箱男
箱男は、とある場所に来ていた。今回の場所は、かなり変わっている。空は青ではなく薄澄んだような紫色。木は燃え尽きたかの様に黒ずんでいた。箱男は、歩いている。その光景を特に気にすることもなく。
しばらく歩いていると人らしき生物がいた。厳密には人ならざらなる生物だ。その生物が箱男に興味を持って近づいてきた。焼け爛れたのか赤黒い肌。皮を固められたのかのように、固まった表情。手足の長さは、バラバラだ。短くもあり長くもある。まあ、箱男は特に気にもしない。
箱男が近づくとわかったのだが、その生物の顔がなにか悲壮めいた感じがよくわかった。なぜだろうか。あきらかに、表情なるものを認識できないのに、その感情は伝わってくる。箱男は、それの理由について興味を持たなかった。別になぜに、そんなに悲壮感を感じているのかなど、どうでもいい。箱男は、ただじぃーと見ている。その生物が何をしたいのかを見ている。それだけだ。目の前の生物は手らしきものを伸ばしてきた。箱男に触れようとする。しかし、なぜか触れられない。箱男の目の前を掠めている。箱男は、その光景をただ見ている。対して生物は、一生懸命やっているのだろうか、ゆっくりだが右に左にと手のようなものを動かしている。しだいに生物の体が徐々に崩れてきたのがわかった。箱男にとっては、その行為自体が何か得るものでもなく、得をすることでもないように見えたが、その生物は、手らしきものを動かす。手が崩れ、顔が崩れ、足が崩れ、徐々に体が歪な形になり、最終的には、ただの塊になった。箱男は、一連の様子を見ていた。別に、感想はなかった。
その生物の行く末は、何だったのだろうと別に箱男が知ることなどなかった。