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田舎で暮らそう!  作者: 白神 こまち
初夏・立夏
14/14

手乗りピザ!

一週間の過ごし方にはメリハリが重要!

たとえば海上自衛隊では毎週金曜日にすべての部署でカレーライスを食べる習慣がある。長い海上勤務によって曜日感覚がなくなるのだそうな。そのため、毎週金曜日にカレーを食べて曜日感覚をより戻すのだという。


そして今、大葉さんの提案で、

「毎週金曜日は料理教室を開いて、ヒカリちゃんとめぼれちゃんと一緒に料理を作りましょう! 家の手伝いをする習慣がつくわよ」

ということが決定した。





「にーちゃーん! きょう オーバーが りょーりつくってくれるひ!」


ヒカリは慌ただしく廊下をドタドタと走って、大地の太ももに勢いよく抱きついた。

耳を出したショートヘアの頭には三角巾のように用いたバンダナをかぶっている。大地にかぶせてもらったのだ。


「いいかヒカリ? 大葉さんのいうことをちゃんと聞くんだぞ? めぼれちゃんと一緒に、食べられるごはんを作るんだ」


大地は、農業実習で着る実習服をナップザックに入れた。

ヒカリが料理教室ならば、大地は午前の授業を目一杯に使った農業実習なのだ。

毎週金曜日は大変なのである。


とそこで、日比谷家のインターフォンが鳴り響いた。

ヒカリは玄関を指差していう。


「あっ! きっと めぼれちゃんだ!」

「そうだな、よし、んじゃ俺も学校に行くか」


大地は鞄とナップザックを持ち、ヒカリと一緒に玄関で靴を履き、自宅を出発した。





大葉家のキッチンにて。

カウンターキッチンの調理スペースには既に料理に使用する食材が並べられていた。


「オーバ! これつかうの!? なにつくるの!?」

「カレーつくる?」


ヒカリとめぼれは瞳を輝かせて大葉さんを見上げる。

めぼれもヒカリ同様にバンダナを頭につけている。耳のうしろのあたりから三つ編みお下げが垂れている。


大葉さんは料理教室をはじめる前に、ヒカリとめぼれを浴室の方へと連れて行き、脱衣所の洗面台で手を洗わせる。


「最低30秒は手を洗うのよ。泡で手をよーく洗う。お手本を見せるから、同じように一緒に手を洗いましょう」


まず、大葉さんが濡らした手のひらに石けんを受けて泡立たせる。

次いでヒカリとめぼれが石けんを回して、それぞれ手を合わせて洗い、泡立たせる。

片方の手の爪を立てるようにしてもう片方の手のひらを洗う、片方の指をもう片方の手のひらで握って洗う、手首も洗う……など教えながら30秒間手を洗う。


とそこで、大葉さんはヒカリとめぼれに30秒という時間、しっかりと手洗いすることを教えるため、ある秘策を考えていた。


「ヒカリちゃん、めぼれちゃん。手を洗うときは、ふれあいのぱくぱぐの歌を歌って洗うといいわ。歌いながら手を洗うの」

「ぱくぱぐのうた? うたうの?」

「わかった! ぱくぱぐのうた うたう」


ヒカリとめぼれ、大葉さんの手の動きを見ながら手の甲を洗う。

その洗いながらに、『ふれあいのぱくぱぐ』のオープニング曲をうたうことに。

2人は声を合わせて大きな声で歌う。


もーりーのぱくぱーぐ うたーのピッコー ダンスのゴロー♪

もりの ものしり おじじ〜♪

きつつき トントン おさる うききー おさかな スイスイ♪

みんな みんな おもとだち もりでくらしてるー

はれのひ あめのひ かぜのひ ゆきのひ

いろいろ たいへんだけど みんなでちからをあわせて〜

わらって たのしく もりでくらしてるー

ふれあいの〜 ぱーくーぱーぐーっ!!


