気放出Lv1』が『空気放出Lv2』まで上がりました。>>
<<一定条件を満たしました。称号『落下王』を会得しました。>>
<<称号『落下王』によりスキル『飛行Lv1』、スキル『空気操作Lv1』を習得しました>>
『空気放出』のレベルが上がった。
変な称号もゲットした。
『落下王』って何?
というかなんでこの称号から『飛行』が出てくるの?
これイジメか?
何で死にかけた後に「ご褒美に君が一番欲しかったスキルあげるね〜」的な事になるの?
やっぱこれイジメか?
「うわ!血が出てる!」
頭に触れると何か液体に触れた。確かめてみるとそれは僕の血だった。
頭打ったな。
散々「頭なんて打ってない」とか言っているそばにこれだ。
今はスキルの事なんてどうでも良い。
それよりも、足が元に戻ってる。
これはこれで良かった。
もうあの足のままずっと過ごすかと思った。
周りを見渡してみる。
右側1メートル先に崖があった。
運が良かったな。落ちなくて。
崖のしたを覗いてみる。
海だ。やっぱ海だ。
崖の反対側には森がある。
あ〜あ。トイレ行きたい。
何か食べたい。
朝にサンドイッチしか食べてないからお腹が空いた。
森には木ノ実ぐらいあるだろう。
そして俺は頭を支えながら森に向かって行った。