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鬼神の子で魔王の弟子の旅物語  作者: よしくん
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いざ冒険者登録


しばらく森を歩き続ける尊だったが、日が落ちてきた。森というのは暗くなるのが早い。目的のオークに会う事叶わず、ここまで何匹ゴブリンを殺したか分からない。もういっそゴブリンの森という名前なのではないかと不貞腐れながら火おこしを始める。


 「まったく、小動物もいないのかこの森は」


 ブツブツぼやきながらたき火をし、地面に寝転ぶ。すると、木々の隙間から見える星と木の燃える煙の臭いが心地良かった。パチパチという焚火の音だけが響き、なんとも不気味な静けさが森を包んでいた。師匠はこういう静かな時ってのは何か災いが来る前触れだったりするのだと言っていたが、本当なのだろうか。自分の手を枕にし、寝転びながらそんな事を考えていた。


 目を瞑って横になっていた尊が突然目を開いた。仰向けに寝ていた状態から足を振り上げ倒立をする。そこから腕の力のみで宙に飛び上がり木の枝に膝をひっかけ、反動を使い、枝を支点に回転し枝の上に座る。ここまでの動作が一瞬なのだから恐ろしい。

 

 「えぇ~、雨かよ~」

 

 空に向かって文句を言うが、雨は徐々に強くなっていき、地面を濡らす。せっかくのたき火が鎮火してしまった。こうなると気配を感じにくくなるため、保険として木の枝の上で寝ることにしたのだ。


 

 

 夜が明けても空は暗く、激しい雨が降り続いていた。寝ぼけ眼をこすり地面に着地すると、バチャッ!と泥が跳ねる音がした。完全に下駄が埋まってしまった。

 一瞬悲しい顔をした。すごくブルーな心境になった尊だった。掘り起こして洗えばまた使えるのだが、裸足で泥道を歩き出した。本来石などで怪我をしそうだが、尊の肌はその程度で傷つく程もろくない。気だるそうな雰囲気で歩いていく。綺麗に編み込まれていた髪が濡れて重くなり、普段のように軽やかに揺れる事がなくなってしまっている。


 無警戒に歩いていると、ゴブリンの群れと出くわしてしまった。20匹は超えていそうな比較的規模の大きな群れに出くわした。多くの冒険者が犠牲になったのだろう、ゴブリン達は質の良い武器を手にしている。

 ダガーやメイスなどを振り上げ、襲ってくるゴブリン、しかし今の尊はかなり気が立っている。寝起き一発目で不運に見舞われた事もありご機嫌斜めなのだ。量で押しつぶそうと尊に突進してくる。

 しかし、顔面に拳を叩きつけゴブリンの顔を砕く。骨と肉がグチャリと潰れる音がしゴブリンの顔が爆発する。眉間にシワを寄せ、左手で連続してジャブのようなパンチを次々ゴブリンに叩き込んでいく。

 一発で胴体や頭が粉砕されていく様は、かなり凄まじい。


 あっという間にゴブリンの群れが壊滅していく。血が抜かるんだ地面にジンワリ滲んでいく。尊も返り血を浴びてしまったが雨が洗い流してくれる。ゴブリンの死体には目もくれず、森を進んでいく。尊が通った後を見れば、もはやゴブリンだったのかどうかも分からない肉塊が散らばっている。



 その後、ゴブリンしか出会わない森に飽きた尊は走って移動する事にした。そこからは早く、3時間くらいで森を抜けた。森を抜けると、一つの町が見えてきた。城壁に囲まれているため物々しい雰囲気を放っている。

 門の前までくると兵士に止められた。


 「止まれ!身分証を見せろ。」


 「持ってない。」


 やっぱり止められた。尊が身分証を持っている訳もなく、持ってないと言うしかなかった。すると警戒されてしまったのか、門の向こうから兵隊がもう一人出てきた。

 面倒ごとを起こして町に入れないと困るので不用意に戦う訳にもいかない。とりあえず訳を話すことにした。



 「なるほど、冒険者希望か。ギルドは東の区画にある。」


 「分かった、ありがとう」


 簡単なお礼を言い、通行料を支払って町に入る事ができた。雨が強いせいもあってか人通りが少ない。門番に言われた通りに東の方へ進む。するとポツポツ冒険者と見受けられる人とすれ違った。武器を持っているので分かりやすい。