「歌い終わったら手の泡を流しましょう」

「「はーい!!」」


元気に返事をして泡を流しきり、タオルで手を拭く。

これで料理をはじめる準備が整った。


ヒカリとめぼれの背の高さではカウンターキッチンは高く、背伸びをしても調理スペースの上に手を出して調理作業するのは難しい。

そこで大葉さんは、食卓テーブルの椅子に2人を座らせた。

6人用の大きなテーブルはアルコール消毒液を霧吹きしていて、ここで調理をする。


大葉さんは、キッチンの上にある食材をひとつひとつ手に取ってテーブルに乗せる。


「この野菜が何だか解る?」

「わかるー! とまと!」

「それじゃあ、この野菜は?」

「ぶっこりー!」

「ブロッコリーね。こっちの野菜は?」

「……それ わかんない」


大葉さんの質問に、ヒカリはあからさまに声を小さくしていった。

大葉さんの手にはピーマンがあった。


「めぼれちゃんはわかる?」

「わかる それ ぴーまん」

「ピンポンピンポン! めぼれちゃん正解。ヒカリちゃんは知らなかった?」

「……ううん」


ヒカリは首を横に振っていう。


「しってたけど ぴーまん きらいだから しらない たべたくない」

「えー? ヒカリちゃん ピーマン嫌い? 美味しいのにな〜」

「ううん おいしくない ヒカリ ぴーまんたべたら しんじゃうびょーきになった」

「ふふっ、死んじゃう病気になっちゃったの? それじゃあ、ヒカリちゃんのにはピーマンは入らないようにしないとね」

「うん ぴーまん いれちゃだめ」


キッチンの上にはトマト、ピーマン以外にも食材がある。

大葉さんはそれら食材をテーブルの上に置いた。


「ういんなー ある!」

「ちーずも!」


とたんに、ヒカリとめぼれは喜声を上げ、ウィンナーとチーズの登場に心踊らせて椅子の上に立ち上がった。


「オーバ! たこさんういんなー つくる!?

「たこさんういんなー めぼれもすき!」

「いやいや、たこさんウインナーじゃなくて今日は違う料理よ。たこさんウインナーも作ってもいいけどね」

「ええ!? オーバ なにつくるの!? おしえてー!!」

「はいはい、静かに。今日は、手乗りピザを作ります」


大葉さんの言葉を聞き、ヒカリとめぼれは顔を見合わせるとヒマワリのような笑顔を浮かべて「やったー!」と万歳した。



「ぴざって あのぴざか!? やいてつくるやつ!」

「ちーず うにょーん のびる!」


それぞれにピザのイメージをいうヒカリとめぼれに、大葉さんは笑いながら頷いた。

そして、餃子の皮を袋から取り出した。


「この小さな生地の上に好きな野菜やお肉、チーズを乗せて焼きます。とにかく、作ってみよう!」

「「わーい!!」」


大葉さんの指導のもと、2人は大喜びで手乗りピザを作りはじめた



手乗りピザとは、その名の通り手のひらサイズのピザであること以外、本来のピザと大差ない。

しかし、餃子の皮をピザ生地として利用し、トマトケチャップやピザソースをつけて食材(具材)を乗せてからオーブントースターで焼き上げるという手軽さから子供と一緒に作れる料理として実にお手頃なのだ。


しかも、大葉さんが包丁やスライサーを使って食材を切り、ヒカリとめぼれはトマトケチャップ・ピザーソースを塗った餃子の皮に好みの具材を乗せるだけ。

怪我なし・失敗なし・それでいて美味しさの保証付き!


