途中
強力なモンスターを期待し、森の奥地にある洞窟へと入った尊だったが、彼の期待に応えてくれるモンスターは一匹もいなかった。しかし、落ちこぼれの冒険者なら見つけた。その者の名前はロイ・ティオーネ。森から帰りながら、ロイの昔話を聞かされていた。
尊は話半分に聞いていると、「聞いてる!?」と言って煩かったので、少し真面目に聞いてやることにした。
「とにかく!僕は冒険者になりたくて家を出たんだ!どうせ家に居場所もないしね!」
「それで遭難か。すごく恰好悪いな。」
「うるさいな!」
尊のすごく失礼な物言いに怒りたいロイだったが、尊は命の恩人。しかも言っている事が正しいので情けない気分になるロイだった。そんな複雑な心境を知ってか知らぬか尊は凄く楽しそうに笑っていた。
その笑顔で怒る気が削がれ、ひたすらため息をが漏れた。
「それより君」
「尊だ」
「・・・それよりミコト。その恰好はヤバいよ。まるで浮浪者だよ。」
そう言われ、自分の恰好を見ると、服は血と泥で汚れている。しかも裸足だ。流石にこれはみすぼらしいと我ながら思う尊だった。
「ん~・・・・・・確かに。でも浮浪者はひどいな~。」
「ご、ごめん。」
「怒ってないから」
そう言って笑う尊を見て、またからかわれたとため息をつくロイだった。
「町についたな!・・・・・・えっと」
「シュモアの町だよ」
町の名前を知らなかった尊に呆れながらもきちんと教えてやる辺り、きっと面倒見がいいのだろう。シュモアの町は、魔獣が多く生息している森やダンジョンのすぐ近くにできた町だ。危険な場所に隣接している事から、有名な冒険者パーティーの拠点になっている。冒険者にとっては仕事に困らず、冒険者が多い事から平和が守られている。
冒険者育成学校もシュモアの町にある。そこで優秀な成績を修めると、王都の中央冒険者学校へと入れるらしい。実戦経験を積める事から、この町の学校は実技が重視され、戦闘能力の高い生徒が多く通っている。ロイは座学ではトップだったが、戦えない事から落ちこぼれだったらしい。
「ギルドに生存報告するより先に尊の服を買おうか」
「こっちの服装って分からないし、金もない。」
「お金ならアイアンリザードの魔石を売れば沢山貰えるよ」
「じゃあ換金してきてよ、そんで服を選んでくれない?報酬はギルドポイントな」
そこまで言うと、報酬が高すぎるとか、そんな事してポイントを貯めたくないとか言っていたが、僕なら簡単にあれくらいのモンスターは倒せる。などと言ったのだが、納得せず、どうしたら納得するのか聞いたら、結局パーティーを組めば問題ないという話になり、尊はそれを受け入れた。