表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

箱男

作者: ギムヨズル

箱男は、とある場所に来ていた。今回の場所は、かなり変わっている。空は青ではなく薄澄んだような紫色。木は燃え尽きたかの様に黒ずんでいた。箱男は、歩いている。その光景を特に気にすることもなく。


しばらく歩いていると人らしき生物がいた。厳密には人ならざらなる生物だ。その生物が箱男に興味を持って近づいてきた。焼け爛れたのか赤黒い肌。皮を固められたのかのように、固まった表情。手足の長さは、バラバラだ。短くもあり長くもある。まあ、箱男は特に気にもしない。


箱男が近づくとわかったのだが、その生物の顔がなにか悲壮めいた感じがよくわかった。なぜだろうか。あきらかに、表情なるものを認識できないのに、その感情は伝わってくる。箱男は、それの理由について興味を持たなかった。別になぜに、そんなに悲壮感を感じているのかなど、どうでもいい。箱男は、ただじぃーと見ている。その生物が何をしたいのかを見ている。それだけだ。目の前の生物は手らしきものを伸ばしてきた。箱男に触れようとする。しかし、なぜか触れられない。箱男の目の前を掠めている。箱男は、その光景をただ見ている。対して生物は、一生懸命やっているのだろうか、ゆっくりだが右に左にと手のようなものを動かしている。しだいに生物の体が徐々に崩れてきたのがわかった。箱男にとっては、その行為自体が何か得るものでもなく、得をすることでもないように見えたが、その生物は、手らしきものを動かす。手が崩れ、顔が崩れ、足が崩れ、徐々に体が歪な形になり、最終的には、ただの塊になった。箱男は、一連の様子を見ていた。別に、感想はなかった。


その生物の行く末は、何だったのだろうと別に箱男が知ることなどなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 安部公房先生の作品に箱男というのがありました。あの作品も物語の中の出来事がきちんと説明されているわけではなく、読者の想像力にゆだねるようなところがあったのです。しかしこちらの箱男はまるで不可…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