なおかつピザはカレーライスやハンバーグのように子供の興味を引き付ける料理。

たのしくないはずはない。


乗せる食材(具材)は、トマト・ピーマン・ブロッコリー・玉ねぎ・ウィンナー・ハム・サラミ・コーン・茄子・エビ・ゆで卵。

その他、マヨネーズや海苔、パセリで彩りよくする。


「それじゃあ、たこさんウインナーを半分に切って、ピザの上に乗せよっか?」

「そうする! このぴざは はむ と たこさんういんなー と ちーずの おまつりぴざ!」

「ヒカリちゃんはピザに名前つけたの? めぼれちゃんの作ってるピザは何ていう名前のピザ?」

「めぼれのぴざは たまねぎ と ぴーまん と えびさんぴざ!」


2人は思い思いのピザを作る。

この手乗りピザが良いのは、たくさんの種類を作れるところだ。

自分の作ったピザに名前をつければ美味しさも増す。


ヒカリは手に握ったスプーンを使って餃子の皮にケチャップを塗り広げると、ハッと思い出した。


「そーだ! りょーこのぶんの ぴざもつくってあげる!」

「あら、良子の分も? それじゃあ、どんな具がいいか聞いてこないとね」

「あっ めぼれもいっしょにいくー!」


ヒカリとめぼれは良子の手乗りピザも作成するため、2階にある良子の部屋へと走って行く。

手乗りピザ作りしている食卓テーブルにある具は、みじん切りにした玉ねぎが少々・ピーマン1個分・ひとつまみのチーズしかない。



良子の部屋のドアをがちゃりと開けてヒカリとめぼれ、良子にピザのリクエストを尋ねる。


「りょーこー! いま ぴざつくってるけど なにたべたい?」

「あのね のこってるのが たまねぎとぴーまんとちーずだけ」

「え、3つしかないの?」


良子は壁一面に設置してあるディスプレーを眺め、株に関する様々な数字やグラフを確認していた。

その顔色は白く、頬もやせ気味で、アダムスファミリーに登場しても違和感ない容姿である。


良子はピザの具材の選択肢が3つしかないことに失笑し、ヒカリとめぼれにこういった。


「仕方ないから、その3つを全部入れてちょうだい。ピザができたら呼んでくれる?」

「わかった!」

「できたらりょーこおねーちゃんをよぶー!」


選択権のないリクエストを聞いて2人は1階へと下りて行く。



「オーバ! りょーこにきいてきた! ぜんぶいれるって! やまもり!」

「うん! できたら よんでって いってた」

「えっ? 残りの具を全部入れちゃうの?」

「そーゆってた! みっつを ぜんぶいれてちょーだいって!」

「りょーこおねーちゃん おなかへってたみたいだった!」


ヒカリとめぼれの言葉を、大葉さんは素直に聞き入れて、残っていたピザの具である、みじん切りにした玉ねぎが少々とピーマン1個分の輪切りとひとつまみのチーズを、ケチャップを塗った一枚の餃子の皮に乗せた。

山盛りになった。


「どれくらいで できる!?」

「うーん、そうね。オーブントースターで焼いて5分か6分というところかしら? 一緒に焼けるのを見てみよっか?」

「うん!」


大葉さんがヒカリとめぼれの作ったピザをオーブントースターに入れる。

オーブントースターは安物の製品で、摘みが1つしかないタイプ。



挿絵(By みてみん)



この中にピザを2つ入れて焼き上げていく。


大葉さんとヒカリ、めぼれが作った手乗りピザは全部で14枚。

大葉さん・ヒカリ・めぼれが3枚で9枚。大地と青坂さんにお土産で2枚。

ピーマンで山盛りピザ1枚は良子である。


「オーバ! ちゃんとやけてる! ちーずが! ちーずが!」

「とろーってなってるよ! おいしそー!」


オーブントースターの窓から、ふつふつぷつぷつと焼けていくピザを見ながらヒカリとめぼれは感激の声をあげる。



しばらくして、手乗りピザが焼けてオーブントースターから出される。

大葉さんはピザを皿の上に移した。

そして、食卓テーブルにお行儀よく座っているヒカリとめぼれの前に皿の置いた。

ヒカリには『ハムとたこさんウィンナーとチーズのお祭りピザ』。

めぼれには『玉ねぎとピーマンとエビさんピザ』。


「熱いから、気をつけてね。ふーふーして食べて」

「「いただきまーす!」」


ヒカリとめぼれは、それぞれ自分の作ったピザを手に取り、「あちっ」「ふーふー!」しながら、パクリと一口頬張った。


「「んーーーー!! おいしーっ!!」」

「よかったわねー。はいっ」


大葉さんが手のひらをヒカリとめぼれに出して、「ぱちっ」とハイタッチした。


「これ おいしすぎる!」

「うん おいしい!」


ヒカリとめぼれは口のまわりに食べカスを着けて、大葉さんに満面の笑みを見せた。

2人の声が2階まで聞こえたとみえて、良子が1階へ下りて来た。


「ああ、ピザ焼けたの? おいしい?」

「りょーこ! うん おいしいよ!」

「りょーこおねーちゃんの いま ぴったりやけた!」

「あはは、グッドタイミングだったか。どれどれ、私のピザは?」

「あなたのはこれよ」


大葉さんが、娘の良子に焼きたての手乗りピザを皿に乗せて出しだした。

焼き上げる前はピーマンで山盛りだったが、焼き上がるとピーマンはしなしなに。

まるで萎んだように小さくなり、きつね色に焼けたみじん切りの玉ねぎと、少量のとろけたチーズにより、こんもりとしたピザになった。

トマトケチャップの赤、ピーマンの緑、きつね色の玉ねぎとチーズの黄色が予想されたものより食欲をそそる。


「えー、1枚だけなの?」

「何いってるのよ。ヒカリちゃんが気を使って残りの具で作ったんだから。文句いわないの」

「そうだったの? ありがとうね、ヒカリちゃん」

「いえいえ! そのぴざ めぼれちゃんといっしょにつくった!」

「めぼれちゃんも? ありがとうね、めぼれちゃん」

「うん! りょーこおねーちゃん たべて! おいしい?」


めぼれに促されて、良子は熱々のピザを頬張ってみる。


「おお……これはこれで美味しいわ。私はこれにピクルスがあればもっとよかったかな」

「あなた注文が多いわよ」



手乗りピザをすっかり食べ終えて、食卓テーブルに乗っているのは大地と青坂さんにお土産のピザ。


「ヒカリちゃん、めぼれちゃん。これは帰るときに渡すわね。お土産よ」

「おみやげ! それは たいせつだ! それじゃ ちょきんぎょにいれないと!」


ヒカリはズボンのポケットからちょちくちょきんぎょを取り出していう。


「あんなにおいしいたべもの たからものだから!」

仕事が大変に忙しくなりました。

この激務のなか、本作の感想やレビュー皆無というとこもあり、やる気やモチベーションを失いました。

仕事が一段落するか、執筆意欲が湧くまで次話投稿未定です。ごめんなさい。

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