 それにしても、雨具を使わずに歩いているせいか、和の国の服が目立つのか分からないが視線を感じる。そんな事を考えながら歩を進めるとギルドが見えて来た。2階建てのそれなりに大きい建物だ。中に入ると受付が見えて来たので、真っすぐ向かう。


 「本日はどのようなご用件ですか?」


 尊の対応をしてくれたのは、若い女性のギルド職員だった。


 「冒険者登録をしたくて来ました。」


 「はい、かしこまりました。こちらに名前を記入してお待ちください。」


 そう言って受付嬢は尊に紙を手渡すと奥に何かを取りに行った。記入用紙に名前を書いてしばらくすると、受付嬢が水晶を持って戻ってきた。


 「冒険者についてはご存知ですか?」


 「それなりには知ってます。あ、でもランクの上げ方だけ教えてください!」


 「では説明させていただきます。」


 「冒険者にはランクがございます。下からD、C、B、A、Sランクとなります。昇格は一定のギルドポイント入手する事で行えます。ポイントは依頼の達成か、魔獣の討伐によって加算されます。昇格の際には手数料をいただきます。AランクからSランクになるには一定のギルドポイントに加え、冒険者ギルド評議会10人の許可が出ませんと昇格はできません。」


 「なるほど~。手っ取り早くランクを上げるにはどうすればいいの?」


 「Dランクのうちは、どこかのパーティーに入れていただいてベテランの方々のお手伝いをしながら基礎知識を付けながらギルドポイントを稼ぐのがいいかと思います。

 それから、新人の方の中には、危険な魔獣を討伐して一気にランクを上げようとされる方がいらっしゃいますが、絶対にやめた方がいいかと思います。そのような短絡的な考えで命を落とした方を何名も見てきていますので。」


 釘を刺されてしまった。田舎者が甘い考えでモンスターと戦うと死にますよ。とでも言いたげな顔をする受付嬢だが・・・尊はそんな忠告聞き入れるほど良い子ではない。


 「魔獣討伐したとしてどうやって証明するの?」


 「魔獣から出ます魔石を拾ってきてください。お金にも換えられますので。しつこいようですが、無茶はしないでください。」


 凄く淡々と対応する割には心配してくれているところを見ると、実は優しい人なのだろう。冒険者登録が終わると、町の外に行こうとしていた。勿論目的は魔獣だ。魔石を換金しなくては、尊は一文無しだ。雨で分かりにくいが、もう少しすると夜になってしまう。そんな事を考えてギルドを出ようとすると、ギルドにいる冒険者の話が耳に入ってきた。


 「おい、落ちこぼれのロイいるだろ?あいつ遭難したらしいぜ」


 「本当かよ!あの馬鹿大人しくどこかのパーティーに入れてもらえば良かったのによ。で、なんで遭難なんかしたんだよ。」


 「落ちこぼれって言われるのが嫌で、魔獣の森に入ったらしい。一人で行って5日も帰ってないんだ、ダメだろうな。今日もこの雨だしな。」


 「ま、自業自得だな。」


 どうやら無茶した冒険者が危険なところに向かって遭難したらしい。尊はその話の魔獣の森に心当たりがあった。でもゴブリンしかいないし死ぬ事はないはずなのだが。気になって話しかける事にした。


 「その落ちこぼれ君が行ったのって港町に通じてる森?」


 「あ?・・・お前はさっき登録してた田舎者か。、そうだ、あの森は奥に進むと強力な魔獣がウロウロしてるからな。新人のお前には関係ない話だがな。早く靴が買えるといいな!」


 そう言って笑っていた。聞きたい事が聞けたのでさっさと町を出る事にした。尊が通ってきた道は、森の浅いところを抜けて来る道だったらしい。良い事が聞けたと喜びながら、ギルドの外にでる。すると雨は小降りになっていた。

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