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ほわほわの心  作者: 嶋倉
6/10

旅館

「千咲さん!迎えにきましたよ」

「あ、ありがとうございます 準備、できてますよ」

義院と千咲は二人で、アパートの駐車場についた。

そこには小さな白い軽トラがとまっていた。

塗装は所々剥がれており、お世辞にも綺麗とは言えない。

「本当はかっこいい車がよかったんですけどね… なんせお金がないから」

義院は恥ずかしそうにそういう。

「い、いえ!私免許ないですし、ありがたいです」

慌てて千咲はそういってみるも、ちょっとがっかりしたのは事実だ。

「…ごめんね、さあ乗って」

「ありがとうございます お邪魔します」

「お邪魔されましたー」

「え、ひどいです!」

そんな会話をしながら、二人で出発した。


…その様子を一人、物影から見ていた人物がいた。

「千咲…」

苦しそうに唇を噛みしめながら、ゆっくりと立ち去っていった。


------------


「わあ…!」

千咲は思わず車窓から外を見て声を漏らす。それもそのはずだ。義院の父親が経営している旅館は山奥にある。今はちょうど紅葉が始まるシーズンなのだ。美しい木々に囲まれた旅館は、何処か異彩だった。

(雨降らなくてよかったな)

夜だったが、旅館のまわりの紅葉は綺麗にライトアップされており、それがいっそう美しさを引き立たせた。

軽トラを駐車場にとめ、旅館に向かう。

「あれ、車一台もとまってませんね」

千咲が気づく。

「…あぁ、今日はたまたまお客さんがいないみたいだね」

一瞬義院の雰囲気が変わった気がしたが、暗くてよく見えなかった。きっと気のせいだろう。


玄関には、義院にそっくりな人が完璧すぎる笑顔で立っていた。

「ようこそ!ここはうちの旅館だ 私は 義院 大輔というものだ まあ、けして新しいわけではないが、楽しんでいっておくれ」

「親父、見栄張るなよ」

「こんなときぐらい張ったっていいじゃないか、志磨は手厳しいなあ」

大輔は笑みを崩さない。

(中がいいんだなあ)

千咲は少し羨ましくなった。

「部屋の準備はしてあるから、荷物をおいてくるといい うちは露天風呂だよー」

「ありがとうございます」

「夜遅いし、先お風呂はいっててください 僕荷物もってきますよ」

「志磨こそ見栄張ってるじゃないか」

「うるさいわい」

(本当に仲がいいんだな)

ちょっと笑ってしまう。

そして荷物を志磨に預け、大輔の案内のもと千咲は浴場に向かった。


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