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魔法のお勉強だよ!

やっと魔法が出せました…。


「りりーみっけ!」

「わ……てあいらる、すごい……」


 アイラルです。友達のリリーとかくれんぼをしています。


「せんせ、みんなみつけた!」


 今は外で遊ぶ時間なのです。

 手を振って報告すると先生に早かったねーとほめられた。






 あれから……はや一ヶ月くらい?

 幼稚園にも慣れて楽しく過ごしているけど、ルーグ君のことを忘れたわけじゃないよ。そりゃ何日かはヘコんだけどさぁ。

 「ルーグ君に会いたい」と泣いていた私に、お父さんがこう言ってくれたんだ。


「アイラルが大きくなったら王都の学園に進学するといい。この街にも学校はあるけど、王都の学校なら……もしかしたらルーグ君と出会えるかもしれない」


 それにお母さんがコレをくれた。私の首にかかった石の羊を。

 ルーグ君の羊に革紐をつけていつも持っていられるようにしてもらったのだ。






「じゃあ、そろそろ獣人クラスと交代の時間だから、みんな中に入ろっか」


 はーい……と渋々ながら人間クラスのみんなは移動開始。

 この幼稚園ではクラスが二つに分かれているため、時間によって中でお勉強か外遊びかを分けているのです。

 ということで今度はお勉強の時間。


「あいらる……きょう、まほう……?」

「どうしよー、りりーは?」


「ん……わたしは、まほう……。でも、あいらるといっしょ……がいいな……」


 んー懐かれちゃったな。

 実は精神年齢はリリーよりだいぶ上ってのが申し訳なくなってくる。

 ……うん、そうだね。リリーが可愛いから今日は魔法の授業を受けることにしよう。


 この世界に魔法というものが存在すると知ったのは、幼稚園に入園してから。

 私が剣と魔法の世界を注文したんだから当たり前なんだけど、やっぱり驚くよね。おやつのココアに使う水を先生が指パッチンでお湯に変えたんだよ。

 

 それと、もう一つ驚いたことは……最初の授業で習った、魔法を使えるのは人間だけ、ということ。

 獣人には魔法を扱う魔力ってのが無いんだって。

 三つ子なのに私しか魔法使えないって不思議な話だよね。

 お父さんも人間だけど、私の見てないところで魔法を使ってたのかなぁ。


「今までは魔法についてのお話をしてきましたがー、今日からは魔法の使い方のお勉強をしましょうー」


「やった、りりー。まほう、つかうよ!」

「うん……」


 三歳児が教えてもらえる魔法は限られてる。危ないからね。

 草がそよぐくらいの風を起こす、水面に波紋を作る、ろうそくの火を揺らす。魔法使わなくてもできるんじゃないかなーくらいの弱いやつ。


 先生が前の方の子達から一つずつ何かを渡していきます。

 これ、透明な飴玉?


「まだ食べちゃダメですよー。袋から出してー、せーのっでぎゅーっと握ってくださいねー」


 せーのっ! ぎゅっ!

 言われるままに飴玉を手のひらで包んだ。


「……はい、開いて!」


 手の中の飴玉を見て、驚いた。

 あちこちで歓声が上がる。


 握っていたはずの透明な飴玉はいつの間にか、薄い黄緑色に変わっていた。ほとんど透明のままだけど、なにこれすごい。味の変わる飴玉!?


「あいらる、みて、わたしの……。すごいね!」


 いつも大人しいリリーでさえ嬉々として私に飴玉を見せてくる。

 でも、リリーのは黄緑じゃなくて濃い青色になってる……。


「これは……って、もう食べちゃった人もいますね……。これは魔法の属性というものを調べる飴です。食べちゃった人、何色になったか覚えてるかなー?」


「あお!」

「きいろー!」

「いちご!……のいろ!」


 属性。

 私は緑だから……えっと、草?


「赤になったひとー? 赤になった人は火の属性が強いですねー。青は水、黄色は雷、ゴロゴローの雷ですねー。緑になった人は……アイラルちゃんが緑なのね。緑はとっても珍しいのよー?」


「そーなの?」


「そうなの。緑は風、風の属性を持ってる人は少ないんですよ」


 あいらるちゃん、すごーい! とお友達が集まってくる。

 へへ、希少な風属性なんてちょっとかっこいいかも。

 風が操れるってことだよね、風使いってことだよね。


「属性は分かりましたね? さあ次は魔法の強さのお勉強です。飴玉の色が濃いほど魔力が強いです。ちょっと難しいかなー?」


 色が濃いほど……魔力が強い……?

 手のひらの緑の飴をじっと見てみる。それからリリーの青い飴もじっと見る。もう一度私の……。


 私の飴、透明な部分のほうがおおいんですけど!?


「せんせっ、わたしのは……!」

「アイラルちゃんの? ……あら、緑が薄いわね……」


 先生も驚くほどの薄さなんですかっ?

 それって私の魔力が無きに等しいってこと? 魔法を使おうにも魔力が足りないってこと?

 なんだそれ……聞いてませんよ。


「わたし、まほうつかえないの?」


 それ、すごいダメージなんですが。折角ファンタジーな世界にいるのに魔法が使えないなんて。


「そんなことないわ。他のみんなよりも少しがんばったら、アイラルちゃんにも魔法が使える。だいじょうぶ!」


「んー……」

 

 とりあえず緑の飴玉を口に放り込む。

 ん、ほんのりメロン味。


「わたしは……みず、ね」


 リリーの青過ぎて黒くも見える飴は、ソーダ味だったそうです。






 帰り道。


「それでね、わたしはかぜだったの! りりーはみずでね。わたしのあめは、みどりがちょっとだった、けど……せんせ、がだいじょぶ、って!」


 帰りの馬車はそれぞれのクラスで何をしたかの報告会です。

 この日はいつも以上に話したいことがあって、お母さんに「アイラルもリスルに負けないくらいおしゃべりになってきたわねー」と呆れられてしまった。


「ぼくは……」

「リスルはすなばでおしろつくったのよ! リスルよりおっきいの! でもオーカがどーんってして、ばーんでこわしちゃったの! それでリスルがドンしたらせんせいがガオーってなったのよ! リスルはわるくないもんね、オーカが……」


 や、やっぱり、一番おしゃべりなのはお姉ちゃんだと思うよ?

 あとお兄ちゃんがかき消されてた。がんばれお兄ちゃん。




お気に入りが増えてて嬉しいです。


ありがとうございます。

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